- 著者
-
岩沢 篤郎
中村 良子
- 出版者
- 一般社団法人 日本感染症学会
- 雑誌
- 感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
- 巻号頁・発行日
- vol.77, no.5, pp.316-322, 2003-05-20 (Released:2011-02-07)
- 参考文献数
- 16
- 被引用文献数
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9
6
強酸性電解水とポビドンヨード製剤, グルコン酸クロルヘキシジン製剤, 塩化ベンザルコニウム製剤を細胞毒性とモルモット創治癒過程の影響, 感染創での膿生成有無で比較検討し, 以下の結果を得た.1) 細胞毒性試験系では, 強酸性電解水の毒性は認められなかったのに対し, ポビドンヨード製剤で0.1%~0.01%, グルコン酸クロルヘキシジン製剤では0.0002~0.0004%, 塩化ベンザルコニウムで10~0.1μg/mlの範囲まで, 毒性が認められた.2) モルモット創治癒過程では, 表皮細胞の遊走には各製剤間で有意な差は認められなかったが, ポビドンヨード製剤・グルコン酸クロルヘキシジン製剤・塩化ベンザルコニウム製剤で, 炎症部位面積は未処理群と比較し有意に大きかった.3) Pseudomonas aeruginosa感染創の膿形成は, 強酸性電解水で12.1%, ポビドンヨード製剤で20.6%, グルコン酸クロルヘキシジン製剤で27.3%, 生理食塩水で38.2%の割合で認められた.以上の結果から, 強酸性電解水の創傷治癒過程における障害は認められず, 汚染部位に菌の感染像がある場合は, 生理食塩水ではなく強酸性電解水を流しながら使用することで, 殺菌効果を期待できることが判明した.消毒薬使用の場合には細胞毒性を示すが, 強酸性電解水はほとんど細胞毒性を示さないため, 創傷治癒に対して促進的な作用ではないが, 有効性が認められたものと考えられた.