著者
岡本 全弘 曾根 章夫
出版者
日本家畜管理学会
雑誌
家畜の管理 (ISSN:03888207)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.47-53, 1989-11-06

冬季間の気温、気動、降雨、降雪および直射日光などの気象環境が子牛からの放熱に及ぼす相対的な影響を知るための一つの手段として、子牛の熱的模型を屋外に設置して検討した。熱的模型は筒型のステンレススチール容器の表面に子牛の鞣し毛皮を張り、内部には39℃に温度調節したエチレングリコール液を満たしたもので、両側面の毛皮の下に熱流素子を添付して放熱量を測定した。その結果、直射日光は熱的模型からの放熱量を著し低下させた。風速が熱的模型の熱伝導率に及ぼす影響を検討したところ、1次回帰式が適合した。また、熱模型からの放熱量を気温と風速から推定する重回帰式を導いた。この式の決定係数は0.756であった。降雨や降雪は熱伝導率を上昇させたが、降雨は降雪より影響が大きかった。粉雪は毛先に付くだけで、毛の根元や皮膚面を濡らすことなく、熱伝導率にはほとんど影響しなかった。家畜の管理、25(2) : 47-53.1989.1989年6月19日受理
著者
干場 信司 五十部 誠一郎 佐藤 義和 堂腰 純 曽根 章夫 岡本 全弘
出版者
日本家畜管理学会
雑誌
家畜の管理 (ISSN:03888207)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.73-80, 1988-03-10

カーフハッチの有効性は, 空気の新鮮さと1頭ずつの隔離飼養による疾病の感染防止に基ずいていると考えられるが, 同時にカーフハッチ自体は, 屋外の気象条件を子牛にとって少しでも快適なものとする役割を持っている。本報では, 冬期を対象とした前報にひきつづき, 夏期におけるカーフハッチ内気象環境の改善効果を知る目的で, 子牛のカーフハッチ利用行動と気象環境との関係を検討した。行動調査は, 北海道十勝地方において、7月から9月にわたり8頭の子牛を一般型, 通風型, FRP製, 連鎖型の4種類のカーフハッチに収容して実施した。得られた結果は, 次の通りであった。1)一般型, 通風型およびFRP製のカーフハッチに収容された子牛は, 日中(日の出から日の入りまで)の52%ないし61%をカーフハッチ内で過ごした。これは, 冬期の約80%に比べ, 著しく低い利用率であった。これに対して連鎖型カーフハッチに収容された子牛は, 78%ないし80%の高い利用率を示した。2)冬期間カーフハッチ利用率との間に極めて高い相関を示した風速は, 夏期には, 通風型カーフハッチに収容された3頭のうちの1頭にのみ有意な相関が認められたが, 他の7頭には有意な相関は認められなかった。3)降雨はカーフハッチ利用率に大きく影響を与えており, 降雨日には, 無降雨日の1.3倍ないし1.6倍の利用率を示した。4)通風型カーフハッチに収容された3頭のうちの1頭と一般型カーフハッチに収容された一頭の計2頭の子牛については, 屋外気温および屋外黒球温度とカーフハッチ利用率との間に有意な正の相関が認められ, これらのカーフハッチに防暑効果があることを伺わせた。5)素地のままのFRP製カーフハッチに収容された子牛のカーフハッチ利用率と日射量および日照時間との間には有意な負の相関が認められ, FRP製カーフハッチは防暑効果を有していないことが推察された。6)北海道において, カーフハッチは夏・冬それぞれ異なった機能, つまり冬には風に基ずく寒さを防ぐ機能を持ち, 夏には雨よけとしての機能を持っていることが明らかになった。