著者
秋山 広美 小松 孝徳 清河 幸子
雑誌
研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI)
巻号頁・発行日
vol.2011-HCI-142, no.23, pp.1-7, 2011-03-10

ユーザの発するオノマトペには 「何かを表現したいがうまく言語化して表現できないモヤモヤとした印象」 が込められていると言われている.すなわち,オノマトペを入力として扱えるシステムを開発することは,そのようなモヤモヤとした意図を直接的に扱えるため,ユーザの認知的な負担の軽減につながると考えられる.そこで,本研究ではこのようなシステムの構築に向けて,オノマトペの印象を客観的手法に基づき数値化する方法を提案することとした.具体的には,ユーザに対する質問し調査の結果をもとに,オノマトペを構成する音の印象を表現する属性の抽出と属性値の設定,およびその属性値を組み合わせることでオノマトペの印象を表現する方法を提案した.
著者
清河 幸子 伊澤 太郎 植田 一博
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.255-265, 2007-06-30
被引用文献数
7

本研究では,他者との協同の中で頻繁に生じると考えられる,自分自身での課題への取り組み(試行)と他者の取り組みの観察(他者観察)の交替が,洞察問題解決に及ぼす影響を実験的に検討した。具体的には,Tパズルを使用し,(1)1人で課題に取り組む条件(個人条件),(2)20秒ごとに試行と他者観察の交替を行いながら2人で課題に取り組む条件(試行・他者観察ペア条件),(3)1人で課題に取り組むが,20秒ごとに試行と自らの直前の試行の観察を交互に行う条件(試行・自己観察条件)の3条件を設定し,遂行成績を比較した。また,制約の動的緩和理論(開・鈴木,1998)に基づいて,解決プロセスへの影響も検討した。その結果,試行と他者の取り組みの観察を交互に行うことによって,言語的なやりとりがなくても,解決を阻害する不適切な制約の緩和が促進され,結果として,洞察問題解決が促進されることが示された。その一方で,試行と観察の交替という手続きは同一であっても,観察対象が自分の直前の試行である場合には,制約の緩和を促進せず,ひいては洞察問題解決を促進することにはならないことが明らかとなった。
著者
小寺 礼香 清河 幸子 足利 純 植田 一博
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.114-126, 2011 (Released:2011-09-07)
参考文献数
24

A previous study showed that observing others' trials had a positive effect on performance in insight problem solving, whereas observing one's own past trials had a negative effect. We can assume that these effects are caused by the following two factors: one is that the amount and variety of information may increase by observing others' trials, which in turn enhances the possibility of adopting a new perspective or gaining an insight. The second factor is that, regardless of the type of information that a person gains through observation, the fact that this information is obtained from himself⁄herself may disrupt constraint relaxation and consequently, insight problem solving. In this study, we tested whether or not a person's attribution of the observed actions to self disrupts his⁄her performance on the task. For this purpose, we compared the participants' performances across the following four conditions: (1) the solo condition, in which participants were asked to solve a T-puzzle alone; (2) the self-observation condition, in which each participant was asked to alternate between solving the puzzle and observing each of his⁄her own past trials for 30 seconds; (3) the fake other-observation condition, in which each participant was asked to follow the same procedure as in the self-observation condition, but was instructed that the trials he⁄she observed were those undertaken by another person; and (4) the other-observation condition, in which each participant was asked to alternate between solving the puzzle and observing each of another person's past trials for 30 seconds. The results revealed that the participants' performances in the self-observation condition were inferior to those in the other three conditions. The results indicate that observation may disrupt insight problem solving if one attributes the observed actions to oneself, but not if one attributes them to another person.
著者
山田 歩 福田 玄明 鮫島 和行 清河 幸子 南條 貴紀 植田 一博 野場 重都 鰐川 彰
出版者
行動経済学会
雑誌
行動経済学 (ISSN:21853568)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.129-132, 2011 (Released:2012-03-29)
参考文献数
6

本研究では,テイスティングの際に,好き嫌いの理由を意識的に分析することが,サンプルへの選好に与える影響を検討した.参加者は,好きな理由を分析するか,嫌いな理由を分析するか,もしくは分析せずにPepsiとCokeを試飲し,それらの好みを判断した.その結果,分析をしなかった参加者はPepsiよりCokeを好む傾向があったが,好きな理由を分析した参加者はPepsiへの選好を強めることが確認された.嫌いな理由を分析した参加者は,PepsiとCokeに示す好みに違いがなくなった.また,好きな理由についてはPepsiはCokeより記述しやすいと判断されたが,嫌いな理由については両者に違いがなかった.これらの結果は,意識的に味の好き嫌いを分析するテイスティング場面では,直感的な評価と異なる結果をもたらすこと,また,サンプルの理由の記述しやすさがそうした評価の変動を増減させていることを示唆する.
著者
小松 孝徳 秋山 広美 清河 幸子
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第25回全国大会(2011)
巻号頁・発行日
pp.1C2OS4b1, 2011 (Released:2018-07-30)

