- 著者
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川井田 政弘
福田 宏之
川崎 順久
塩谷 彰浩
酒向 司
辻 ドミンゴス 浩司
甲能 直幸
- 出版者
- The Japan Society of Logopedics and Phoniatrics
- 雑誌
- 音声言語医学 (ISSN:00302813)
- 巻号頁・発行日
- vol.32, no.1, pp.11-17, 1991
- 被引用文献数
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非特異性喉頭肉芽腫の5例に対して副腎皮質ステロイド薬の吸入療法を主体とした保存的治療を行った.3例が挿管性, 他の2例が特発性の肉芽腫であった.挿管性肉芽腫の1例はネブライザーを用いて, dexamethasoneの吸入を行ったところ, 約6ヵ月間で治癒した.他の4例はbeclomethasone dipropionate inhaler (BDI) を用いて外来通院で治療したところ, 約1ヵ月ないし3ヵ月半で治癒した.なお, 全例とも不要な咳払いや大声を避けるように指導した.非特異性喉頭肉芽腫の発生原因として, 声門後部の微細な損傷と咳嗽や咳払いによる同部の強い閉鎖に起因する悪循環が考えられた.副腎皮質ステロイド薬の吸入療法では抗炎症作用による直接作用とともに, 間接作用としてこの悪循環を断ち切ることも効果発現に関与していることが考えられた.このうち, BDIの吸入療法は外来でも簡便に行うことができ, 治療法のひとつとして有用と思われた.