著者
喜山 克彦 岡山 知世 志田 直樹 内山 友香理 永田 勝太郎 志和 悟子 大槻 千佳 雨宮 久仁子
出版者
公益財団法人 国際全人医療研究所
雑誌
全人的医療 (ISSN:13417150)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.29-40, 2020-01-25 (Released:2020-07-02)
参考文献数
6

筋痛性脳症/慢性疲労症候群(ME/CFS)は,原因不明の慢性で深刻な疲労,広範な痛み,睡眠障害に多彩な症状を呈する疾患である.【症例】14歳女性,ME/CFS,全身のアロディニア,両手指,両足趾の屈曲拘縮.日常生活活動(ADL)は機能自立度評価(FIM)で51/126点を認めた.【経過】補法による治療に加え,理学療法士(PT)によるリハビリテーションを行った.【結果】ME/CFSの症状およびADL(FIM 110/126点)は改善した.【考察】ME/CFS患者の活動性レベルは約50%以上の低下を来す.ある患者はひきこもりや寝たきりとなる.労作後の消耗や疲労感はME/CFSの最も顕著な特徴であり,診断基準にもかかわらず,患者たちはしばしば不適切な運動を処方される.本症例は,補法および患者の持つ資源の活用,担当PTによる適切なリハビリテーションによりADLが改善したと考えている.
著者
岡山 知世 高村 隆 小野寺 萌 岡田 亨
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.81, 2008

【目的】<BR>肩関節周囲炎いわゆる五十肩は、中高年に多くみられる肩関節疾患である。三木らは「明らかな起因を証明しにくい特発性の初老期の有痛性肩関節制動症」と定義している。臨床においては患者に詳細な問診を行うと何らかの動作が誘因となり発症しているケースを多く経験する。肩関節周囲炎における疼痛を引き起こしたと思われる自覚動作(以下、発症誘因動作)の実態についてアンケート調査を施行し、若干の知見を得たので以下に報告する。<BR>【対象・方法】<BR>2007年10月~2008年2月までに当院を受診した肩関節周囲炎患者40歳以上65歳以下の男性10名、女性22名、合計32名(平均年齢56.6歳)を対象とした。対象の除外項目は、中枢・内科・精神・循環器・呼吸器疾患の既往のあるもの。肩関節術後。外傷とした。調査方法は、自己記入形式でアンケートした。調査項目は、1誘因動作の自覚の有無、2発症誘因動作内容、3痛みの発生状況、4発症後の対応、5原因となる動作の作業時間(連続作業時間・1日作業時間)6作業姿勢の6項目とし、同時にJOAスコアも調査した。<BR>【結果】<BR>1、発症誘因動作、ありと回答した患者は18名(65.6%)、なし、5名(12.5%)、わからない、と回答したものは7名(21.8%)であった。2、発症誘因動作の内容は、パソコン作業、重いものを持つ動作、拭き掃除、寝ながらゲームをした等の回答を得た。3、痛みの発生状況は、徐々に痛くなった20名(62.5%)、急に痛くなった5名(15%)。4、発症時の対応は、病院受診18名、病院でない治療機関4名、湿布17名、冷やした2名、温めた2名、何もしない4名、その他4名であった。5、連続作業時間の平均は30分以内4名(12.5%)、1時間以内が3名(0.9%)、1~3時間が8名(25%)、その他7名(21.8%)。1日作業時間は4.12時間であった。6、作業姿勢は坐位12名(48%)、立位12名(48%)、その他1名(4%)。平均JOAスコア67.9点であった。<BR>【考察】<BR>諸家の報告から、「肩関節周囲炎は特別な誘因なく発症する」という文献が多く散見されるが、今回の結果では、65.6%以上に本人が自覚する誘因動作を認める結果が得られた。痛みの発生状況では、発症誘因動作の有無にかかわらず、62.5%が徐々に痛みが生じてきたと回答しており、誘因動作を本人が自覚できないケースが含まれていると考えられた。日常生活動作での肩関節周筋の筋緊張の増加や筋疲労をひき起こす動作は、手関節や上肢の動作を安定させるために肩関節周囲筋群に持続的収縮が強いられる動作が多く、さらに作業への集中などが加わり、長時間の実施による筋疲労の蓄積や作業姿勢への自覚ができず、具体的な誘因動作の特定を阻害しているものと考える。