著者
塚原 康博
出版者
公益財団法人 情報通信学会
雑誌
情報通信学会誌 (ISSN:02894513)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.1-13, 2020 (Released:2021-02-02)
参考文献数
21
被引用文献数
1

本研究では、インターネット通販の拡大を背景とする宅配クライシスの問題を取り上げ、それをもたらした要因、それを解決もしくは緩和するための方策を考察した。本研究では、さまざまな方策のうち、再配達の有料化に注目し、その実現可能性について、全国調査の結果を基に検討した。この調査の結果から、再配達を有料化すると、多くの回答者に行動変容が生じ、1 回目での受け取りが増えるので、再配達の削減が期待できる。また、有料化の導入に際しては、多くの回答者が再配達の配送料に対して支払う意思を示している。有料化における配送料の金額設定に関しては、回答者による支払い可能な金額の最頻値、中央値、平均値が参考になるが、配達される品物の金額が10000 円以内のケースにおいて数百円程度であると考えられる。有料化で得た収入は、宅配ボックスの設置数の増加や配送員の増員などに活用できる。全国調査の結果から再配達の有料化は実現可能であり、宅配クライシスを緩和する効果は得られると期待できる。
著者
塚原 康博
出版者
日本公共政策学会
雑誌
公共政策研究 (ISSN:21865868)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.130-136, 2003-10-31 (Released:2022-01-18)
参考文献数
16

本研究では,景気浮揚のための代表的な政策である公共事業と高齢化社会において拡大が不可避である社会福祉支出の生産波及効果を拡大レオンチェフ乗数(通常のレオンチェフ乗数,すなわち中間投入を通じた生産波及効果,と消費活動を通じた生斥波及効果の2つの効果の結合効果)を推計することによって比較分析した。この推計に当たり,取り上げる消費の範囲に関しては,2つの考え方がある。すなわち,消費の範囲を広くとる総最終消費支出ベースによる推計と消費の範囲を狭くとる家計現実消費ベースによる推計である。本研究では,両方の推計を行った。いずれの推計でも,社会福祉と公共事業の牛産波及効果の差は1%以内におさまっており,社会福祉と公共事業の生産波及効果はほとんど同程度とみなせる。この結果は,短期的な景気浮揚のための公共支出の配分において,公共事業だけでなく,社会福祉も選択肢の1つになりうることを示唆している。
著者
千田 亮吉 塚原 康博 畑農 鋭矢 山田 知明 加藤 久和 溜川 健一 福田 慎
出版者
明治大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

人々が将来を見据えて意思決定をするとき、財政拡大による景気刺激効果は大きくならない。それは、人々が財政拡大によってもたらされる将来の税負担を予想するからである。しかし、財政政策が地域の労働生産性を引き上げる効果を持つと、その地域では将来にわたってより多くの所得が期待され、人が流入する。したがって、人の移動を通して地域の経済が活性化する可能性が生まれ、財政政策の効果は労働移動を考慮しない場合に比べて大きなものとなる。