- 著者
-
川原田 康
- 出版者
- 一般社団法人 日本農村医学会
- 雑誌
- 日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
- 巻号頁・発行日
- vol.70, no.5, pp.515-522, 2022 (Released:2022-02-20)
- 参考文献数
- 9
我々は分類不能癌と微小浸潤型腺癌,上皮内腺癌の異なる病理像の三重多発肺癌を経験したので報告する。症例は71歳男性。S状結腸癌術前の胸部CTで両肺の結節およびすりガラス結節(ground glass nodule:GGN)を指摘されていた。増大がなく経過観察されていたが,7年目のCTで左肺下葉の空洞性結節が壁肥厚を来たし悪性の可能性が否定できず。2か月後のCTで急速に増大あり,また左肺門リンパ節も急速に増大し,cT2aN1M0,stage ⅡBと判断した。手術を施行したが,左肺門リンパ節が気管分岐部および左主肺動脈まで浸潤しており,左肺全摘術を行なったが完全切除はできなかった。病理結果から左肺門部腫瘤は分類不能癌,左肺下葉の空洞性病変は微小浸潤型腺癌,左肺上葉のGGNは上皮内癌の結果であり,同時性三重多発肺癌と判断した。本症例では手術が予後の延長には寄与しなかったが,文献的には同時性多発肺癌に対して根治切除を行なうことで良好な予後が得られた症例も報告されている。画像所見から安易に多発肺転移と判断せずに,同時性多発肺癌である可能性も考慮した治療選択が必要であると考える。