著者
岸 拓弥
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.40, no.7, pp.630-633, 2020-11-15 (Released:2020-12-24)
参考文献数
15

周術期における硝酸薬はイメージとして心血管イベント発症抑制に有用であると誰もが思っていることであろう.しかしながら,これまでの臨床研究ならびにメタ解析では,心血管イベント発症抑制ならびに心筋虚血保護にニトログリセリンが有効であることは示せていない.したがって,ガイドラインでも明白な推奨はされておらず,むしろ耐性や血圧低下・過剰な前負荷軽減に対する懸念がある.ニコランジルは機序的には周術期において有効であると期待できるが,エビデンスは十分ではない.したがって,硝酸薬もニコランジルも,周術期において「なんとなく」「念のため」の使用は避けるべきである.
著者
岸 拓弥
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.53, no.12, pp.1277-1279, 2021-12-15 (Released:2022-12-18)
参考文献数
4
著者
岸 拓弥
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.145, no.2, pp.54-58, 2015 (Released:2015-02-10)
参考文献数
11

血圧と交感神経は,短期的には圧受容器反射により閉ループのネガティブフィードバック関係にある.長期的な血圧は腎臓での圧利尿関係で決定されるが,そこにも圧受容器反射および交感神経が大きく関係している.我々は,高血圧を脳・腎・心・血管連関による血圧動的恒常性維持システム不全と考え,その制御の中心である圧受容器反射および圧受容器反射の中枢弓であり交感神経を規定する「脳」内,特に圧受容器反射中枢弓の最終情報統合部位で交感神経中枢である頭側延髄腹外側野(rostral ventrolateral medulla:RVLM)に着目して研究を行っている.一連の研究により,圧受容器反射の中枢弓が血圧の変動・安定性維持に重要であり,さらには圧利尿においても圧と同等の作用を有することを明らかにした.さらに,バイオニックブレインによる人工圧受容器制御が極めて有効であることも示した.また,脳内においては,交感神経中枢である延髄RVLM内のアンジオテンシンⅡタイプ1受容体活性化により産生される酸化ストレスが交感神経を活性化する最も強力な要因であり,高血圧における交感神経活性化の重要な機序となっていることを報告してきた.高血圧の本質的かつ未到達の治療標的は,脳である.
著者
岸 拓弥
出版者
日本循環制御医学会
雑誌
循環制御 (ISSN:03891844)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.190-193, 2014 (Released:2015-03-26)
参考文献数
9
著者
岸 拓弥
出版者
日本循環制御医学会
雑誌
循環制御 (ISSN:03891844)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.67-70, 2022 (Released:2022-12-27)
参考文献数
27
著者
岸 拓弥 廣岡 良隆
出版者
社団法人 日本循環器管理研究協議会
雑誌
日本循環器病予防学会誌 (ISSN:13466267)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.86-91, 2007

[目的] 糖尿病は、虚血性心疾患だけでなく心不全患者においても多く合併している疾患である。しかし、心不全の発症進展における糖尿病の影響には不明な点も多い。今回の目的は、糖尿病を有する場合と有さない場合での心不全の発症進展の違いについて検討した。<BR>[方法] 2002年1月から2004年8月で、678名の心不全入院患者を早朝空腹時血糖 (FBS) 126mg/dl以上を複数回確認された糖尿病群 (DM group, n=128) とそれ以外の非糖尿病群 (NDM group n=550) に分け、背景・経過を比較した。<BR>[結果] 年齢、性別、喫煙、高脂血症、高血圧、虚血性心疾患、弁膜症、不整脈、内服内容、NYHAクラスおよびBNP値には両群問で有意な差は認められなかった。DM群はbody mass indexが有意に高く、冠動脈多枝疾患と蛋白尿を有する症例が有意に多かった。また、退院後1年以内の心不全による再入院率がDM群でNDM群に比し有意に高かった (44%vs 25%, p<0.01) 。再入院の理由は、コントロール不良の高血圧と虚血性心疾患がDM群でNDM群に比し有意に高かった。心エコーでの左室収縮能や左室径には両群間で有意な差は認められなかったが、E/A比は有意にDM群で低く (0.56±0.10vs 0.78±0.11, P<0.05) 、deceleration timeも有意に延長していた (262±11msec vs 224±15msec, P<0.01) 。<BR>[結語] 糖尿病を有する心不全では有さない場合に比べて、左室拡張能が低下していることが多く、心不全による再入院率が高いことが示唆された。糖尿病の治療が心不全の進展・繰り返す再入院を予防することにつながる可能性がある。