著者
浜口 昌巳 川原 逸朗 薄 浩則
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.189-193, 1993-06-20 (Released:2010-12-10)
参考文献数
24

佐賀県栽培漁業センターで1992年の4月に採卵・孵化したのち, 種苗生産を行っていた稚アカウニに8月後半から9月初旬にかけて大量斃死が発生した。発生時の水温は23~25℃で, 斃死個体は黒斑や脱棘が顕著ではなく, 囲口部の変色や付着力の低下などの症状を呈していた。また, 管足表面には多数の糸状とも思える長かん菌の蝟集が認められた。この菌はFlex-ibactey maritimus2408株に対する抗血清とよく反応した。海水で調製した改変サイトファガ培地上で分離したところ, 無色で周辺が樹根状のコロニーを形成した。この細菌による人為感染試験を菌液塗布法 (2.3×106cells/ml) と浸漬法 (3.8×106, 3.8×105cells/ml) によって行ったところ, いずれも発症・斃死にいたった。このことから, 今回の大量斃死は細菌感染症であることが明らかとなった。
著者
伊藤 史郎 川原 逸朗 青戸 泉 平山 和次
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.299-306, 1994-06-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
14

マナマコ (アオナマコ) Doliolaria幼生から稚ナマコへの変態促進に関する2, 3の実験を行い, 以下のような結果が得られた。1.ヤツマタモク, オオバモク, ヒジキ, ジョロモク, フクロノリなどの褐藻で, わずかに稚ナマコへの変態が促進されたが, 付着珪藻に比べるとその効果は極めて低かった。2.自然繁殖させた, いわゆる天然珪藻では, 稚ナマコへの変態がすみやかに進み, また, 付着珪藻の密度が高いほど, 稚ナマコへの変態が促進された。3.単離培養したAchnanthes biceps, Navicula ramosissima, Nitzschia sp.では, その密度にかかわりなく, ほとんど変態が促進されなかった。4.付着珪藻が変態促進効果を発揮するには, Doliolaria幼生との接触が必要であった。5.K+による変態促進効果は認められなかった。6.採苗時の, 付着板の設置方法は, 水槽底面に対して垂直に設置した方が水平に設置した場合よりも, 稚ナマコの付着数のバラツキが少なかった。
著者
伊藤 史郎 川原 逸朗 平山 和次
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.287-297, 1994-06-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
14
被引用文献数
1

アオナマコおよびアカナマコ浮遊幼生のAuricularia後期幼生とDoliolaria幼生について, 稚ナマコへの変態に及ぼす水温と塩分の影響について検討した。さらに, 規模を拡大した実験として, 同一飼育群の浮遊幼生についてAuricularia後期幼生の割合が高まったときと, 発育がさらに進みDoliolaria幼生の割合が高まったときの2回採苗実験を行った。その結果, アオナマコおよびアカナマコともにDoliolaria幼生のほうがAuricularia後期幼生に比べ稚ナマコへの変態過程で, 低水温や低塩分の影響が受けにくく, さらに, 採苗時の水温や塩分の条件が同じ場合, Doliolaria幼生のほうがAuricularia後期幼生に比べて, 稚ナマコへすみやかに変態することが明らかとなった。これらのことから, 採苗はDoliolaria幼生の割合が高まった時点 (平均体長約500μm) で行うのが効果的であるといえる。
著者
川原逸朗
出版者
佐賀県有明水産振興センター
雑誌
佐賀県有明水産振興センター研究報告 = Bulletin of Saga Prefectural Ariake Fisheries Research and Development Center (ISSN:09191143)
巻号頁・発行日
no.22, pp.29-33, 2004-11
被引用文献数
7 12

タイラギ資源に及ぼすナルトビエイによる食害の影響について、定点観察による生息密度の推移と生息場の観察およびにナルトビエイの食性調査結果をもとに検討した。タイラギの造成漁場および天然漁場のいずれにおいても、4月以降の春季と9月から10月にかけての秋季の2回、急激な生息密度の低下(タイラギの消失)がみられ、その際に砕かれたタイラギの殻やすり鉢状の窪みが観察された。また、ナルトビエイの胃内容物を調査した結果、摂餌しているのは、アサリ、サルボウ等の二枚貝がほとんどで、その中にはタイラギが含まれていた。これらの調査結果と、ナルトビエイの摂餌生態や繁殖生態を総合的に考慮すると本調査でみられた造成漁場や天然漁場におけるタイラギ生息密度の低下は、ナルトビエイによる食害が原因であると考えれる。また、調査地点の生息数の減少状況から、タイラギ資源に及ぼすナルトビエイの食害の影響を試算した結果、食害はタイラギ資源の回復のためには解決すべき重要な問題と思われた。