著者
伊藤 拓 及川 恵 西河 正行
出版者
明治学院大学心理学会
雑誌
明治学院大学心理学紀要 = Meiji Gakuin University bulletin of psychology (ISSN:18802494)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.123-136, 2013-03-30

本研究では,英国,米国の学生相談機関が行っている集団形式のプログラムの概要を展望し,日本の学生相談機関で精神的不適応の予防を目指した集団形式のプログラムを導入する際の要点を検討した。英国と米国の5つの大学の学生相談機関で行われている集団形式のプログラムの概要をインターネットを通じて収集した。それらの概要を展望したところ,英国と米国の学生相談機関では,不安の解消,コーピングスキルの獲得,抑うつに対処するためのスキルの学習,自信の獲得など,様々な課題を取り扱う集団形式のプログラムを実施しており,プログラムの実施期間も様々であった。展望に基づいて,日本の学生相談機関に精神的不適応の予防を目指した集団形式のプログラムを導入する際の要点として,(1)内容は認知行動療法に基づくこと,(2)ターゲットは抑うつまたは不安の予防であること,(3)集団形式のプログラムや学生相談機関に対する学生の偏見を軽減するなどして,プログラムへの学生の参加を促進する方法を組み込むことが推奨された。
著者
中井 あづみ
出版者
明治学院大学心理学会
雑誌
明治学院大学心理学紀要 = Meiji Gakuin University bulletin of psychology (ISSN:18802494)
巻号頁・発行日
no.22, pp.13-30, 2012-03-30

怒りは一般的な感情体験である一方,攻撃性や敵意,いらいらなどの近似概念と混同され,定義が明確でなかった。本論では,怒りの操作的定義を,怒りの特性を説明する理論,怒りの生起を説明する理論から主に検討しつつ,類似概念と対照しながら展望することを目的とした。怒りは,感情,行動,認知の3つの成分の組み合わせであり,攻撃性や敵意の中心概念として考えることができる。怒りの測定は,怒りの特性,怒りの状態,怒りの表出から行うことができる。怒りの定義を方向付ける要因として,怒りと心身の健康との関係および対人関係に与える影響の2点が挙げられた。怒りのそれらへの負の影響については多く検討されているものの,怒りを健康や適応的な対人関係の維持増進に役立てるための実証モデルが見当たらないことが議論された。
著者
伊藤 拓
出版者
明治学院大学心理学会
雑誌
明治学院大学心理学紀要 = Meiji Gakuin University bulletin of psychology (ISSN:18802494)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.63-74, 2014-03-28

ソリューション・フォーカスト・ブリーフセラピーには,よく用いられる4つの質問があり,それらはさらに「既にある解決」を尋ねる質問と「未来の解決」を尋ねる質問に分けられる。本研究の目的は,セラピストが(1)この4つの質問(ミラクル・クエスチョン,例外探しの質問,スケーリング・クエスチョン,コーピング・クエスチョン),(2)「既にある解決」を尋ねる質問(例外探しの質問,コーピング・クエスチョン,スケーリング・クエスチョン),および(3)「未来の解決」を尋ねる質問(ミラクル・クエスチョン,スケーリング・クエスチョン)を用いる際に,共通して注意している点を明らかにすることであった。8名の日本人セラピストへの面接調査を通して収集された伊藤(2012)のデータが用いられ,分析はKJ法によって行われた。まず,4つの質問を用いる際に,セラピストが注意している点の共通点は,これらの質問を尋ねる適切なタイミングを見定めることであり,それから,Clが回答した内容の具体化,詳細化,明確化に取り組むことであった。次に,「既にある解決」を尋ねる質問を用いる際に,セラピストが注意している点の共通点は,クライエントが回答した過去の経験を,成功したものとしてクライエントが認識するのを促進することであった。さらに,「未来の解決」を尋ねる質問を用いる際に,セラピストが注意している点の共通点は,この質問がクライエントに使用可能かを判断することであった。以上の結果をもとにソリューション・フォーカスト・ブリーフセラピーの質問を効果的に行うためのポイントが論じられた。
著者
伊藤 拓 及川 恵 西河 正行
出版者
明治学院大学心理学会
雑誌
明治学院大学心理学紀要 (ISSN:18802494)
巻号頁・発行日
no.23, pp.123-136, 2013-03

