著者
島田 忠人
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.99, no.6, pp.1207-1212, 2010 (Released:2013-04-10)
参考文献数
10

Helicobacter pylori(H. pylori)除菌後に治療抵抗性の鉄欠乏性貧血(IDA)が改善したというケースレポートが相次いで報告されており,疫学的研究でもH. pylori感染とIDAとの相関が示唆されている.また,これまでに行われた臨床介入試験でも,H. pylori除菌がIDA改善に有効に作用することを示したものが多い.H. pylori感染はホストの鉄バランスに微妙な負の影響を与えており,H. pylori感染がIDA発症のリスクとなっている可能性が考えられる.
著者
内園 まり子 島田 忠人 Mariko Uchizono Tadahito Shimada 獨協医科大学内科学(消化器) 獨協医科大学内科学(消化器) Department of Gastroenterology Dokkyo Medical University Department of Gastroenterology Dokkyo Medical University
雑誌
Dokkyo journal of medical sciences (ISSN:03855023)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.21-29, 2010-03-25

All-trans retinoic acid(ATRA)は核内受容体であるretinoic acid receptor(RAR)のリガンドであり,消化管を含む多くの組織で重要な生理作用を有している.最近,臨床的なレチノイン酸の使用と炎症性腸疾患との関連が注目されているが,この問題に関する基礎的な検討は行われていない.今回我々は,大腸癌由来細胞株を用いて,炎症・免疫応答において中心的な役割を果たしているnuclear factor- k B(NF-k B)シグナリングに対するATRA の影響について,レポーター遺伝子解析法,リアルタイム定量的 RT-PCR法にて検討を行った.ATRA および他のレチノイド化合物(9-cis retinoic acid,13-cis retinoic acid,AM580,retinol)は,大腸癌由来細胞株において用量依存性に NF-k B を活性化した.また,ATRA はNF-k B の代表的な標的遺伝子であるIL-8の発現を誘導した.RAR の活性化と比較するとNF-k B 活性化に要するATRA の濃度域は高かった.TNF-a によるNF-k B の活性化,IL-8発現誘導は,ATRA をプレインキュベーションすることにより著明に増大し,相乗的な効果が認められた.ATRA はNF-k B サブユニット(RelA,p50)の発現を増大させ,TNF受容体(TNFR1)の発現レベルも上昇させていた.これらの結果より,レチノイン酸は大腸上皮細胞においてNF-k B シグナリングを活性化し,TNF-a に対する感受性を増大させている可能性が示唆された.All-trans retinoic acid(ATRA)is a ligand for the retinoicacid receptor(RAR), a member of the nuclear receptorsuperfamily, and it is well established that RARs play acritical role in the development and differentiation of variousorgans including gastrointestinal tract. Recently, severalcase reports suggested a possible association between theclinical use of retinoic acid and inflammatory bowel diseases.However, it is not known whether ATRA affects the inflammatoryresponse of colonic epithelial cells. In this study,we examined the effect of ATRA on NF-k B activity andIL-8 expression in colonic epithelial cells in vitro. NF-k Bactivation and RAR activation were assessed by the reportergene assay and IL-8 mRNA expression was assessed bythe real-time quantitative RT-PCR. ATRA and other retinoidcompounds(9-cis retinoic acid, 13-cis retinoic acid,AM580 and retinol)activated NF-k B in a dose- and timedependentmanner in colonic cell lines(HCT116, Caco2,SW480, DLD-1, and LS174T). However, compared to RARactivation, much higher concentrations of ATRA wereneeded to activate NF-k B. ATRA also up-regulated theexpression of IL-8, a target gene of NF-k B. ATRA-inducedNF-k B activation was repressed by a MEK inhibitorand a p38 MAP kinase inhibitor. Preincubation with ATRAsignificantly potentiated TNF-a -induced activation of NFkB and TNF-a -induced expression of IL-8. ATRA wasfound to up-regulate the expression of NF-k B subunits(RelA and p50)and TNF-a receptor 1. These results suggestthat ATRA and other retinoid compounds can activateNF-k B signaling and potentiate the inflammatory responseto TNF-a in colonic epithelial cells.
著者
島田 忠人
出版者
独協医科大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1995

(研究目的)ヒト胃粘膜におけるヘリコバクター・ピロリ(Hp)感染は、慢性胃炎、消化性潰瘍のみならず胃発がんとも関連すると考えられている。本研究ではHp除菌前後の胃粘膜における発がんと関連した諸因子の変化について検討することを目的としており、今年度はその予備的検討を行った。(方法と結果)Hp除菌判定法に関する検討:除菌治療後の判定にHpのureAをターゲットとしたPCR法を併用し、治療1カ月後の時点で通常の方法でHp陰性と判断された症例の中にもPCR法ではHp陽性と判断される症例が少なくないことが明かとなった。これらの症例の少なくとも一部が臨床的にHp感染の再燃を来すものと考えられた。医原性Hp感染に関する検討:内視鏡を介する医原的なHp感染の可能性を検討するため内視鏡検査前にHp陰性であった症例を経過観察し、内視鏡検査後自覚症状的にも、また血清学的にもHp感染が起こっていないことを確認した。Hpサイトトキシン遺伝子の解析:Hpの菌体側の病原因子として重要なサイトトキシン遺伝子vacAの多型性についてPCR-RFLP法で解析し、各臨床分離株の間で著しい多様性があることが明かとなった。胃粘膜におけるケモカイン発現の解析:Hp感染胃粘膜における炎症反応の解析のため、胃粘膜でのケモカインの発現をRT-PCR法などで検討した。IL-8などのCXC型ケモカインだけでなく、MCP-1、RANTESなどのCC型ケモカインも高頻度に発現していることが明かとなった。(考案)本研究によってHp除菌治療評価に関する有用な情報が得られ、また胃内視鏡検査に伴うHp感染の危険性はほとんどないことが確認された。また、Hpの菌体側因子、Hp感染胃粘膜における慢性炎症病態の解析も進んできたので、これらの情報をもとに、実際に慢性胃炎でHp除菌を希望する患者の胃粘膜における諸因子の治療前後における変化についての検討に着手している。
著者
堀中 真子 大類 方巳 芳賀 とし 瀬田 斉 久内 徹 渡辺 菜穂美 大塚 幸男 原 美佳子 石田 基雄 島田 忠人 寺野 彰
出版者
JAPAN SOCIETY OF NINGEN DOCK
雑誌
健康医学 : 日本人間ドック学会誌 (ISSN:09140328)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.249-254, 1997-10-30
被引用文献数
1

1991年8月から1992年3月までに人間ドックを受診した286名を対象として,血清H.pylori抗体(IgG抗体)と血清ペプシノゲンを測定して検討した。同抗体の陽性率は,全年齢層では69%であった。同抗体陽性群は,同抗体陰性群に比べて,有意に血清ペプシノゲンII値が高く,有意にペプシノゲンI/II比が低かった。さらに同抗体価が上昇するに従い,ペプシノゲンII値は増加傾向,ペプシノゲンI/II比は減少傾向が認められた。