著者
齊藤 稔 青木 孝夫 欒 竹民 幣原 映智 長田 年弘 安西 信一 原 正幸 金田 晋
出版者
広島市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

本研究は東西の伝統的学芸の価値概念である西洋の自由学芸、日本の芸道、中国の六芸を対象とし、解釈学的に比較することを意図した比較芸術学的共同研究であり、広島市立大学をはじめ広島大学その他の大学の専門家の協力をえて推進した。ヨーロッパにおいては古代から中世を経て近世・近代に至るまで7自由学芸(septem artes liberales)、文法、修辞学、弁証術、数学、幾何学、天文学、音楽はアルス(ars)として、技術・芸術と学問の不可分の領域と見なされ、哲学とともに人間性を探究するための、また教育と教養を培うための学芸であった。古代ローマ時代のキケロはそのような教育と教養が人間存在にとって必要不可欠な徳としての気品(dignitas)を生み出すことを強調し、ルネッサンスにおいてペトラルカは人間社会のためにそのような倫理の必要を説いた。これはまた造形芸術の美質であり目的でもあった。他方レオナルド・ダ・ヴィンチは絵画を自由学芸と同列に置き、絵画は学問であるとして「絵画学」(scienza della pittura)を主張した。というのは絵画は遠近法や解剖学や光学などを本質的に必要とするからである。日本の芸道は民族的な美的意識であり、芸術の思念と実践を統合する価値概念であった。これはあらゆる美的な生活芸術を貫く芸と術の道としての芸術的営為であり、教化されるべき様式として把握された。また高い徳と美的に教育された人間存在の教養を形成するために求められた。そこでは制作や表現においても、享受や理解においても、つねに帰一すべき根源的自然、あるいは神的超越者を自覚して精進する。芸道は真・善・美を求める人にとって高徳の人間形成のための、また美的形成、美的教養として望まれる必須のアルス(学芸)であった。中国ではさらに古くから六芸として、礼、楽、射、御、書、数の教養思想があり、基本的には人間として修得すべき教養や道徳であり、技芸や学芸であった。その修得は文学や哲学から詩や書・絵画の技術的習練にも結びついた。それは絵画では書画同体、十八画法などの奥義の技法をも含んでいる。本共同研究はこれら3つの概念を比較学的に研究し、それらの類似と相違を明確にするように試みた。それによって3つの美的システムが学芸の領域に属するだけではなく、真・善・美の価値意識の普遍的理念を伴う人間生活全般に深く関わることを理解することができた。そしてこの総合研究の成果は学際的研究への貢献として、それら伝統的学芸とその解釈が美的真実への感性的理性的認識に到達するものであることを示しえたと考えている。
著者
幣原 映智
出版者
美学会
雑誌
美學 (ISSN:05200962)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.60-66, 1973-03-30

In diesem Buch werden die Bibliographinen uber 14 abendlandischen Hauptschriften uber Musik, und einige Abhandlungen uber Musikgedanken J. -J. Rousseaus, A. Gretrys, A. Scherings u. a. zusammengestellt. Jede Bibliographien zeigen die bisher von Bin Ebisawa gearbeiteten Ergebnisse, nur die eine uber die Harmonik von Aristoxenos, die wohl fur den Anfang der autonomen Musikwissenschaft gehalten wird, mit Harmoniebegriffen bei Pythagoreischer Schule, Platon und Aristoteles zusammenhangend, aber die Musiksituation um 4. Jh. v. Chr. in Athen noch die allgemeine Geistesstromung erwahnt, darf einige Ausserschriftliches nachgetragt werden. In einer Abhandlung "Die musikalische Imitationslehre J. -J. Rousseaus" bringt Bin Ebisawa ins klare den Wandel seines Gedankens. Die philologische Methode, die Gegenuberstellung der Worter oder Satze, in einem Text mit anderem, ist um den Wandel zu greifen hochst gultig, aber auch sieht nicht immer fraglos, insbesondere um den Gedanke denselben zu greifen, wie es eine andere Abhandlung "Musikanschauung A. Gretrys" zeigt.