著者
松原 賢 三根 崇幸 伊藤 史郎
出版者
日本海洋学会 沿岸海洋研究会
雑誌
沿岸海洋研究 (ISSN:13422758)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.139-153, 2018

珪藻類のSkeletonema 属およびEucampia zodiacus,渦鞭毛藻類のAkashiwo sanguinea,ラフィド藻類のFibrocapsajaponica は有明海奥部においてノリ漁期にブルームを形成し,ノリの色落ち被害を与える有害な植物プランクトンである.これら植物プランクトンの現場海域における増殖特性を明らかにするため,有明海奥部の塩田川河口域において,2008年4月から2013年3月にかけて植物プランクトンの出現動態と各種環境要因の変動を調査した.珪藻類については,Skeletonema 属は6~9月と1~3月に,E. zodiacus は主に2~3月にブルームを形成した.鞭毛藻類については,渦鞭毛藻類のA. sanguinea は主に9~11月の秋季に,ラフィド藻類のF. japonica は8~9月および11月にブルームを形成した.冬季におけるSkeletonema 属およびE. zodiacus のブルームのきっかけはともに水柱における透過光量の増加であることが示唆された.鉛直循環期であっても,出水や小潮により成層が形成されれば,透過光量が増加することも確認された.A. sanguinea およびF. japonica は競合生物である珪藻類が少ない時にブルームを形成する傾向が確認された.
著者
伊藤 史郎 川原 逸朗 青戸 泉 平山 和次
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.299-306, 1994-06-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
14

マナマコ (アオナマコ) Doliolaria幼生から稚ナマコへの変態促進に関する2, 3の実験を行い, 以下のような結果が得られた。1.ヤツマタモク, オオバモク, ヒジキ, ジョロモク, フクロノリなどの褐藻で, わずかに稚ナマコへの変態が促進されたが, 付着珪藻に比べるとその効果は極めて低かった。2.自然繁殖させた, いわゆる天然珪藻では, 稚ナマコへの変態がすみやかに進み, また, 付着珪藻の密度が高いほど, 稚ナマコへの変態が促進された。3.単離培養したAchnanthes biceps, Navicula ramosissima, Nitzschia sp.では, その密度にかかわりなく, ほとんど変態が促進されなかった。4.付着珪藻が変態促進効果を発揮するには, Doliolaria幼生との接触が必要であった。5.K+による変態促進効果は認められなかった。6.採苗時の, 付着板の設置方法は, 水槽底面に対して垂直に設置した方が水平に設置した場合よりも, 稚ナマコの付着数のバラツキが少なかった。
著者
伊藤 史郎 小早川 淳 谷 雄策
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.257-259, 1987-03-31 (Released:2010-09-07)
参考文献数
7

1) 1986年3月から5月の間, アオナマコ浮遊幼生の飼育適水温を知るため, 13~22℃間における1℃ごとの飼育実験を行った。2) Doliolaria幼生の出現は13~20℃間では水温が高いほど早いが, 22℃は20℃と同じであった。3) 浮遊幼生の適温下限は15℃付近だと考えられる。4) 少なくともAuricularia幼生の適温上限は19℃と考えられるが, Doliolaria以降の幼生の適温上限については明確でない。
著者
伊藤 史郎 川原 逸朗 平山 和次
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.287-297, 1994-06-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
14
被引用文献数
1

アオナマコおよびアカナマコ浮遊幼生のAuricularia後期幼生とDoliolaria幼生について, 稚ナマコへの変態に及ぼす水温と塩分の影響について検討した。さらに, 規模を拡大した実験として, 同一飼育群の浮遊幼生についてAuricularia後期幼生の割合が高まったときと, 発育がさらに進みDoliolaria幼生の割合が高まったときの2回採苗実験を行った。その結果, アオナマコおよびアカナマコともにDoliolaria幼生のほうがAuricularia後期幼生に比べ稚ナマコへの変態過程で, 低水温や低塩分の影響が受けにくく, さらに, 採苗時の水温や塩分の条件が同じ場合, Doliolaria幼生のほうがAuricularia後期幼生に比べて, 稚ナマコへすみやかに変態することが明らかとなった。これらのことから, 採苗はDoliolaria幼生の割合が高まった時点 (平均体長約500μm) で行うのが効果的であるといえる。
著者
伊藤 史郎
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.72, no.3, pp.471-475, 2006 (Released:2006-06-07)
参考文献数
14
被引用文献数
1 1
著者
伊藤 史郎 柴山 雅洋 小早川 淳 谷 雄策
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.757-763, 1989-05-25 (Released:2008-02-29)
参考文献数
10
被引用文献数
4 23

The spawning season of the sea urchin Hemicentrotus pulcherrimus in natural ground, Saga area in Japan starts from around December. In mass production of young sea urchin, the warmer season is then more desirable for the larvae culture. In order to collect the eggs three months earlier than natural spawning season, promotion of maturation and of spawning was conducted by regulating water temperature. The sea urchin which had experienced a period of rising temperature to 26°C, either naturally or artificially, could mature and spawn about 45 days after the temperature was again lowered to 15°C. Those cultured at constant temperature of 15°C from May did not mature and died in July. These experiments suggest that by means of the water temperature regulations, mass production of sea urchin can be commenced from October in the warmer season, the optimum period for culturing larvae. Using this method, the mass production of the sea urchin has been successfully conducted in our station since 1987.
著者
伊藤史郎
出版者
佐賀県有明水産振興センター
雑誌
佐賀県有明水産振興センター研究報告 = Bulletin of Saga Prefectural Ariake Fisheries Research and Development Center (ISSN:09191143)
巻号頁・発行日
no.22, pp.69-80, 2004-11
被引用文献数
6

2000年度の「ノリ不作」により、有明海が抱えている問題がクローズアップされ、「有明異変」として社会問題となった。これを受け、平成14年11月29日に「有明特措法」が公布、施行され、有明海再生に向けた取り組みが始まった。本報では、有明海を取り巻く様々な環境の変化が潮汐流等の有明海特有の浄化能力の低下や濾過食性ベントスである貝類資源の減少をまねいて、さらなる悪化を引き起こしている現状を紹介し、有明海の環境が負の「スパイラル」に陥りつつあることを警告する。最後に、有明水産振興センターが行っている、負の「スパイラル」を正にするための重要な要因おなる貝類資源の回復に向けた独自の取り組みについて紹介する。