著者
長田 あかね 家原 彰子 岡井 毅芳 金子 千沙 小林 凱之 高橋 葉子 見市 泰男 山路 興造 渡邊 美秀子
出版者
京都造形芸術大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

長命茂兵衛家文書は、中世から近世にかけて南都両神事能(春日若宮祭能と興福寺薪能)で活動した年預に関する、ほぼ唯一のまとまった文書群であり、日本芸能史・能楽史の研究を中心に、きわめて重要な資料と位置づけることができる。研究期間を通して、同文書について、書誌データの採取、目録・釈文・解題・画像データの作成、参考文献の収集他の作業を達成し、同文書の分析および年預の活動実態に関する研究も行った。その結果、これまで事実上未公開であった同文書の全面公開への道筋をつけ、同文書を活用した今後の研究発展に貢献しうる成果を得るに至った。
著者
山路 興造
出版者
社団法人 日本印刷学会
雑誌
日本印刷学会誌 (ISSN:09143319)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.135-141, 2016 (Released:2016-05-15)
参考文献数
5

Since the Law for the Protection of Cultural Properties was established in 1950, our country has been producing a record of intangible cultural properties, which are characterized as non-physical objects to be protected, as well as tangible cultural properties. The details of the movement of intangible cultural properties could not be recorded because papers were mainly used for recording. Videotapes or DVDs have recently become popular, thus enabling the recording of intangible cultural properties. The method of recording the on-stage performances of professionals in national theaters is applied to the recording of intangible cultural properties. However, as for the intangible cultural properties succeeded by local festivals, discussions on how they should be preserved have just begun, and there are as yet only a few places to store and exhibit them.
著者
天野 文雄 中川 真 山口 修 山路 興造 吉川 周平 谷村 晃 林 公子 山崎 正和
出版者
大阪大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1988

民族芸能の「翁」の意義は、それ自体の価値とともに、能の「翁」研究の資料たる点にある。その両者を兼ね備えている民族芸能の「翁」には奈良豆比古神社翁舞、兵庫県加東上鴨川住吉神社翁舞、神戸市車の大歳神社翁舞などがあるが、後の二者についてはすでに詳細な調査報告がなされているので、このたびは奈良豆比古神社の翁舞を主たる調査対象としたものである。従って、この調査の目的は次のごとくであった。(1)奈良豆比古神社翁舞の歴史と現況の把握。(2)能の「翁」および民俗芸能の「翁」の中における位置づけ。(1)については、奈良豆比古神社および同社翁講所蔵の未紹介史料の発掘があり、それらの文献をもとに聞き取り調査をも併せ行った結果、寛政以後の翁舞や翁講の動向をある程度把握することができた。また、実績報告書にも報告したように、同翁舞の現況についても、所作と音楽を中心に詳細に分析し、記録化することができた。これは平成元年時の詳細な記録として、将来その評価はきわめて高いものとなることは必至と言える。(2)については、奈良豆比古神社の翁舞は上鴨川住吉神社や神戸市大歳神社の翁舞と同系であり、江戸期に南部の薪猿楽や春日若宮おん祭において「翁」を独占的に演じていた「年預」の系譜を引く「翁」であることが判明した。年預は室町期以前の猿楽座の上座衆(翁の上演構をもつ長老座衆)の末裔であり、「翁」という芸能の伝承力の強さ、民族芸能の「翁」の位置と意義について、新たな認識が得られた。