著者
杉山 治夫 相馬 俊裕 岡 芳弘 小川 啓恭
出版者
大阪大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1997

1.多数例の化学療法を受けた白血病患者で、治療前、導入療法終了時、地固め療法終了時のWT1値をRT-PCR法を用いて測定したところ、治療前は、全例、異常高値を示したが、導入療法後、約半数の患者で、WT1値は検出感度以下になっており、さらに地固め療法後は、約70%の患者で、WT1値は、検出感度以下になっていた。このことは、WT1 assayで、白血病のMRDを的確にモニターできることをconfirmした。2.同種骨髄移植後のAML患者のMRDをWT1 assayでモニターしていたところ、WT1値の上昇が見られたので、分子再発と診断し、分子再発の時点で、ドナーリンパ球輸注(DLT)を行ったところ、著効を呈し、通常の副作用もなかった。このことが、WT1 assayで、再発を分子再発のレベルで診断し、早期にDLTを施行すれば、DLTの有効性が増大することを示している。3.チェルノブイリ原発事故の被曝者が末梢血でのWT1値を測定したところ、異常高値をとるものが多く認められ、これらの人々の今後の経過が注目され、WT1 assayによる白血病の早期診断の可能性も出てきた。
著者
宮脇 修一 恵美 宣彦 三谷 絹子 大屋敷 一馬 北村 邦朗 森下 剛久 小川 啓恭 小松 則夫 相馬 俊裕 玉置 俊治 小杉 浩史 大西 一功 溝口 秀昭 平岡 諦 小寺 良尚 上田 龍三 森島 泰雄 中川 雅史 飛田 規 杉本 耕一 千葉 滋 井上 信正 濱口 元洋 古賀 大輔 玉置 広哉 直江 知樹 杉山 治夫 高久 史麿
出版者
一般社団法人 日本血液学会
雑誌
臨床血液 (ISSN:04851439)
巻号頁・発行日
vol.46, no.12, pp.1279-1287, 2005 (Released:2009-07-28)
参考文献数
12

急性骨髄性白血病(Acute myeloid leukemia: AML) 191症例の末梢血のWT1 mRNA発現(Wilms tumor gene 1: WT1)量を定期的に測定し臨床経過との関連を検討した。初発未治療のAML症例におけるWT1の陽性率は93.9% (107/114)であった。寛解が得られ寛解を継続した症例66例の全例でWT1量は寛解に伴い低下し50 copies/μgRNA未満(陰性)となり,84.8% (56/66)の症例が1年後の経過観察終了時陰性であった。非寛解症例54例のうち87.0% (47/54)の症例のWT1量は,経過観察期間中50 copies/μgRNA以上(陽性)であった。寛解後再発した29例の全例において,寛解に伴い低下したWT1量は再発に伴って上昇に転じた。寛解後再発症例の79.3% (23/29)の症例のWT1の値は再発の43日(中央値)前に200 copies/μgRNAを超えて上昇していた。再発診断率,寛解継続診断率および診断効率を考慮するとAMLの早期再発診断のための基準値としては200 copies/μgRNAが妥当と考えられた。WT1量は,微小残存病変(Minimal residual disease: MRD)を反映しAMLの臨床状態に対応して変動していた。今回,WT1測定に使用したキットでは末梢血を用いたことからこのキット検査は患者への負担が少なく,定期的検査に適していると考えられた。