- 著者
-
川崎 成一
- 出版者
- 日本高等教育学会
- 雑誌
- 高等教育研究 (ISSN:24342343)
- 巻号頁・発行日
- vol.22, pp.93-112, 2019-05-31 (Released:2020-06-03)
- 参考文献数
- 24
本稿は,米国大学の資産運用の基本的な枠組みを形成してきた,フィデューシャリー・デューティーの概念を軸に米国信託法の変遷を辿りながら,そこからみえる日本の私立大学における資産運用の特質と,近年みられる新しい資産運用の取り組みについて論じる.日本の私立大学は,本来フィデューシャリーとみなされるが,その資産運用はプルーデント・マン・ルールやプルーデント・インベスター・ルールからは乖離した,ポートフォリオ概念の欠如や単年度志向と公平性の希薄さ,自家運用,使い切り型の疑似基金という特質を有する.しかし,近年では,ポートフォリオ運用や外部運用,教育理念と合致した運用がみられ始める等,フィデューシャリーとしての責務を果たしていこうとする動きがみられる.