著者
岩男 卓実
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.11-20, 2001-03-30
被引用文献数
1

本研究の目的は,文章の準備書きにおいて,図的な外的表象である階層的概念地図を利用する効果を検討することである。この時,文的な外的表象である箇条書きを利用する群および,準備書きを作成せず,知識語り方略で文章を書く群と比較することで,文章生成のプランニングにおける外的表象の働きについて検討した。更に,準備書きに表現された因果関係が,文章生成に与える影響を調べた。準備書きにおいて外的表象を利用した2つの群の文章は,準備書きを作成しない群のそれよりも,量も多く,質的にも優れていた。準備書きを作成する2つの群を比較したところ,図的な外的表象を準備書きとして利用する概念地図群の被験者は,箇条書き群の被験者に比べ,より分かりやすい文章をより短時間で書くことができていた。
著者
植木 理恵 清河 幸子 岩男 卓実 市川 伸一
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.92-102, 2002-03-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
19
被引用文献数
1 1

「テーマ学習」とは, 児童・生徒が自らテーマを選択し, 情報収集を行い, その結果をまとめて発表する一連の学習活動である。現在は「総合的な学習」の導入への移行期にあたり, このような自己制御的な学習に関する先進的な取り組みがすでに多く報告されている。しかしこれまでの実践事例は, どのようなテーマについて, どのような学習活動を行ったかという記述に留まっているものが多い。教育心理学的な視点からは, 学習者がどのような内的な知識・技能をもち, それをどう高めていくかが問われるであろう。そこで本研究は, 筆者らが大学において地域の児童・生徒を招いて開催してきた実践活動の中で, スタッフがいかにテーマ学習を支援しようと試み, それが子どもたちにどのような効果をもたらしたかについて検討を行った。その結果, 1年間の準備期問とテーマ学習の体験を通して, 子どもたちは「情報どうしを比較すること」「情報を統合すること」といったスキルを自発的に身につけていることが明らかになった。そのような結果をもたらしたスタッフの有効な働きかけとしては「一般的な自己制御学習のスキルを直接教授すること」と「子どものモニタリング機能を担うこと」などがあげられ, 今後のテーマ学習の際にはこのような支援をより意図的に行うことの必要性が示唆された。