オノマトペとは擬音語・擬態語などの総称であり,感覚的で直感的な表現を可能とするコトバである.このようなオノマトペに関する特徴的な使用法として,何かを表現したいけれどもうまく言語化して表現できない時に多用してしまうことが挙げられる.そこで筆者らはオノマトペの印象を客観的に数値化することで,ユーザの表現支援を行うシステムが実現できると考えた.本発表では,その数値化方法に関する検討について報告する.
著者
寺尾 尚大 髙橋 麻衣子 清河 幸子
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
pp.89.17312, (Released:2018-11-15)
参考文献数
21

When reading orally, we produce the auditory information of the text through articulatory movements. We investigated the roles of articulatory movements and speech feedback in Japanese text comprehension. Previous studies of Japanese sentence comprehension showed that articulatory movements provide a function to retain word order information and that speech feedback facilitates complementary information processing. We predicted an effect of articulatory movements on verbatim memory and a limited influence of speech feedback on passage comprehension. Twenty-four undergraduates were asked to read 12 Japanese passages with or without articulatory movements and speech feedback. They then performed two types of tasks: verbatim memory and passage comprehension. The results showed that verbatim memory task performance improved with articulatory movements, whereas speech feedback had little effect on either task performance. We concluded that articulatory movements support the memory process and that speech feedback has little contribution to text memory and comprehension among adult readers.
著者
秋山 広美 小松 孝徳 清河 幸子
出版者
情報処理学会
雑誌
研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI) (ISSN:21862583)
巻号頁・発行日
vol.2011, no.23, pp.1-7, 2011-03-10

ユーザの発するオノマトペには 「何かを表現したいがうまく言語化して表現できないモヤモヤとした印象」 が込められていると言われている.すなわち,オノマトペを入力として扱えるシステムを開発することは,そのようなモヤモヤとした意図を直接的に扱えるため,ユーザの認知的な負担の軽減につながると考えられる.そこで,本研究ではこのようなシステムの構築に向けて,オノマトペの印象を客観的手法に基づき数値化する方法を提案することとした.具体的には,ユーザに対する質問し調査の結果をもとに,オノマトペを構成する音の印象を表現する属性の抽出と属性値の設定,およびその属性値を組み合わせることでオノマトペの印象を表現する方法を提案した.Onomatopoeias are usually used in the case that one cannot describe certain phenomena or events literally, and it is said that user' intuitive intentions are embedded in the onomatopoeias. Therefore, an interface system which can utilize the onomatopoeias as input information could comprehend such users' intuitive intentions and would contribute in reducing users' cognitive loads during their interaction with the interface systems. The purpose of this study is then to objectively generalize the onomatopoeic expressions by assigning certain numerical values in each attributes to these expressions to support users' intuitive expressions especially for applying for the interface system.
著者
市川 伸一 南風原 朝和 杉澤 武俊 瀬尾 美紀子 清河 幸子 犬塚 美輪 村山 航 植阪 友理 小林 寛子 篠ヶ谷 圭太
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.333-347, 2009 (Released:2010-09-10)
参考文献数
15
被引用文献数
8

COMPASS is an assessment test based on the cognitive model of mathematical problem solving. This test diagnoses components of mathematical ability which are required in the process of understanding and solving mathematical problems. The tasks were selected through the case studies of cognitive counseling, in which researchers individually interview and teach learners who feel difficulty in particular learning behavior. The purpose of COMPASS is to provide diagnostic information for improving learning process and methods of class lessons. Features of COMPASS include: The time limitations are set for each task to measure the target component accurately; questionnaires are incorporated to diagnose orientation toward learning behavior. The present paper aims to introduce the concept and the tasks of COMPASS to show how cognitive science contributes to school education through the development of assessment tests.
著者
清河 幸子 伊澤 太郎 植田 一博
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.255-265, 2007-06-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
20
被引用文献数
10 3

本研究では, 他者との協同の中で頻繁に生じると考えられる, 自分自身での課題への取り組み (試行) と他者の取り組みの観察 (他者観察) の交替が, 洞察問題解決に及ぼす影響を実験的に検討した。具体的には, Tパズルを使用し,(1) 1人で課題に取り組む条件 (個人条件),(2) 20秒ごとに試行と他者観察の交替を行いながら2人で課題に取り組む条件 (試行・他者観察ペア条件),(3) 1人で課題に取り組むが, 20秒ごとに試行と自らの直前の試行の観察を交互に行う条件 (試行・自己観察条件) の3条件を設定し, 遂行成績を比較した。また, 制約の動的緩和理論 (開・鈴木1998) に基づいて, 解決プロセスへの影響も検討した。その結果, 試行と他者の取り組みの観察を交互に行うことによって, 言語的なやりとりがなくても, 解決を阻害する不適切な制約の緩和が促進され, 結果として, 洞察問題解決が促進されることが示された。その一方で, 試行と観察の交替という手続きは同一であっても, 観察対象が自分の直前の試行である場合には, 制約の緩和を促進せず, ひいては洞察問題解決を促進することにはならないことが明らかとなった。
著者
森口 佑介 上田 祥行 齋木 潤 坂田 千文 清河 幸子 加藤 公子 乾 敏郎
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
日本心理学会大会発表論文集 日本心理学会第84回大会 (ISSN:24337609)
巻号頁・発行日
pp.SS-031, 2020-09-08 (Released:2021-12-08)

