著者
岡本 太郎 武重 千冬
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.1-9, 1989

視覚は生後発生する感覚であることは視覚領における視覚ニューロン活動の生後の発達が閉眼の影響をうける事から知られている.視覚の発達には視覚領のみならず, これを認識する過程の発達を無視することは出来ない.視覚の誘発電位を指標とすると, 視覚領における第1次の誘発電位と, これを認識する過程に関係する第2次の誘発電位から, 両者の発達の過程を別々に経日的に検索することが可能である.本研究は誘発電位から視覚発達の過程を検討した.視覚誘発電位 (visual evoked potential, VEP) は生後間もない仔ネコを用いて, ヒトの脳波誘導の10/20法の, Pz (頭頂極) およびInion (後頭極) に相当する部位から双極性に誘導し, 無麻酔, 無拘束の状態で、暗箱の上孔から閃光刺激を与えて誘起した.VEPは, 潜時100ms以下のものを第1次誘発電位, 潜時100ms以上のものを第2次誘発電位とした.第1次誘発電位は, 光刺激による特殊投射系を経た視覚領の誘発電位であるので, 視覚そのものの発達の指標となり, 第2次誘発電位は非特殊投射系を経た誘発電位であるので, 視覚の認識の発達に関する過程の指標となると考えられる.視覚の発達に決定的な影響を与える時期は, 視覚ニューロンの検索では生後4週の始めの数日にあると報じられているので, 生後3週の終わりを基準にして3種の閉眼を行った.すなわち, 生後1) 2-4週の問, 2) 4週以降から, 7週から11週までの間, 3) は1) と2) にまたがる2-6週までの間とした.第1次誘発電位は生後2.5週で初めて出現し, その後振幅を増し, 5週にはほぼ一定の振幅で出現して安定に維持された.これに反し, 第2次誘発電位は不安定で出現の有無も振幅も一定せず, この傾向は生後何れの時期においてもみられた.第1次誘発電位は, どの期間の閉眼によっても, 一時的に減少はしたが, 開眼後は徐々に回復し, 最終的には正常と同程度の振幅に復帰した.これに反して, 第2次誘発電位は閉眼と同時に出現しなくなったが, 1) と2) の閉眼では開眼すると徐々に回復し, やがては閉眼しなかった時と同じように出現するようになった.しかし, 3) の2-6週の閉眼では閉眼中はもとより, 開眼後も実験の期間中の開眼18週後まで全く出現しなかった.以上の結果から, 閉眼の効果は第1次誘発電位よりも第2次誘発電位の方に決定的な影響が現われ, かつ3) の閉眼が第2次誘発電位の発現の阻止に必須であることが明らかとなった.したがって仔ネコでは視覚認識の過程が視覚発達上極めて重要であることが示唆された.
著者
岡本 太郎 柿沢 弘治
出版者
新自由クラブ
雑誌
月刊新自由クラブ (ISSN:03862437)
巻号頁・発行日
vol.3, no.22, pp.p66-73, 1979-01
著者
渡辺 敦光 岡本 太郎 山田 和正 安東 保海 伊藤 明弘 星 正治 澤田 昭三
出版者
日本放射線影響学会
雑誌
Journal of Radiation Research (ISSN:04493060)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.235-239, 1993-09
被引用文献数
2 2

The effects of the dose rate and the energy of fission neutrons using an iron block on tumorigenesis in B6C3F1 mice were examined. Six-week-old female animas were divided into 4 groups and exposes to ^<252>Cf neutron irradiation at dose rates of 0.05 cGy/min, with (Group 1) or without (Group 2) filtering through a 10 cm thick iron block, 0.8 cGy/min (Group 3) or 0 (Group 4 controls). Total neutron exposure was 50 cGy in each of groups 1-3 and total irradiation dose was 56,75 and 75 cGy in Groups 1-3, respectively. Total tumor incidences or multiplicity were significantly higher in Group 3 than in Group 1. A similar tendency was observed as compared to Group 2, ovarian and Harderian gland tumors being mainly affected and adrenal tumors were significantly higher in Group 2 than in Group 1. The results indicated a clear increase in tumorigenesis with the higher dose rate and no filtering influence of iron was evident, despite the drop in neutron energy level.
著者
小出 圭 加藤 良隆 清光 六郎 三浦 義夫 岡本 太郎 則行 敏生 岩本 俊之
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.23, no.12, pp.2828-2832, 1990-12-01
被引用文献数
2

原発性小腸癌は, 比較的まれな疾患であるが, われわれは最近2手術症例を経験したので報告する. 症例1は59歳男性, イレウス症状で発症, CA19-9 の高値および, 小腸造影で Tretz 靱帯より 10cm 肛側で全周性の狭窄を認めた. 腫瘍は同部の空腸にあり, 空腸および回腸の腸間膜付着部側に動脈血行性転移と思われる小病巣を多発性に認めた. 原発巣を含む空腸部分切除を行いえた. 術後1年5ヶ月で死亡した. 症例2は53歳女性, 約6ヶ月間心窩部痛, 悪心, 嘔気が続き, イレウス症状が出現, 小腸造影で空腸末端付近で閉塞を認めた. 腫瘍は Tretz 靱帯より 30cm 肛側の空腸にあり, napkin ring constriction を認め, 腹膜播種もあった. 空腸部分切除を行った. 術後1年11ヶ月で死亡した.