著者
古賀 美保 清 佳浩 滝内 石夫 中村 良子
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.531-534, 1982-08-28 (Released:2010-09-09)
参考文献数
18

通常の帯状疱疹の経過中に原発病巣より離れた部位に, 小水萢等の発症をみる汎発性帯状疱疹の2例を経験した.1例はほぼ全身に水痘のごとく播種状に小水疱等が生じた典型的なものであった.2例目は通常の帯状疱疹発症後4~6目にて, 顔面, 四肢, 腰部等に1ケから10数ケ程の皮疹が生じたものであった.これら2例に生じた撒布疹の水疱蓋のSmear標本について, 一次抗体に抗水痘Virus人血清を用い, 二次抗体にFITC標識抗人IgG血清を用いる螢光抗体法により観察した.全ての撒布疹において陽性所見を得た.この結果から, この2症例は臨床的に極めて異なるとはいえ, 病因的にはいつれもVirus血清の結果生じたものと思われた.
著者
宇内 康郎 伊東 昇太 古川 正 本田 常雄 中野目 有一 河合 真 北村 勉 釜谷 園子 樋口 輝彦 大嶋 明彦 平沼 郁江 山下 さおり 崎岡 岩雄 村田 琢彦 白山 幸彦 小滝 ミサ 中村 良子
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.18-29, 1998-02-28 (Released:2010-09-09)
参考文献数
41

最近, 精神・神経系と免疫系との関連や類似性が注目され, 免疫能と脳の局在との関係, 免疫細胞と神経細胞との関係が次第に明らかになっている.そこで今回は, 精神機能と免疫機能との関係を追求する一環として, 主として精神状態と免疫機能との関係を横断的に調査し, その後対象を中等度以上のうつ状態にしぼり, 縦断的に免疫機能と精神状態との関係を総合的に調査した.対象は昭和大学藤が丘病院を1991年11月から1993年3月までに受診した初診患者で, 自己免疫疾患, 感染症, がん, 肝臓疾患, 血液疾患, 皮膚疾患, アレルギー性疾患などを除外した17歳から65歳までの症例である.精神状態像との関係では16名 (男性12名, 女性4名) , うつ病の経過との関係では8名 (男性4名, 女性4名) が選ばれた.免疫機能の指標として, T細胞数, B細胞数, CD4, CD8, CD4/CD8比, Phytohemagglutinin (PHA) によるリンパ球幼若化検査, 更に精神状態との関係では液性免疫 (IgG, IgA, IgM, IgD, IgE) , うつ病の経過ではIL2レセプター数 (マイトジェン刺激後のリンパ球IL2レセプター数) , IL2反応能試験, NK細胞活性, 白血球数, リンパ球数が測定された.うつ病の評価はハミルトンのうつ病評価尺度が用いられ, 測定は初診時と状態改善時に行い, その期間は3週間から19週間に及び, 両時点においてうつ状態と免疫機能との関係を比較検討した.精神状態像と免疫機能との関係では明確な関係は見出せなかったが, うつ病の経過との関係では, うつ病時には, PHAによる幼弱化反応の減少が8例中7例に, またIL2反応能の低下, CD8の減少, CD4/CD8比の上昇が8例中6例に認められ, うつ病時には免疫機能が低下することが示唆された.以上の結果を現在までの報告と比較し, うつ病時に免疫機能が低下する機序について考案した.
著者
岩沢 篤郎 中村 良子
出版者
Japanese Society of Environmental Infections
雑誌
環境感染 (ISSN:09183337)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.179-183, 2001-06-15 (Released:2010-07-21)
参考文献数
9

