著者
津田 彰 津田 茂子 山田 茂人
出版者
久留米大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

本研究は、実験的-フィールド研究の方法論に基づいて、ストレスの状態と心理生物学的ストレス反応との関連性について検討を加えたものである.3年間の研究を通じて、以下に列挙するような知見を最終的に得ることができた。1.唾液中MHPGの測定と不安の指標としての妥当性について男女大学生221名を対象に、唾液3-mthoxy-4-hydroxyphenylglycol(MHPG)(ノルアドレナリンの代謝産物)濃度と気分(STAIならびにPOMSによって測定)、精神的健康度(GHQ-28で評価)との関連性を検討したところ、男子学生の場合、不安、緊張、抑うつ、怒り、敵意の気分ならびに特性不安とMHPG濃度との間に有意な相関が認められた。しかしながら、女子学生では、このような関係がまったく認められなかった。女子の場合、性周期がMHPG濃度の交絡要因になったためと思われる。2.唾液中MHPG濃度の減少と抗不安薬によるストレス症状改善との相関不安障害患者25名を対象に、抗不安薬(alprazolam 0.8-1.2mgまたはtandospirone 30mg)を投与し、ストレス症状の改善と唾液中MHPG濃度の減少が相関するかどうか検討を加えた。ストレス症状はいずれの薬物においても有意に減少したが、その程度はalprazolamの方で著明であった。Alprazoiam投与を受けた患者のMHGP濃度は投与1適間後に有意に低下したが、tandospirone投与では、とくに関連性を認めなかった。これらの知見より、唾液MHPG濃度はストレス状態を敏感に反映する指標であること、また抗不安薬の効力を臨床的に評価するための客観的な指標になり得ることが明らかとなった。