著者
夏木 茜 堀 雅之 松原 康策 太田 悠介 齋藤 良一 磯目 賢一 岩田 あや 池町 真実 竹川 啓史 山本 剛 大楠 美佐子 石和田 稔彦
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.96, no.6, pp.240-244, 2022-11-20 (Released:2022-11-21)
参考文献数
21

Moraxella catarrhalis is a common causative bacterium of otitis media and respiratory tract infection in children. Childhood-onset M. catarrhalis bacteremia is more common in children with underlying conditions, such as immunodeficiency, or those using a nasal device. In children without underlying conditions, the onset is usually at younger than 2 years of age.We encountered a case of M. catarrhalis bacteremia in a previously healthy 3-year-old boy. The patient was hospitalized with a 5-day history of fever. Physical examination on admission showed redness and swelling of the ear drums bilaterally. Blood culture and upper nasopharyngeal swab culture both grew M. catarrhalis, which led to the diagnosis of bacteremia and otitis media caused by this organism. The patient was treated with intravenous cefotaxime for 3 days and sulbactam/ampicillin for the subsequent 3 days, followed by oral clavulanate/amoxicillin for 8 days, with good response. Absence of abnormalities in immunological screening tests and absence of any significant past medical history suggested that the patient was not immunocompromised.
著者
田坂 佳資 松原 康策 仁紙 宏之 岩田 あや 磯目 賢一 山本 剛
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.89, no.6, pp.727-732, 2015-11-20 (Released:2017-07-28)
参考文献数
19
被引用文献数
2 1

小児期の非チフス性サルモネラ属菌による侵襲性感染症の臨床像や,長期間に亘る発症頻度の解析報告は少ない.これらを明らかにするため,地域中核病院において1994~2014 年に無菌検体から同菌が分離された小児を対象に,診療録を後方視的に検討した.研究期間を第1 期(1994~1999 年),第2 期(2000~2004 年),第3 期(2005~2009 年),第4 期(2010~2014 年)に分けた.該当症例は17 例(日齢2~13 歳)であった.腸炎に菌血症合併例が13 例,菌血症・敗血症のみが2 例,骨髄炎,髄膜炎が各1 例であった.発症時期は,第1 期から第4 期の順に各々10 例,5 例,2 例,0 例と経時的に有意(trend p<0.001)に減少し,入院数で補正しても有意(trend p=0.009)な減少であった.新生児期発症2 例と骨髄炎1 例を除く,菌血症を呈した14 例では,入院時WBC は13 例(93%)が15,000/μL 未満で,CRP は0.8~20.4mg/dL と幅広く分布した.これらの菌血症の診断は,血液検査から推定することは困難で,高熱,全身状態不良,低年齢等の危険因子を考慮する必要があった.分離菌のO 血清群はO9,O7,O4 群が各々11 株,5 株,1 株であった.抗菌薬の感受性は評価した15 株中,ampicillin 耐性が2 株,fosfomycin 耐性と中等度耐性が各1 株であった.cefotaxime,ofloxacin またはlevofloxacin,trimethoprim-sulfamethoxazole は全て感性であった.日齢2 の敗血症例は下痢を伴う母からの垂直感染が,日齢14 の髄膜炎例は3 週間の治療後に再発を認めたことがそれぞれの特徴であった.本研究は,小児期侵襲性非チフス性サルモネラ感染症の臨床的特徴を明らかにし,20 年に亘って有意に減少していることを示した本邦初の報告である.
著者
松原 康策 仁紙 宏之 岩田 あや 内田 佳子 山本 剛 常 彬 和田 昭仁
出版者
The Japanese Association for Infectious Diseases
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.86, no.1, pp.7-12, 2012
被引用文献数
2

わが国の小児期侵襲性肺炎球菌感染症 (invasive pneumococcal disease,IPD) の季節変動とそれに関連する因子を明らかにするために,地域中核病院小児科で IPD 患者を後方視的に検討した.対象は,1994 年7 月から2011 年 6 月までの 17 年間に西神戸医療センター小児科で IPD と診断された 15 歳以下の 72 例 (2回の反復例を3 例に認め,患者数は 69 症例) である.疾患内訳は occult bacteremia 48 例,肺炎10 例,髄膜炎10 例,眼周囲蜂窩織炎3 例,乳突洞炎1 例であった.IPD の関連因子として,1) 月齢,2) 同胞数,3) 未就学の同胞数,4) IPD 発症時の本人の保育園・幼稚園の通園の有無,5) 未就学の同胞がいる場合にその同胞の通園の有無の 5 因子を,カルテ記載または電話問診で調査した.季節変動の結果は,4~5 月 (n=21) と 11~12 月 (n=20) の二峰性のピークを形成し 7~9 月 (n=8) の夏季に最も少なかった.4~5 月の 21 例はその他の月に発症した 51 例と比較して,本人の通園している割合 (4~5 月群vs その他の月に発症群,12/21[57.1%]vs 12/51[23.5%];odds ratio,4.3;95% confidence interval,1.5~12.8;p=0.006) においても,また,本人,かつ/または,同胞が通園している割合 (17/21[80.9%]vs 27/51[52.9%];odds ratio,3.8;95% confidence interval,1.1~12.8;p=0.027) においても有意に高かった.しかし,発症月齢 (中央値:14 カ月 vs 15 カ月),同胞数 (0 人[9 例],1 人[11 例],2 人[1 例]vs 0 人[21 例],1 人[27 例],2 人[2 例]),未就学同胞数は 2 群間に相違を認めなかった.一方,11~12 月の第 2 峰群とその他の月群においては上記 5 因子に有意な相違を認めなかった.<BR> 以上から,わが国の小児期 IPD は二峰性の季節変動を示し,4~5 月のピークは通園者が有意に多いことが判明した.4 月からの集団保育への参加が肺炎球菌の保菌率の上昇をもたらし,4~5 月の小児期 IPD のピークを形成する重要な要因のひとつと推測された.