著者
土井 隆一郎 阿部 由督 伊藤 孝 中村 直人 松林 潤 余語 覚匡 鬼頭 祥悟 浦 克明 豊田 英治 平良 薫 大江 秀明 川島 和彦 石上 俊一
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.256-261, 2013 (Released:2014-01-31)
参考文献数
9
被引用文献数
1

膵神経内分泌腫瘍(pNET)は神経内分泌組織にある腸クロム親和性細胞由来の腫瘍であるとされる。実際に遭遇する腫瘍の種類は多く,腫瘍ごとに症状が異なるため診断方法もさまざまである。しかしながらpNETと診断された場合はすべて外科切除の適応と考えるべきである。インスリノーマ以外の腫瘍は転移・再発のリスクが極めて高く,リンパ節郭清が必要である。肝転移を伴っている場合は予後不良であるが,一方,切除によるメリットがあると判断される場合は肝切除の適応がある。外科切除のみで根治できない症例が多く,集学的治療を考慮しなければならない。pNETに対する分子標的治療薬を組み込んだ治療体系の整理が必要である。
著者
松林 潤 平良 薫 余語 覚匡 鬼頭 祥悟 浦 克明 豊田 英治 大江 秀明 川島 和彦 石上 俊一 土井 隆一郎
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.328-336, 2015-04-01 (Released:2015-04-17)
参考文献数
37

症例は62歳の男性で,健康診断にて胆道系酵素上昇を指摘され,当院を受診した.画像検査で肝左葉に直径3 cmの腫瘤性病変と,その近傍に拡張した肝内胆管を認めた.胆汁細胞診はclass IIであったが,多数の肝吸虫の虫卵が証明された.本患者にはフナの生食の嗜好歴があった.Praziquantelを内服後,肝吸虫症に合併した肝内胆管癌と考え,肝左葉切除術を施行した.病理組織学的検査は低分化型腺癌であった.腺癌周囲にはリンパ球浸潤や線維化が生じており,慢性胆管炎後の変化が見られた.胆管内には結石などその他の慢性炎症の原因となるものはなく,本症例は肝吸虫症による慢性炎症が胆管癌発生に関与したと考えられた.淡水魚の生食歴などがあれば,糞便検査や十二指腸液検査などを行い,肝吸虫や虫卵を認めた場合は,駆虫するとともに胆管癌合併の可能性を考慮する必要がある.