著者
岩嵜 博論
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.76-84, 2024-01-10 (Released:2024-01-10)
参考文献数
15

サステナビリティへの取組みの中で,資源を使用した後も循環させ再び資源として活用する循環型経済であるサーキュラーエコノミー(CE)に注目が集まっている。本論では,いち早くCEを前提としたビジネスとマーケティングを確立したパタゴニアのケーススタディを行う。本論では,サービスデザインの領域で発展し,近年ではマーケティング研究の中でも参照されているカスタマージャーニーを用いて,カスタマージャーニーの中でも特に購入後ステージにおけるメンテナンス・修理,リユース,リファービッシュ,リサイクルに注目して分析を行う。パタゴニアは,顧客とのダイレクト接点を活用したマーケティング変革を行うと同時に,購入後ステージにおける使用後の製品に関わる顧客体験をCEに適応する形でデザインしたことがわかった。
著者
岩嵜 博論
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集 日本デザイン学会 第69回研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.148, 2022 (Released:2022-08-30)

行政課題の複雑化や行政サービスのデジタル化に伴って行政組織においてデザイン方法論の活用が進展している。本研究は,日本の行政組織におけるデザイン方法論の実践として,ペルソナがどのように作成され,どのように政策に反映されたかを明らかにすることを目的とする。本研究では,滋賀県庁において2020年度に行われた「ポストコロナにおける滋賀県の姿を考える」ワーキンググループ(WG)で作成されたペルソナとその成果を活用した政策立案の過程を対象に事例研究を行った。事例分析を通じて,行政組織におけるペルソナ活用のメリットとして,1)住民への共感醸成,2)組織内コミュニケーション,3)未来視点での政策立案の3点が挙げられることがわかった。
著者
山本 莉央 岩嵜 博論
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングレビュー (ISSN:24350443)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.33-41, 2023-02-28 (Released:2023-02-28)
参考文献数
10

本研究では量り売り型食品小売業における顧客の文脈価値を明らかにし,量り売り型小売店の価値共創プロセスをサービス・ドミナント・ロジックの視点を援用し探索的に調査した。対象店舗でのフィールド調査と顧客インタビューを通じて,「来店の準備をする」「量る」といったこれまでのセルフサービス業態では見られない特徴的な行動による価値創出の機会が明らかになった。さらに,M-GTAを用いて顧客の文脈価値の把握を行なった結果,店舗において店員と顧客の交流がなくとも量り売りに関する背景知識や文脈などの情報を顧客が認識しており,店舗側が用意する量り売りシステムに能動的に顧客が参加することで「社会貢献に関する価値」「自己影響力に関する価値」「理想的な暮らしに関する価値」という文脈価値が創出できることが分かった。以上の分析をもとに量り売り型小売店での価値共創プロセスの把握を行い,食品小売業においてこれまで価値共創の優位性が低いとされてきたセルフサービス業態における価値共創の可能性を明示するとともに,小売業の新しいあり方を示唆することを目指した。