著者
岡井 仁志 岩崎 長 吉田 輝久 平野 正史
出版者
Japanese Society of Tea Science and Technology
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.1985, no.62, pp.9-13, 1985-12-01 (Released:2009-07-31)
参考文献数
4

京都府下の多くの玉露,てん茶園では,施肥の際に元出し,元寄せと呼ばれる伝統的な作業が行われている。しかし,この作業の実施時期は秋の根の生長期にあたっており,根系を傷めるおそれがあると考えられるため,元出し,元寄せが枝条の生育に及ぼす影響について検討した。(1)慣行の深さ(約10cm)で元出しが実施された場合,元出し時期が早いほど,その年の枝条の生長,および翌年の枝条発生数が強く抑制される傾向があった。従って,伝統的な元出しの実施時期は,枝条の生育を抑制することの少ない時期であると考えられた。(2)深層(約30cm)まで元出しを行うと,その実施時期に関係なく,個々の枝条の生長,および枝条の発生数が強く抑制された。(3)総括的にみると,元出し,元寄せが連年実施されると,「少数大枝条型」の生育となる傾向があった。また,枝条数の方が一枝新芽重よりも,生葉収量を大きく左右する要因であったために,元出し,元寄せを連年実施した区の生葉収量は,対照区に比べて少なかったものと考えられた。一方,荒茶品質は,元出し,元寄せを行うとやや向上する傾向が認められた。以上のことから,伝統的な元出し,元寄せは,枝条数の確保よりも個々の枝条の生長を重視した施肥慣行であり,この作業によって,生葉収量は減少するが,荒茶品質は向上すると考えられた。なお,本論文のとりまとめにあたっては,農林水産省茶業試験場茶樹第3研究室長青野英也博士から懇切なる助言と指導を賜った。ここに深謝の意を表したい。
著者
本間 香貴 岡井 仁志 黒瀬 義孝 須藤 健一 尾崎 耕二 白岩 立彦 田中 朋之
出版者
近畿作物・育種研究会
雑誌
作物研究 (ISSN:1882885X)
巻号頁・発行日
vol.55, pp.27-32, 2010
被引用文献数
1

農家圃場における潅水適期診断の一助として開発した水収支モデルを,実農家圃場に適用した.2圃場においてモデルの出力値である有効土壌水分量(<i>Aw</i>)を土壌体積含水率(<i>SMC</i>)に変換し最適化を行ったところ,実測<i>SMC</i>とR<sup>2</sup>=0.75および0.53で一致し,モデルは農家圃場における水分変動を評価しうると考えられた.モデルを実際に運用するに当たっては,各農家圃場に固有のパラメータである有効土壌水分保持能力(AWHC)を推定する必要がある.本研究では黒瀬(2007)による簡易土壌水分計を用いた推定方法について検討を行った.データ数が少ないものの,簡易土壌水分計における1日当たりの指示値の変化量(<i>&Delta;IR</i>)とモデルによる有効土壌水分比(<i>Aw</i>/AWHC)との間には直線関係がみられたため,その関係を解析に用いた.AWHCは3期間における水分計の指示値(<i>IR</i>)の変化量を用いることにより推定でき,圃場間で24〜73mmの範囲を示した.さらに推定したAWHCの値を用いることにより,<i>IR</i>の推移を予測することが出来た.今後,さらに観測数を増やし,信頼性を高めていくことが重要と考えられた.