- 著者
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川平 友規
- 出版者
- 名古屋大学
- 雑誌
- 若手研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 2005
1.1990年代,リュービッチとミンスキーはクライン群に付随する3次元双曲多様体のアナロジーとして,複素力学系に付随する3次元双曲ラミネーションを定義した.特に,クライン群におけるモストウ剛性のアナロジーにより,ある種の複素力学系の剛性定理を証明している.一方で,3次元双曲多様体に比べ,3次元双曲ラミネーションの構造の詳細は未だ限られた例を除きほとんど知られていない.今年度は昨年度から引き続き,無限回くりこみ可能な2次多項式に付随するリーマン面ラミネーションの構造について研究(カブレラとの共同研究)し,以下の結果について論文を発表した:(1) 無限回くりこみ可能な2次多項式は,チューニング不変量と呼ばれる組み合わせ的な不変量(超吸引的な周期点をもつ2次多項式の列によって記述される)をもつ.一般に,無限回くりこみ可能な2次多項式が特異軌道が持続的回帰性をもつとき,その2次多項式に付随するリーマン面ラミネーションほチューニング不変量に2次多項式に付随するリーマン面ラミネーションと同相な「ブロック」を可算無限個つなぎ合わせることで「ほぼ」得られる.(2) 上記の性質を満たし,かつアプリオリ・バヴンドと呼ばれる幾何的な条件を満たす無限回くりこみ可能な2次多項式について,そのリーマン面ラミネーションと別の2次多項式のリーマン面ラミネーションが向きをこめて同相でれば,ふたつの2次多項式はおなじチューニング不変量をもつ.特に,マンデルブロー集合(2次多項式のパラメーター空間)が前者に対応する点において局所連結であれば,前者と後者は同じ2次多項式である.特に(2)は,力学系から得られる幾何学的な対象が逆に力学系を決定する,という意味で,モストウ剛性に近い剛性定理といえる.2. その他,放物的分岐におけるハウスドルフ次元の微分の評価,ゴールドバーグ・ミルナー予想の研究などを行った.