本研究では,英国,米国の学生相談機関が行っている集団形式のプログラムの概要を展望し,日本の学生相談機関で精神的不適応の予防を目指した集団形式のプログラムを導入する際の要点を検討した。英国と米国の5つの大学の学生相談機関で行われている集団形式のプログラムの概要をインターネットを通じて収集した。それらの概要を展望したところ,英国と米国の学生相談機関では,不安の解消,コーピングスキルの獲得,抑うつに対処するためのスキルの学習,自信の獲得など,様々な課題を取り扱う集団形式のプログラムを実施しており,プログラムの実施期間も様々であった。展望に基づいて,日本の学生相談機関に精神的不適応の予防を目指した集団形式のプログラムを導入する際の要点として,(1)内容は認知行動療法に基づくこと,(2)ターゲットは抑うつまたは不安の予防であること,(3)集団形式のプログラムや学生相談機関に対する学生の偏見を軽減するなどして,プログラムへの学生の参加を促進する方法を組み込むことが推奨された。【資料/Short Report】
著者
金沢 吉展 岩壁 茂
出版者
明治学院大学心理学会
雑誌
明治学院大学心理学紀要 = Meiji Gakuin University bulletin of psychology (ISSN:18802494)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.137-147, 2013-03-30

日本の心理臨床家が臨床家を志した当初の動機および現在臨床業務に取り組む動機について,日本語版「心理臨床家の成長に関する調査票」(DPCCQ-J)の自由記述回答を基に検討した。「臨床家になる元来の動機や理由とその動機をもった時期」に対する116名の回答と「現在心理臨床業務を行う動機」に対する115名の回答を,グラウンデッド・セオリー法と合議的質的研究法に基づく質的分析法により分析した。当初の動機としては,他者貢献への意欲が最も多く,次いで,心理学,心理療法,あるいは心の働きに対する知的・職業的好奇心が挙げられた。現在の動機にも他者を援助することへの意欲が最も多く挙げられたが,32.1%の回答は回答者自身にとっての臨床業務の意義について述べたものであった。業務上あるいは経済的な必要性も当初の動機・現在の動機ともに少なからずみられた。臨床家の教育訓練にどのような課題が示唆されるかについて論じた。
著者
中井 あづみ
出版者
明治学院大学心理学会
雑誌
明治学院大学心理学紀要 (ISSN:18802494)
巻号頁・発行日
no.22, pp.13-30, 2012-03

怒りは一般的な感情体験である一方,攻撃性や敵意,いらいらなどの近似概念と混同され,定義が明確でなかった。本論では,怒りの操作的定義を,怒りの特性を説明する理論,怒りの生起を説明する理論から主に検討しつつ,類似概念と対照しながら展望することを目的とした。怒りは,感情,行動,認知の3つの成分の組み合わせであり,攻撃性や敵意の中心概念として考えることができる。怒りの測定は,怒りの特性,怒りの状態,怒りの表出から行うことができる。怒りの定義を方向付ける要因として,怒りと心身の健康との関係および対人関係に与える影響の2点が挙げられた。怒りのそれらへの負の影響については多く検討されているものの,怒りを健康や適応的な対人関係の維持増進に役立てるための実証モデルが見当たらないことが議論された。論文
著者
田中 知恵
出版者
明治学院大学心理学会
雑誌
明治学院大学心理学紀要 (ISSN:18802494)
巻号頁・発行日
no.22, pp.1-12, 2012-03

結果が不確実であった出来事に対する認知的再解釈と後知恵バイアスに関して実際の出来事を用いて検討した。オリンピック開催地決定前後に調査を実施し,当選都市ならびに落選都市に対する開催地としての望ましさと当選の可能性について調査参加者に回答を求めた。その結果,開催地としての望ましさにおいて当選都市は事前よりも事後に高く回答されたのに対し,落選都市は低く回答された。ただしこの効果はスポーツへの関与度によって調整され,スポーツへの関与の低い参加者は開催を望まなかった都市が落選した場合,すなわち肯定的な結果となった場合に,その都市の望ましさを低めた。また当選の可能性はスポーツへの関与度によって調整された。これらの結果は,関与が低く肯定的な結果となった場合の情報処理方略の観点より解釈された。認知的再評価ならびに後知恵バイアスの効果が出来事への関与度により調整される可能性について考察した。Effects of cognitive reconsrrual and hindsight bias for unconcerned events were investigated using a real event. Two waves of assessment were conducted before and after the venue of the Olympic Games was decided, inquiring the probability and the desirability of a city being selected as the host city. Results indicated that desirability rating of the selected city increased after the selection compared to before. Moreover, the desirability rating of the unselected city decreased after the decision, compared to before. However, this effect was moderated by the respondent's involvement with sports. Participants with low involvement lowered the desirability of the unselected city after the selection when they experienced positive results. The probabilities being selected were moderated by the respondent's involvement with sports. These findings were discussed in terms of information processing strategy of people with low involvement when they meet the positive results. The possibility that involvement in an event may moderate the effects of cognitive reconstrual and hindsight bias is discussed.論文