10%ポビドンヨード製剤中の添加物の違いによる殺菌効果・細胞毒性の差を検討した.その結果, 殺菌効果は製剤間の違いは認められなかったが, 細胞毒性に大きな違いが認められた.この毒性は, グリセリン, ポリビニルピロリドンでは認められなかったことから, 添加界面活性剤の違いと考えられた.ポビドンヨード原末の毒性は低いものの, 創傷部等に頻回に使用する際には, 添加物の毒性にも注意が必要と考えられた.
著者
井上 幸重 西部 陽子 中村 良子
出版者
一般社団法人 日本臨床化学会
雑誌
医化学シンポジウム (ISSN:03863387)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.81-84, 1971-07-20 (Released:2012-11-27)
参考文献数
3

In recent years, there have been many patients in Japan suffering from subacute myelo-optico-neuropathy (SMON) following abdominal disorders. At present, its etiology is not known, however, there are a few kinds of etiological hypotheses. One is that SMON may be a toxicosis caused by oral administration of chinoform, which have many contradictions in explaining the disease. Another is our viral etiological hypothesis, and the present report deals with isolation and some propertiesof the suspect virus present in stools and spinal fluid of SMON patients.Virus was isolated, with a high frequency, in BAT-6 cell cultures accompanying a weak and incomplete cytopathic effect (CPE) from feces and spinal fluid of SMON patients living in different prefectures. Attempts to isolate the virus accompanying CPE in HeLa cells, primary monkey kidney cells, and human embryonic kidney cells were all unsuccessful. On the other hand, no virus was isolated in BAT-6 cells from control specimens except the case of aseptic meningitis. Antiserum prepared from the virus isolated from feces neutralized not only the CPE produced by other viruses from stool but also the CPE produced by all viruses from the spinal fluid of SMON patients.Neutralizing antibody (NT) titers of 13 among 15 sera collected from SMON patients on different days after the onset of the disease were 5 to 10. In contrast, 10 sera collected from normal adults showed NT titer less than 5. Failure to detect high NT titers in patients sera may explain the subacute course and relapse of the disease. Furthermore, convalescent sera of two cases of aseptic meningitis showed NT titer of 160 to 320. The fact suggests that SMON may be a new viral infection following insufficient immunological state.BAT-6 cells were found to be not susceptible to human enteroviruses so far tested, and the virus showed a characteristic host range in tissue culture. The virus was sensitive to ether, and 5-iodo-2'-deoxyuridine. Also, the virus was filtrable through a membrane filter with an average pore size of 220mμ, but the virus was unable to pass through a 100mμ pore filter. Studies on pathogenicity of the virus in mice are revealing that the virus seems to be a new neuropathic slow virus. Further investigations about the properties of the virus are now in progress.
著者
坂下 聖加子 岩沢 篤郎 中村 良子
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.76, no.5, pp.373-377, 2002-05-20 (Released:2011-02-07)
参考文献数
7
被引用文献数
5 5

集中治療センターにおいて, 日常的手洗い法 (石鹸流水法), 衛生学的手洗い法 (擦式アルコール製剤を用いたラビング法) と強酸性電解水 (流水下15秒) を日常業務中に常用使用し, 着菌数は, 強酸性電解水, ラビング法, 石鹸流水法でそれぞれ54±63, 89±190, 128±194CFU/agar plate (n=81) であり, 強酸性電解水が最も低値を示した. また, ラビング法においてBacillus属の検出される割合が他法と比べ有為 (P<0.05) に高かった.全身清拭, の手洗いで, 手洗い前の菌数が100CFU以下の場合石鹸流水法の除菌率が悪かった.以上の結果より, 奨励される方法は,(1) 手が明らかに汚れている場合は, 石鹸や消毒薬を使用したスクラブ法で手付着菌数を確実に少なくする.(2) 菌数を減少させた後は, 強酸性電解水の常用(3) 高度の清浄度を必要とするケア前および手洗い設備のない場所ではラビング法を使用する.強酸性電解水を常用し, 場合によりラビング法, 石鹸流水法を使い分けることにより, 手荒れ等の障害の少ない手付着菌数の少ない状態を維持できると考えられた.
著者
岩沢 篤郎 中村 良子
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.77, no.5, pp.316-322, 2003-05-20 (Released:2011-02-07)
参考文献数
16
被引用文献数
9 6

