著者
野村 紘一
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.71-74, 1995-02-15
被引用文献数
5

着床期の犬子宮内膜に人工的刺激を加えると, 脱落膜反応が誘起できることを先の報告で明らかにしたが, これらの組織反応は刺激の種類によって相違した. 本報告では,オリーブオイルを刺激源にしたときの組織反応の特徴を明らかにする目的でオリーブオイル注入のみの場合と創傷刺激後に注入した場合の組織像を比較検討した. 前者の場合は,子宮内膜上皮は網状あるいは樹枝状に子宮内腔に向け増殖したが, 機能層並びに基底層子宮腺の豪胞状過形成は起こらなかった. これに対して後者の場合は子宮内膜上皮の増殖以外に創傷性損傷を受けたと思われる箇所を中心にして基底腺の嚢胞状拡張増殖が付加され, いわゆるスイスチーズ様内膜を示した. オリーブオイルのみの刺激で子宮内膜上皮並びに緻密層子宮腺の子宮内腔へ向けての増殖を誘発することができるが, 機能層や基底層の子宮腺の増殖拡張を引き起こすには子宮腺の開口部の損傷が必要である.
著者
青木 美香 桑村 充 小谷 猛夫 片本 宏 久保 喜平 野村 紘一 佐々木 伸雄 大橋 文人
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.60, no.10, pp.1087-1091, s・vii, 1998-10
参考文献数
30
被引用文献数
5

イヌの正常および腫瘍細胞に対するリコンビナントヒト腫瘍壊死因子α(rh-TNF-α)とアクチノマイシンD(ACT-D)による細胞障害性を調べた.rh-TNF-αは, 継代培養細胞であるイヌ腎癌細胞に対して濃度依存的に細胞障害性と細胞増殖抑制効果を示した.初代培養されたイヌの正常細胞に対する, rh-TNF-αのみによる細胞障害性はわずかであった.しかし, ACT-Dとの併用により, 正常な腎髄質, 脾臓, 心筋, 肺の細胞で細胞障害性が認められた.自然発生のイヌの腫瘍細胞に対するrh-TNF-αとACT-Dのin vitroにおける細胞障害性を調べたところ, 60%に感受性が認められた.特に, 乳腺の混合腫瘍と肛門周囲腺腫では, 実験に用いたすべての腫瘍で細胞障害性が認められた.今回の実験では, rh-TNF-αとACT-Dはイヌのある種の自然発生の腫瘍細胞に対してin vitroで細胞障害性活性を有することが示された.
著者
野村 紘一 西 美智子 島田 保昭
出版者
日本獸医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.p54-57, 1988-01
著者
野村 紘一 西 美智子 島田 保昭
出版者
Japan Veterinary Medical Association
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.54-57, 1988

われわれは最近, 6ヵ月齢チンチラ種雄猫において, 耳道対輪部内壁に多発性結節性肥厚を伴う慢性外耳炎の1例に遭遇した. 本症は耳道にカリフラワー様肥厚結節を多数形成するとともに耳奥から多量のチーズ様捏粉状分泌物を排出しており, 外耳口はほんんど閉塞していた. 肥厚結節は, 10数倍に増殖した上皮組織からなり, その表面は, 剥離角化細胞がたまねぎ状の集塊をなして堆積し, いわゆる真珠腫様構造を呈していた.<BR>本症の発生原因の詳細は不明であるが, 低脂肪食の給与とプロブコールの内服によって症状の緩解が見られたので, 高脂血症が疑われた. また, これが慢性外耳炎を契機とする耳腔内の角化亢進に拍車をかけたものと推察される.<BR>本症に関する報告はほとんどなく, きわめてまれな疾病と考えられるが, 人の耳道に発生する真珠腫 (Ohrcholesteatoma) の所見に酷似しているところから, 本症を猫耳道の真珠腫性肥厚症とした.
著者
野村 紘一 西 美智子 島田 保昭
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.54-57, 1988-01-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
7

われわれは最近, 6ヵ月齢チンチラ種雄猫において, 耳道対輪部内壁に多発性結節性肥厚を伴う慢性外耳炎の1例に遭遇した. 本症は耳道にカリフラワー様肥厚結節を多数形成するとともに耳奥から多量のチーズ様捏粉状分泌物を排出しており, 外耳口はほんんど閉塞していた. 肥厚結節は, 10数倍に増殖した上皮組織からなり, その表面は, 剥離角化細胞がたまねぎ状の集塊をなして堆積し, いわゆる真珠腫様構造を呈していた.本症の発生原因の詳細は不明であるが, 低脂肪食の給与とプロブコールの内服によって症状の緩解が見られたので, 高脂血症が疑われた. また, これが慢性外耳炎を契機とする耳腔内の角化亢進に拍車をかけたものと推察される.本症に関する報告はほとんどなく, きわめてまれな疾病と考えられるが, 人の耳道に発生する真珠腫 (Ohrcholesteatoma) の所見に酷似しているところから, 本症を猫耳道の真珠腫性肥厚症とした.
著者
岡 好良 加藤 豊明 野村 紘一
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.87, no.2, pp.147-153,A10, 1966-02-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
17
被引用文献数
3

鉄,コバルトおよびニッケルに日本原子力研究所の電子線型加速器で得られる最大エネルギー20MeV,約9×104r/minのγ線を照射し,光核反応残留核に関する基礎検討を行ない,多量の鉄に含まれるコバルトおよびニッケルを非破壊定量する方法を確立した。本照射で起る主反応として54Fe(γ,n)54Fe,57Fe(γ,p)56Mn,58Co(γ,n)58Co,58Ni(γ,n)58Niおよび58Ni(γ,p)57Coを確認し,時間の照射よる生成量を求め,それぞれ,1.3μc57Fe/mg Ni Fe, 8.1×10-2μc56Mn/mg Fe, 6.3×10-2μc58Co/mg Co,1.3μc57Ni/mg Ni および1.5×10-2μc57Co/mg Ni を得た。照射後の試料を約1日冷却すれば主成分の鉄から生じる53Fe(半減期,8.9分)および56Mn(半減期,2.58時間)は減衰し去り,コバルトは58Co(半減期,71日)の0.803MeVのγ線,ニッケルは57Ni(半減期,37時間)の1.37MeVのγ線の光電ピークの示す面積計数率を求め,それぞれを定量できる。このとき鉄をγ線束強度の内部モニターとし,あらかじめ56Mnの1.81MeVあるいは0.845MeVの光電ピーク面積を求めた。酸化鉄(III)100mgに種々の量の酸化コバルト(II)あるいは酸化ニッケル(II)を添加,混合した試料をそれぞれ1時間照射し,照射終了時に換算した放射能計数率比,RA0=cpm(58Co,0.803MeV)/cpm(56Mn,1.81MeV)あるいはRA0=cpm(57Ni,1.37MeV)/cpm(56M,0.845MeV)と混合重量比,Rwとの関係を求め,両者の間によい比例関係を得た。実試料の分析にあたっては照射および測定の条件を混合物のものと同一にしてRA0を求めればRwを知ることができる。本法は,鉄中のコバルト約100ppmニッケル約50ppmまでの非破壊分析法となる。多量のマンガンおよび銅の共存は支障となる。