著者
植西 邦生 後藤 康一 岩佐 寧
出版者
日本保険医学会
雑誌
日本保険医学会誌 = The Journal of the Association of Life Insurance Medicine of Japan (ISSN:0301262X)
巻号頁・発行日
vol.101, no.4, pp.393-402, 2003-12-17
参考文献数
24
被引用文献数
2

1990年に我が国で初めて腹腔鏡による胆石の手術が実施されてから,現在では腹腔鏡による手術は胆嚢や胃などの腹部臓器のみならず,胸腔臓器や婦人科,整形外科,泌尿器科などの分野にも幅広く応用され,その実施件数は増加の一方をたどっている。それに比例して腹腔鏡下手術についての手術給付金請求も増加している。一方,我々が用いている手術給付金の支払基準は1987年改定のままであり,1992年の新手術適用ルールに従っても腹腔鏡下胆嚢摘出術に適用させるには手術給付金本来のねらいとは隔たりが大きい。最近,我々は,胆石の腹腔鏡下胆嚢摘出の手術給付金請求に接し,その給付基準を約款(特約)の手術給付倍率表のいずれに求めるかについて苦慮し,腹腔鏡下手術の発展,その手術を受ける患者数の増加という現状を受けて約款(特約)を整備すべき時期にきていると考えた。
著者
岩佐 寧
出版者
日本保険医学会
雑誌
日本保険医学会誌 (ISSN:0301262X)
巻号頁・発行日
vol.101, no.2, pp.181-190, 2003-06-17

2002年10月20-23日に米国フロリダ州オーランドのディズニーワールド内ディズニーズボードウォークインにて行なわれた第111回米国保険医学会年次総会に出席し,最終日に行なわれたThomas E. Murphy Jr.博士による「非糖尿病者における蛋白尿と微量アルブミン尿」を聴取したので報告する。博士は,蛋白尿と微量アルブミン尿の定義,微量アルブミン尿発症のメカニズム,病的意義,原因,国民ベースでの頻度,全死因死亡率や心血管死亡率の予測因子としての意義について報告された。さらに,高血圧症治療薬であるアンギオテンシンII受容体阻害剤による幅広い治療効果及び微量アルブミン尿検出を保険加入時の検査項目とすべきかについても言及された。
著者
岩佐 寧
出版者
日本保険医学会
雑誌
日本保険医学会誌 (ISSN:0301262X)
巻号頁・発行日
vol.100, no.1, pp.35-45, 2002-09-17
被引用文献数
6

近年の医学知識,医療技術の進歩により,以前から知ちれていた疾患の概念,検査法,治療法が大きく変貌している。本論文では,虚血性心疾患をとりあげ,リスク評価の新しいアプローチ法を紹介する。最近の日本人の生活習慣の変化はインスリン抵抗性の発症を促進する。虚血性心疾患を,インスリン抵抗性を基に発症する脂質・糖代謝などの代謝異常や高血圧の結果,冠血管が形態的変化をきたし,さらに,これらの代謝異常と高血圧がリスクファクターとして作用することにより,虚血性心発作=急性冠症候群が惹起される疾患であると捉えると,脂質代謝異常,糖代謝異常,喫煙などのリスクファクターの重要性は明白である。これらのリスクファクターの評価を通じ,虚血性心疾患は逓減性ではなく,逓増性もしくは恒常性リスクの疾患であることを明らかにする。
著者
後藤 康一 植西 邦生 岩佐 寧
出版者
日本保険医学会
雑誌
日本保険医学会誌 (ISSN:0301262X)
巻号頁・発行日
vol.101, no.4, pp.419-430, 2003-12-17

第100回日本保険医学会定時総会が平成15年10月16日,17日の2日間に亘り東京都千代田区有楽町の有楽町朝日ホール(マリオン11階)にて行なわれた。第一日目の小林三世治会長による講演「わが国における保険医学研究」では今までの保険医学が歩んできた道筋と今後の展望が語られた。ついでAchim Regenauerミュンヘン再保険会社医長による特別講演では,ヨーロッパでの保険加入と遺伝子検査をめぐる状況と,保険医学に従事する者の果たす役割の重要性が報告された。今年のパネルディスカッションでは介護保険が取り上げられ,民間が行なう介護保険の展望が討論された。第二日目は,自社のデータに基づく研究報告や文献的考察,事例報告,提案など多様な12題の一般演題を挟んで,明治大学森宮教授は「医療リスクマネジメント〜わが国における方向性を求めて〜」と題する特別講演で,医療事故発生の原因,事故発生予防への視点,事故予防のシステム構築を説かれた。さらに,今年度は,16年ぶりに経験発生率調査ワーキンググループによる条件体についての死亡率研究報告も行なわれた。