著者
杉浦 彩子 サブレ森田 さゆり 清水 笑子 伊藤 恵里奈 川村 皓生 吉原 杏奈 内田 育恵 鈴木 宏和 近藤 和泉 中島 務
出版者
一般社団法人 日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.69-77, 2021-02-28 (Released:2021-03-20)
参考文献数
23

要旨: 補聴器がフレイルに与える影響を明らかにすることを目的に, 補聴器導入前と補聴器導入約半年後に基本チェックリスト (Kihon Check List: KCL) を実施し, その変化について検討した。 補聴器装用歴のない60歳以上の補聴器外来初診患者64名において, 補聴器導入前後における KCL 総得点の平均は, 装用前が5.1点, 装用後が4.9点で, 有意な変化は認めなかった。KCL の下位項目である日常生活関連動作, 運動器機能, 低栄養状態, 口腔機能, 閉じこもり, 認知機能, 抑うつ気分も有意な変化は認めず, KCL の質問項目それぞれについての検討で, 質問1(公共交通機関での外出) のみ有意な変化を認めた。KCL 総得点がロバスト方向へ変化した群としなかった群の特性の違いについて検討したところ, 補聴器導入前の KCL 総得点が高得点であること, 良聴耳聴力がよいことが有意にロバスト方向への変化と関連していた。一方, KCL 総得点のフレイル方向への変化の有無における特性は明らかでなかった。
著者
川村 皓生 加藤 智香子 近藤 和泉
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.65-73, 2018-01-25 (Released:2018-03-05)
参考文献数
24
被引用文献数
1

目的:通所リハビリテーション事業所(以下,通所リハ)利用者の生活活動度を構成する因子は多様であるが,様々な生活背景や既往歴を持つ高齢者の生活活動度の関連因子について多方面から調査した研究は少なく,また生活活動度の違いがその後の要介護度の変化にどのような影響を与えるのかについては不明な点が多い.今回は,通所リハ利用者に対し精神・社会機能も含めた複合的な調査を行い,生活活動度の関連因子および,約1年後の要介護度変化の差について検討することを目的とした.方法:2カ所の通所リハ事業所利用者のうち,65歳以上であり,要支援1・2・要介護1いずれかの介護認定を受け,屋外歩行自立,MMSE(Mini-Mental State Examination)≧20の認知機能を有する83名(平均年齢79.5±6.8歳)を対象とした.主要評価項目の生活活動度はLife Space Assessment(LSA)にて評価した.LSAとの関連を調査する副次評価項目として,一般情報(年齢,既往歴,要介護度など),身体機能・構造(握力,Timed Up and Go test(TUG),片脚立位など),精神機能(活力,主観的健康感,転倒不安など),社会機能(友人付き合い,趣味,公共交通機関の有無など)について調査した.また,調査開始から約1年後の要介護度について追跡調査を行った.結果:重回帰分析の結果,TUG(β=-0.33),趣味の有無(β=0.30),友人の有無(β=0.29),近隣公共交通機関の有無(β=0.26),握力(β=0.24)の順にLSAとの関連を認めた.次に,LSA中央値54点でLSA高値群,LSA低値群に二分し,約1年後の要介護度変化(軽度移行・終了,維持,重度移行)についてカイ二乗検定にて検討したところ,群間の分布に有意な差を認めた(p=0.03).結論:通所リハ利用者の生活活動度には,身体機能に加えて,外出目的となり得ることや実際の外出手段を有することといった複合的な理由が関連していることが示唆された.また高い生活活動度を有することにより,その後の要介護度の軽度移行や利用終了に結びつきやすくなる可能性が推察された.