著者
岸本 寛史 小島 一晃 原武 麻里 藤原 和子 岩井 真里絵 石丸 正吾 金村 誠哲
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.911-915, 2014 (Released:2014-09-02)
参考文献数
2

アブストラル®舌下錠は, フェンタニルの速放製剤と位置づけられるが, その用法・用量の調整は, 従来のオピオイド製剤と異なる点が多い. 留意点として, 本剤の増量がレスキュー・アップであることを意識した用量調整, ベース量に見合った1回投与量の上限の目安の設定, レスキュー投与と追加投与の区別, その間隔や回数についての制限の周知, コストなどが挙げられる. これらを鑑みて, 当院では, 原則として経口摂取が難しくなってきた患者で持続注射が導入されていない入院患者を適応とした. 緩和ケアチーム・薬剤部・看護部が協力して上記留意点の周知を図った. 医師向けの講習会を診療科ごとに開催し, 講習を受けた医師のみが処方できるライセンス制を導入し, 医師から看護師への指示を標準化した. また, 看護師をはじめとする医療スタッフ向けに10回の勉強会を開催した. 処方後は, 薬剤部と緩和ケアチームによるモニタリングも行う体制を整えた.
著者
金村 誠哲 橋本 典夫 藤原 和子 原武 麻里 岩井 真里絵 小島 一晃 岸本 寛史
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.317-320, 2017 (Released:2017-12-14)
参考文献数
14
被引用文献数
1

鎮静は症状緩和の方法として広く行われているが,一般病棟での鎮静の実態を多職種による話し合いの施行率を含め包括的に調査した報告は少ない.本研究の目的は当院一般病棟で緩和ケアチーム(palliative care team: PCT)が介入した患者の鎮静の実態を後方視的に調査することである.2012年8月〜2015年10月まで当院においてPCTが介入を開始した一般病棟入院中の終末期がん患者938例のうち2015年11月末時点で,246名が一般病棟で死亡し終末期に鎮静が行われたのは28名(11.4%)で,鎮静開始から死亡までの期間は4.1±3.1日,原疾患は肺がん,対象となった症状は呼吸困難が最も多く,用いられた薬剤は全例ミダゾラムであった.平日はPCTが毎日患者を回診し,多職種による鎮静の話し合いも全例行い鎮静を行うことができていた.
著者
岸本 寛史 斎藤 清二
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究の目的は次の4点である。(1)バウムテストの創始者であるKarl Kochの基本姿勢をドイツ語原著に基づいて明らかにする。(2)『英訳版』とその本訳である『邦訳版』の問題点を明らかにする。(3)我が国へのバウムテストの導入過程を検討する。(4)バウムテストを臨床的に発展させるために事例研究のスタイルについて検討する。結果の概要は次の通りである。(1)コッホはバウムテストを心理診断の補助手段として位置づけようとしていたが、意味論的分析をという手法を用いて、コッホが意図していた「心理診断」を明らかにした。その結果、コッホは判別診断を最終目標としていたのではなく、それも組み込んだ形での総合診断、バウムと描き手とを重ねる形での見立てを目指していたことが明確になった。(2)コッホが示している事例解釈の部分を、ドイツ語原著、英訳版、邦訳版を対比させながら翻訳の問題点を明らかにした。コッホはバウムのイメージを持ち続ける中で開けてくる直感を大切にする、優れた描写はそのまま解釈になる、バウムのイメージを各種の指標を使いながら外からみると同時に、イメージの中に入り込んで内側から見る、被験者への責任感、といった基本姿勢が理解されていないために、邦訳版ではそこで示されている解釈が読者には理解できないものになってしまったと思われた。(3)バウムテストの導入過程については、文献的検討により、邦訳者はコッホの原著の中でも主として発達診断的側面と空間象徴に基づく解釈仮説を盛んに紹介していたが、上記のようなコッホの基本姿勢が紹介されないため、これらの指標や仮説が一人歩きしていることが懸念された。(4)臨床的発展のためにバウムテストの事例研究を行うことが不可欠であるが、そのスタイルについては、従来の全経過を検討するようなスタイルだけでなく、ワンセッションにフォーカスを当てた事例研究が必要だと思われた。