著者
岩崎 成夫
出版者
The Society of Synthetic Organic Chemistry, Japan
雑誌
有機合成化学協会誌 (ISSN:00379980)
巻号頁・発行日
vol.49, no.10, pp.892-901, 1991 (Released:2009-11-16)
参考文献数
36
被引用文献数
1 3

CLC部位に作用する化合物の構造要因は立体化学も含めて比較的単純で, STG (3) やPDT (4) のような複雑さを要しないように見える。事実, 多数の合成剤も作られている。しかし, これら薬剤の対象であるカビ, 寄生虫などに耐性が出やすく, A.nidulansのBZ剤耐性株で解析されたβ-TNの変異点が6箇所にも及ぶという事実とよく一致している。一方, 現在までに知られているVLB-MAY部位に作用する化合物は, 皆多数のキラル中心を持つ複雑な構造で, 今までは構造の部分修飾による活性の変化が調べられていた。今後は, 単純化した必須の構造要因を明らかにし, 分子認識機構を解明していくことも期待したい。この部位を標的とする薬剤の医薬・農薬としての応用では, VLB-MAY部位でのβ-TNの変異が起こりにくいことから, 耐性は出にくいという利点が予想される。以上述べてきたように, TNとこれに結合してその機能を阻害する化合物との間の相互作用について, 多くの事実は明らかになってきたが, 依然として, これら阻害剤がTNの3次元構造の何処にどのように結合しているのかは全く分っていない。そのために, 阻害剤を非可逆的に結合する (アフィニティラベル) 試みも続けられている。また, 何時か, TN-リガンド複合体の結晶解析も可能となることを願っている。
著者
西村 幸治 橋本 祐一 岩崎 成夫
出版者
The Pharmaceutical Society of Japan
雑誌
Chemical and Pharmaceutical Bulletin (ISSN:00092363)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.1157-1159, 1994-05-15 (Released:2008-03-31)
参考文献数
8
被引用文献数
57 73

The rate of racemization of N(α)-phthalimidoglutarimide (thalidomide) was determined as its half life to be 566 min at pH 7.4/37°C. This fast racemization of thalidomide resulted in no apparent difference between (S)- and (R)-forms of the compound on enhancing activity of phorbol ester-induced tumor necrosis factor (TNF)-α production by human leukemia HL-60 cells. Optically pure forms of structurally related analog of thalidomide, (S)- and (R)-α -methyl-N(α)-phthalimidoglutarimides (methylthalidomides), which do not racemize under the physiological condition, were prepared. Only (S)-form of methylthalidomide, but not its (R)-form, elicited TNF-α production-enhancing effect, suggesting that the (S)-isomer of thalidomide would be the active form in terms of thalidomidal biological response modifying effects.