- 著者
-
野村 紘一
西 美智子
島田 保昭
- 出版者
- 公益社団法人 日本獣医師会
- 雑誌
- 日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
- 巻号頁・発行日
- vol.41, no.1, pp.54-57, 1988-01-20 (Released:2011-06-17)
- 参考文献数
- 7
われわれは最近, 6ヵ月齢チンチラ種雄猫において, 耳道対輪部内壁に多発性結節性肥厚を伴う慢性外耳炎の1例に遭遇した. 本症は耳道にカリフラワー様肥厚結節を多数形成するとともに耳奥から多量のチーズ様捏粉状分泌物を排出しており, 外耳口はほんんど閉塞していた. 肥厚結節は, 10数倍に増殖した上皮組織からなり, その表面は, 剥離角化細胞がたまねぎ状の集塊をなして堆積し, いわゆる真珠腫様構造を呈していた.本症の発生原因の詳細は不明であるが, 低脂肪食の給与とプロブコールの内服によって症状の緩解が見られたので, 高脂血症が疑われた. また, これが慢性外耳炎を契機とする耳腔内の角化亢進に拍車をかけたものと推察される.本症に関する報告はほとんどなく, きわめてまれな疾病と考えられるが, 人の耳道に発生する真珠腫 (Ohrcholesteatoma) の所見に酷似しているところから, 本症を猫耳道の真珠腫性肥厚症とした.