著者
岡部 遊志
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.85, no.3, pp.193-213, 2012-05-01 (Released:2017-10-07)
参考文献数
35

本稿ではフランシュ・コンテ地域圏を事例として,多層化した政府間関係に注目しながら,競争力に重点を置いた地域政策の展開を分析する.地域政策の制度的側面に関して,権限は地域圏政府とグラン・ブザンソンに配分されているが,予算的な裏付けは地域圏政府のみにあり,政府間関係は地域圏政府を中心に成り立っている.実際においては,地域圏政府が競争力発揮の可能性が高い地域を支援し,他の地域には,その他の主体が予算負担することで配慮がなされ,結果として,地域圏内全体として競争力の向上が図られるかたちになっている.逆に実際の産業の転換に際しては,地域圏政府以外の主体も大きく関わっている.地域の中心的産業であった時計産業の衰退に対して,フランシュ・コンテ地域圏では多くの行政主体が関わってマイクロテクニクス産業への転換を促している.こうした方向への合意は必ずしも十分ではなかったが,地域圏政府などに刺激され,企業や研究機関,地方行政主体などが産地形成に向かって一体となって動いている.
著者
岡部 遊志
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.36, 2013 (Released:2013-09-04)

1,はじめに フランスの国土政策は,長きにわたりフランスの首都圏地域,すなわちパリ地域からの富の分散を,主要な政策の要素としてきた.しかし近年,フランスの競争力の低下が懸念されるに伴って,パリ周辺地域も国土政策や地域政策の対象となっている. 本発表では,現地調査などに基づき,パリを擁するイル・ド・フランス地域圏におけるクラスター政策を中心とした地域政策の新展開と,それに関連する政府間関係について発表する.2,イル・ド・フランス地域圏の概要と課題 フランスの国土政策には,国土の均衡ある発展を目指すという思想が根底にはあり,1960年代に工場の立地規制や研究機関の域外移転が行われるなど,イル・ド・フランス地域圏は常に分散政策の対象となってきた.しかし2000年代,グローバル化の進展に伴い,イル・ド・フランス地域圏はフランスにおいて国際的な競争力を発揮できる唯一の地域としてみなされている. イル・ド・フランス地域圏は人口や経済活動がフランスの他の都市に比べ大きく卓越し,競争力に関して高いポテンシャルを持った地域である.現在,工場の閉鎖や海外移転などの影響で,競争力は低下しているといわれているが,パリの南西部に企業の本社や研究開発機能,大学,研究機関などが集積し,R&D拠点としての重要性が増加している. しかし,首都圏地域としての問題点も挙げられる.1つは過大さの弊害であり,情報の多さゆえに人とのネットワークの構築や情報への適切なアクセスが難しくなっている.2つ目は交通体系,居住空間などインフラ面の問題で,競争力が十分に発揮されていないとされる.そして,こうした問題に対応するために各主体が地域政策を行っている.なお,フランスで地域政策を担うのは,制度上は地域圏であるが,イル・ド・フランス地域圏では,首都圏地域の整備を行うために中央政府がグラン・パリという新たな枠組みを作るなど,中央政府が積極的に関わってきている.3,イル・ド・フランス地域圏におけるクラスター政策 近年注目される地域政策はフランス版クラスター政策の「競争力の極」政策である.イル・ド・フランス地域圏には「競争力の極」が複数(表)ありフランスにおいても最大である. その中でもシステマティックSystem@ticはフランスにおいて代表的なクラスターである.この極はICT分野の「競争力の極」であり,フランスを代表する大企業が参加している.この極の予算では,中央政府が負担する割合が大きくなっているが,自治体も重要な割合を占め,そうした多様な主体からの予算負担により,特許や研究においてもフランスの中でも大きな地位を占める. イル・ド・フランス地域圏,特にパリ周辺地域では主体同士のネットワーキングが情報の過剰と首都地域における過密により困難であったが,中央政府と地方自治体が共同で行う「競争力の極」政策によって,主体同士のネットワーキングがコーディネートされ,競争力を発揮する基盤の強化が行われてきている.
著者
岡部 遊志
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.135-158, 2014 (Released:2014-11-29)
参考文献数
21

本稿の目的は,フランスのクラスター政策である「競争力の極」政策について,成立の経緯,地域指定の仕方,産業分野・地理的分布等の特徴を明らかにするとともに,「国際的な極」7地域を取り上げ,いかなる企業間関係と政府間関係の下で,国際競争力の強化が目指されているのかを検討することにある.フランスでは,国際競争力の低下を克服することが重要な課題とされ,これまでの地方分散政策や中小企業支援策に代わり,大企業や大学の役割を重視した「競争力の極」政策が打ち出されてきた.この政策では71の極が,3つのカテゴリーに分けられて指定された.産業分野では,輸送機械製造業が多く,地理的分布においてもパリやリヨンなど,既存の産業集積地域が指定されるといった特徴が見られた.「国際的な極」には7地域が指定されたが,パリに多くが集中するとともに,バイオやICTなどの先端産業の強化が意図されていた.地域圏の役割は重要であるが,地域圏間の連携やパリの多国籍企業との連携など域外との関係も重視され,また中央政府からの支援も重点的に行うことによって,国際競争力の強化が目指されている.