強酸性電解水とポビドンヨード製剤, グルコン酸クロルヘキシジン製剤, 塩化ベンザルコニウム製剤を細胞毒性とモルモット創治癒過程の影響, 感染創での膿生成有無で比較検討し, 以下の結果を得た.1) 細胞毒性試験系では, 強酸性電解水の毒性は認められなかったのに対し, ポビドンヨード製剤で0.1%~0.01%, グルコン酸クロルヘキシジン製剤では0.0002~0.0004%, 塩化ベンザルコニウムで10~0.1μg/mlの範囲まで, 毒性が認められた.2) モルモット創治癒過程では, 表皮細胞の遊走には各製剤間で有意な差は認められなかったが, ポビドンヨード製剤・グルコン酸クロルヘキシジン製剤・塩化ベンザルコニウム製剤で, 炎症部位面積は未処理群と比較し有意に大きかった.3) Pseudomonas aeruginosa感染創の膿形成は, 強酸性電解水で12.1%, ポビドンヨード製剤で20.6%, グルコン酸クロルヘキシジン製剤で27.3%, 生理食塩水で38.2%の割合で認められた.以上の結果から, 強酸性電解水の創傷治癒過程における障害は認められず, 汚染部位に菌の感染像がある場合は, 生理食塩水ではなく強酸性電解水を流しながら使用することで, 殺菌効果を期待できることが判明した.消毒薬使用の場合には細胞毒性を示すが, 強酸性電解水はほとんど細胞毒性を示さないため, 創傷治癒に対して促進的な作用ではないが, 有効性が認められたものと考えられた.
著者
中村 良子
出版者
東京工業大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

宇宙を飛び交っている10^<15.5>eV以下の粒子(宇宙線)は、銀河系内の超新星残骸(SNR)で加速されていると信じられている。しかし、現在見つかっている~TeVまでの加速が行われているSNRは、系内のSNR 270個のうち10個程度しかなく、そのほとんどが爆発からん1000年経った若いSNRとなっている。従って、宇宙線加速とSNRの環境との関係、宇宙線加速の進化、そして宇宙線の主成分である陽子加速については未だ解明されていない。そこで私は加速源の環境と加速の進化を解明するために、(i)爆発から数万年経ったSNRから、電子加速の証拠となるシンクロトロンX線を発見すること、(ii)系内SNRのうちシンクロトロンX線が受かっているサンプルを集め、光度の時間変化を追うことの2点に着目して研究を行った。(i)については、古いSNR W28と、CTBS7Bという2つのSNRがら初めてシンクロトロンX線を発見した。次に、(ii)に述べたサンプルにW28とCTB37Bのデータを加え、光度の時間変化を見た。その結果、年齢の若いSNRはシンクロトロンX線の光度が10^<34>erg/secと明るく、古くなるにつれて光度がさがる傾向が見られた。この傾向を説明するために、我々はSNRの進化に基づいて衝撃波の速度、磁場、電子の最高エネルギーを計算し、シンクロトロンX線の半径に対する光度を求める簡単なモデルを構築した。その結果、プラズマの密度が0.01-1cm^<-3>の時に観測データを良く再現でき、密度が低い環境下にあるSNRほど高いエネルギーまで電子が加速され、加速のタイムスケールも長くなること発見した。同様のモデルを宇宙線の主成分である陽子加速にも適用した。その結果、陽子はSNRの進化の早い時期に一気に~1015eVまで加速されること、また最高到達エネルギーの密度依存性が小さいことがわかった。このように電子加速、陽子加速の進化を追った研究は世界で初めてであり、モデルを構築することによって宇宙線加速と環境の関わりを示唆できたことは、宇宙線加速解明への重要な成果であると言える。