これまでの実験心理学は,一人で課題に取り組む際の認知プロセスを明らかにしてきた。一方,近年,他者と一緒に同じ課題に取り組む(ジョイントアクション)場合における認知が,一人で取り組む場合とは異なる可能性が指摘されている。たとえば,一人で個別にフランカー課題に取り組む場合よりも,他者と一緒に取り組んだ場合に,フランカー効果が大きくなる。たが,依然として研究知見は十分ではなく,個別場面で明らかになった認知プロセスは,他者の存在によってどのように拡張されるのか,また,様々な課題にみられる効果が同じようなメカニズムに基づくのか,などは明らかではない。本シンポジウムでは,共同行為場面を扱う知覚(齋木・濱田),記憶(坂田),問題解決(清河),発達(加藤)の専門家による実験的研究を紹介いただき,実験心理学・認知神経科学者の乾から討論をいただきながら,これらの点について深めたい。
著者
清河 幸子 三澤 美翔 鈴木 宏昭
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第13回大会
巻号頁・発行日
pp.44, 2015 (Released:2015-10-21)

本研究では,学習時に,刺激を視覚呈示することに加えて,親近性の高いメロディに合わせて聴覚呈示することが記憶に及ぼす影響を検討した。同様の検討を行った清河・三澤・鈴木 (2014) では,刺激の視覚呈示に加えて童謡「ふるさと」に合わせて聴覚呈示を行った条件(替え歌条件)において,読み上げ音声の聴覚呈示を追加した条件(読み上げ条件)や視覚呈示のみを行った統制条件に比較して自由再生課題の成績が高いことが示された。この結果は,メロディにより記憶が促進されたものと解釈されたものの,原曲の歌詞が手がかりとなった可能性が考えられた。そこで,本研究では歌詞のない原曲を使用することで歌詞と刺激の類似性が手がかりとして作用する可能性を排除した。その結果,歌詞のない原曲を用いてもメロディに合わせて聴覚呈示を加えることの促進効果が確認された。この結果は,メロディ自体が記憶を促進することを示唆している。
著者
植阪 友理 鈴木 雅之 清河 幸子 瀬尾 美紀子 市川 伸一
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.397-417, 2014-02-20 (Released:2016-08-10)
被引用文献数
4

全国学力調査の結果などを受け,教育現場では日本の子どもの学力について,「基礎基本はおおむね良好,活用に課題」と論じられることが多い.しかし,認知心理学を生かした教育実践では,基礎基本が必ずしも十分ではない可能性が指摘されている.そこで本研究では,これらの実践的な知見や認知心理学を参考に開発された,構成要素型テストCOMPASS(市川ら2009)を中学2年生682名に実施し,もし一般的な社会の認識とは異なり,基礎基本が十分なのではないとするならば,特にどのような学力要素が不十分であるのかという実態について検討した.また,調査対象となった生徒の数学担当教師15名に,中学2年生にとって「十分満足」「やや不十分」「極めて不十分」と考えられる基準を評定するよう求めた.教師が評定した基準と,COMPASSの実施結果を比較した結果,数学的概念の不十分さ,基本的な文章題において演算を迅速に決定する力の弱さ,問題解決方略を自発的に利用する力の不十分さなどに課題があることが明らかとなった.これらの結果は,日本の子どもの学力に対する従来の捉え方に再考を促すものである.
著者
寺尾 尚大 髙橋 麻衣子 清河 幸子
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.89, no.6, pp.618-624, 2018

<p>When reading orally, we produce the auditory information of the text through articulatory movements. We investigated the roles of articulatory movements and speech feedback in Japanese text comprehension. Previous studies of Japanese sentence comprehension showed that articulatory movements provide a function to retain word order information and that speech feedback facilitates complementary information processing. We predicted an effect of articulatory movements on verbatim memory and a limited influence of speech feedback on passage comprehension. Twenty-four undergraduates were asked to read 12 Japanese passages with or without articulatory movements and speech feedback. They then performed two types of tasks: verbatim memory and passage comprehension. The results showed that verbatim memory task performance improved with articulatory movements, whereas speech feedback had little effect on either task performance. We concluded that articulatory movements support the memory process and that speech feedback has little contribution to text memory and comprehension among adult readers.</p>