著者
野村 大成 本行 忠志 中島 裕夫 岡 芳弘 藤川 和男 足立 成基 梁 治子
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2004

1.ヒト臓器・組織置換マウスの作製と維持:IgG、IgM値が検出限度以下のC57BL/6J-scid等を大量生産し、ヒト甲状腺、骨髄、肺、胎芽組織片等の長期継代維持を行った。2.核分裂放射能の影響:(1)近畿大学原子力研究所原子炉UTR-KINKI(熱出力;1W,炉心分の熱中性子;最大10^7n/cm^2・sec程度)を用い、照射SCIDマウス体内での正確な中性子線、ガンマ線被曝線量を得た。(2)ヒト甲状腺、肺組織を移植したSCIDマウスに中性子線1回0.2Gyの照射を7日毎に6回および4回繰り返した。ヒト甲状腺、肺組織ともに、ρ53,K-ras, c-kit,β-catenin、RET、bak、BRAF遺伝子の変異は得られていない(γ線11-33Gy急照射では、20例中8個のP53,c-kitの突然変異が有意に発生したが、緩照射では0であった)。また、GeneChipを用いた遺伝子発現異常の解析(8,500遺伝子)をヒト甲状腺とヒト肺組織において4回照射1週間後に行ったところ、甲状腺で59.7、肺では11.5個の遺伝子で4倍以上の変化がみられた。3.放射性ヨード(^<131>I)の影響:0.5MBq/マウスのI-131投与を週1回繰り返した。37週以上群で18例中6個の突然変異が誘発された(p53,β-catenin)。0.06〜0.5MBq/マウス1回投与でも25-51.5個の遣伝子発現異常がみられ、強い影響を確認できた。4.チェルノブイリ核施設崩壊事故被曝者にWT1遺伝子の発現異常が有意に検出された。白血病発生のとの関連が2例にみられた。被曝者F_1のマイクロサテライト変異の調査も行った。5.放射線障害防護実験:ガンマ線による発生異常、白血病に対し、担子菌菌子体由来物質の有意な予防効果をみつけた。以上、当初計画どおりの成果を得た。
著者
杉山 治夫 相馬 俊裕 岡 芳弘 小川 啓恭
出版者
大阪大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1997

1.多数例の化学療法を受けた白血病患者で、治療前、導入療法終了時、地固め療法終了時のWT1値をRT-PCR法を用いて測定したところ、治療前は、全例、異常高値を示したが、導入療法後、約半数の患者で、WT1値は検出感度以下になっており、さらに地固め療法後は、約70%の患者で、WT1値は、検出感度以下になっていた。このことは、WT1 assayで、白血病のMRDを的確にモニターできることをconfirmした。2.同種骨髄移植後のAML患者のMRDをWT1 assayでモニターしていたところ、WT1値の上昇が見られたので、分子再発と診断し、分子再発の時点で、ドナーリンパ球輸注(DLT)を行ったところ、著効を呈し、通常の副作用もなかった。このことが、WT1 assayで、再発を分子再発のレベルで診断し、早期にDLTを施行すれば、DLTの有効性が増大することを示している。3.チェルノブイリ原発事故の被曝者が末梢血でのWT1値を測定したところ、異常高値をとるものが多く認められ、これらの人々の今後の経過が注目され、WT1 assayによる白血病の早期診断の可能性も出てきた。