著者
松岡 太一 川口 敬之 清家 庸佑
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.206-212, 2023-04-15 (Released:2023-04-15)
参考文献数
16

就労を希望する地域在住統合失調症者に対し,社会的転帰を改善する目的で,作業機能障害および生活スキルや環境,内的動機付け,認知機能障害の評価を行った.各種状態の関連性を解釈し,作業機能障害の影響要因と考えられた認知機能障害に対して認知機能リハビリテーションの手法による介入に加え,生活スキルの支援,環境支援を行った.その結果,作業機能障害の改善がみられ,目標としていた就労継続支援A型での就労につながった.認知機能障害を呈する統合失調症者の社会的転帰を改善するうえで,生活スキルや環境,内的動機付け,認知機能障害といった各種要因を解釈しながら作業機能障害の評価に基づく支援を行うことの有用性が示唆された.
著者
川口 敬之 阿部 真貴子 山口 創生 五十嵐 百花 小川 亮 塩澤 拓亮 安間 尚徳 佐藤 さやか 宮本 有紀 藤井 千代
出版者
公益財団法人 医療科学研究所
雑誌
医療と社会 (ISSN:09169202)
巻号頁・発行日
pp.2023.001, (Released:2023-08-23)
参考文献数
21

目的:精神保健福祉に関わる複数の立場の者が「患者・市民参画(Patient and Public involvement:PPI)」による研究を想定した際に,参画する研究段階や研究テーマについて,どのような考えを持っているかを明らかにすることを目的とした。方法:対象は,当事者,家族,支援専門職,行政職員,研究者の立場の参加者37名とし,半構造的なフォーカスグループインタビューを実施した。インタビューでは,PPIによる研究に対し,『どの研究段階で共同したいか/共同できるか』および『研究テーマや方法によって共同したい気持ちは変わるか』に関する参加者個人の考えを聴取した。質的データは,質的内容分析に基づきカテゴリー化を行った。結果・考察:研究段階に関する【研究段階によるPPI実施の可能性】および【各研究段階におけるPPI実施に関する見解】の2領域では,全ての研究段階で共同することの意義とともに,当事者や家族による柔軟な参加の許容が望まれるとする見解や,研究段階における当事者や家族の参画の意義や課題感が示された。また,研究テーマによるPPI実施についての具体的な意見に基づいた【研究テーマによるPPIの実現可能性】および【PPIに基づく研究が有効または実施が期待される研究テーマ】の2領域が生成された。精神保健福祉研究におけるPPIの普及に向け,成功事例の蓄積や解決策の検討を行うべき課題が提示された。
著者
氏井 直樹 松岡 太一 原田 美和子 中村 深雪 川口 敬之 渡邊 愛記
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.337-344, 2023-06-15 (Released:2023-06-15)
参考文献数
13

強度行動障害を呈し長期間保護室対応となっている自閉スペクトラム症者に対し,大切な作業に焦点を当てた個別作業療法を実施した.その有効性を単一事例実験研究に基づき,強度行動障害やパニック回数の変化により検討した.その結果,強度行動障害やパニック回数が個別作業療法開始月より減少し,介入の即時的効果が認められた.また,パニックに対する振り返りが可能となり,パニックの対処法を作業療法士と共に考えられるようになったことから,多床室への転室が月に数日程度可能となった.これらより,大切な作業に焦点を当てた個別作業療法は,自閉スペクトラム症者における強度行動障害の変容をもたらすうえで有効であると示唆された.
著者
葛岡 哲 松岡 太一 川口 敬之
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.340-347, 2022-06-15 (Released:2022-06-15)
参考文献数
13

入院中の統合失調症者に対し,作業機能障害に焦点を当てた介入を行い,リカバリーに与える影響を検討した.評価は作業機能障害の程度,リカバリープロセス,語り,行動,注意サインの出現回数とした.介入は作業機能障害の原因を面接にて共有し,希望する作業を実施するための環境調整や,症状に対する対処プランの作成を協働で行った.その結果,注意サインの出現がなくなり,作業機能障害の改善とともに本人の語りや行動,リカバリープロセスに前向きな変化がみられた.作業機能障害に焦点を当てた介入は当事者の主観的体験を捉え,協働することに貢献すると考えられ,リカバリー志向の作業療法における具体的方策の一つとなる可能性がある.