著者
福田 慎一 寺西 重郎
出版者
岩波書店
雑誌
経済研究 (ISSN:00229733)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.160-181, 2003-04

経済発展過程における長期賃金の役割を理論的・実証的に検討し,政策的含意を導きだす.長期資金の役割には市場の失敗に関連して2種類のものがある.ひとつは,マクロ的期間変換負荷にかかわるもので,マクロ的に資金供給が短期的で資金需要が長期性のものであるとき,金融システムの期間変換上のリスク,したがってパニックの可能性が高まり,銀行は過剰な資金回収の誘因をもつ.いまひとつは,借り手と貸し手の非対象性情報にかかわるものであり,貸出が短期的なものであるとき,貸し手による借り手の内部情報の独占が生じ,特定の貸し手からしか借入れができないという非効率性が生じる.この2つの市場の失敗を防ぐため長期資金の供給などが必要とされる.実証面では,高度成長期におけるマクロ的期間変換負荷の計測,開銀融資の公的情報供給効果,長期資金の投資増大効果などが検討される.最後に,アジア通貨危機における海外からの短期資金の変動の意味が,発展と長期資金の観点から検討される.This paper examines the role of long-term funds in the process of economic development. Two roles are examined in light of the experience of high-growth-period Japan. First, a shortage of long-term funds is considered to increase term-transformation burden on a financial system. Intensification of the burden induces the banking sector to have incentives for excessive liquidation of short-term loan commitments. Second, lender-customer relationships under short-term loan contracts tend to result in monopoly of internal information of the borrowers by banks, and hence exploitation of the former by the latter. Long term funds are expected to mitigate these two inefficiencies. Time series movement of term-transformation index is examined. Supply of long-term funds is shown to have positive effect on investment rate, and also to cause diversification of funding sources of firms.
著者
鈴木 和志 千田 亮吉 溜川 健一 福田 慎
出版者
明治大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

投資資産価格モデルを利用して企業価値の変動を説明する際に、有形資産投資(設備投資)のみならず無形資産の代表としてR&D投資を追加すると、説明力が飛躍的に向上することを実証的に明らかにした。医薬品や電気機械・電子部品産業に属する技術革新的企業では、資産を1単位増加させることで得られる企業価値の増分は、R&D資産(無形資産)による方が設備資産(有形資産)によるよりもはるかに大きい。時価評価の有形資産に対する企業価値の比率であるTobinのq は、従来から設備投資の唯一絶対的な指標とされてきたが、技術革新的企業ではそれが不適切であることを明らかにした。
著者
福田 慎一
巻号頁・発行日
2012

筑波大学博士 (医学) 学位論文・平成24年7月25日授与 (甲第6326号)
著者
千田 亮吉 塚原 康博 畑農 鋭矢 山田 知明 加藤 久和 溜川 健一 福田 慎
出版者
明治大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

人々が将来を見据えて意思決定をするとき、財政拡大による景気刺激効果は大きくならない。それは、人々が財政拡大によってもたらされる将来の税負担を予想するからである。しかし、財政政策が地域の労働生産性を引き上げる効果を持つと、その地域では将来にわたってより多くの所得が期待され、人が流入する。したがって、人の移動を通して地域の経済が活性化する可能性が生まれ、財政政策の効果は労働移動を考慮しない場合に比べて大きなものとなる。
著者
ウィワッタナカンタン ユパナ 浅子 和美 北村 行伸 小田切 宏之 岡室 博之 伊藤 秀史 福田 慎一 小幡 績 寺西 重郎 伊藤 秀史 福田 慎一 小幡 績 久保 克行
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

本研究プロジェクトは、東アジアにおける企業の大株主のさまざまな役割について明らかにした。企業を支配している大株主は、ファミリー、銀行、政府であり、モニタリング、企業・グループの組織構造、所有・経営権の構造、政界進出等の大株主の行動が、企業パフォーマンスに与える影響を動学的に分析した。これらの企業レベルの行動は、経済政策、経済危機といったマクロ経済レベルにまで影響を与えていることがわかった。
著者
福田 慎一
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、新たな「ゾンビ企業」の判別手法を開発し、それに基づいて「ゾンビ企業」が復活するメカニズムに関する実証分析を行うと同時に。非上場企業のデータを用いながら、ガバナンス構造がパフォーマンスに与える影響を実証的に考察し、複数の論文にまとめて公刊した。また、その政策的含意の考察という観点から金融政策および財政政策に関する理論的・実証的を行い、複数の論文にまとめて公刊した。