著者
小泉 一愉 今村 智弘 高野 裕二 松江 登久 島田 浩章
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学研究 (ISSN:13447629)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.53-57, 2003-06-01

動物の骨組織や酵母細胞を効率的に破砕する方法としてこれまでに密閉容器を用いたセルミル法が開発されている。この方法では、破砕したい細胞組織をステンレス塊(クラッシャー)と一緒に密閉容器に封入し、これを手動で激しく振とうすることによって植物組織が磨砕され、それによって細胞は粉砕される。しかしながら、この方法では、室温で操作を行なうため、細胞内に含まれるDNaseやRNaseなどの夾雑物の影響は避けられない。また、この方法をそのままイネ組織の破砕に準用した場合、植物組織に含まれる様々な繊維状物質やシリカ化合物による強固な細胞構造のために、十分な破砕効果が得られない。そこで、破砕した植物組織から純度の高いDNA、RNAあるいはタンパク質を得るために、これらの分解が少ない液体窒素条件の超低温での細胞破砕を可能にする器具の開発とこれを用いた新規な細胞破砕法の確立を試みた。ここでは、超低温条件下での植物細胞破砕を可能にしたクールミルの開発について報告する。
著者
東 順一 坂本 正弘 梅澤 俊明 島田 浩章 坂本 正弘 東 順一
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究は,タケの有する高シンク機能の統御機構の解明を目指して実施したものである。中心的な解析手法としてイネのマイクロアレイを用いた。これは,タケの遺伝子がイネの遺伝子と相同性が非常に高く,イネのマイクロアレイが利用可能であると考えたからである。タケノコ,全長5m39cmの幼竹の第17節間の上部と下部,成葉からmRNAを抽出,cDNAを合成してマイクロアレイ実験に供した。アレイ解析の結果,解析した約9,000個のクローンのうちタケノコで特異的に発現したクローンが78個,節間下部で特異的に発現したクローンが635個あった。タケノコではDNA複製やタンパク合成に関与する遺伝子が多く,細胞増殖が盛んであることが伺われた。また,ジベレリン関連遺伝子の発現量も多く,伸長成長に関与すると言われてることを分子レベルで明らかにすることができた。節間下部でとくに発現量の多いクローン34個を選抜して解析したところ,ショ糖合成酵素やセルロース合成酵素などの糖代謝関連遺伝子が多かった。また細胞間連絡に関与している遺伝子や,水輸送に関与するアクアポリンなどの遺伝子の発現量も多かったことが注目される。節間下部でとくに発現量が多かったショ糖合成酵素の遺伝子(以下Susと略)に着目して解析をおこなった。Susはの3クローンのクローニングに成功した。うち2つのクローンはSus1グループに属し,1つはSusAグループであることがわかった。RT-PCRによる発現解析ならびにSus1抗体を用いたウェスタン解析の結果から,伸長成長期にあたる幼竹段階ではSus1の発現量が多かったのに対して,組織が成熟するにしたがってSusAクローンの発現量が増加した。このように,組織・時期においてショ糖合成酵素内におけるクローンの役割が交代しており,タケの伸長成長期において重要な役割を担っていることが強く示唆された。
著者
島田 浩章
出版者
東京理科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

イネの種子形成機構の全体像を分子レベルで把握するため、種子形成期に発現する遺伝子を網羅的に解析した。アンチセンスSPK形質転換体は胚乳形成に異常を起こし、水モミを生じるので、この組換え体を利用して登熟初期に働く遺伝子を調べた。マイクロアレイ実験により、125種の遺伝子の発現に変動が認められ、そのうち顕著な変動を示す遺伝子についてRT-PCRによる発現量の確認と、これらの遺伝子に対するアンチセンス形質転換体の作成を試みた。一方、穂の形態形成異常を示す変異体を利用したマイクロアレイ解析およびディファイレンシャル・ディスプレイー解析を行い、多数の遺伝子発現の変動を見いだした。SUMO1遺伝子はこの変異体で発現量の変動が認められたため、このアンチセンス形質転換体を作成し、表現型を調べた。その結果、SUMOの発現抑制をした形質転換体では穎の消失などの穂の形態異常が認められた。このことから正常な穂の形態形成にSUMOが重要な役割を果たしていることが強く示唆された。この他に、CEN-P類似タンパク質、F-boxタンパク質、GASRタンパク質での発現量の変動が認められた。GASR遺伝子の発現について詳細に調べたところ、この遺伝子は幼穂形成の成長点付近での強い発現が観察された。