- 著者
-
平 和也
河原 めぐみ
小沢 彩歌
清水 奈穂美
山川 正信
伊藤 美樹子
- 出版者
- 日本公衆衛生学会
- 雑誌
- 日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
- 巻号頁・発行日
- vol.67, no.6, pp.413-420, 2020-06-15 (Released:2020-07-02)
- 参考文献数
- 13
目的 日本では,平均寿命の延伸に伴い,一般の人々が自身や家族の医療や介護ニーズの意思決定に直面する機会が増えており,Advanced Care Planning(以下,ACP)が推進されている。本研究では,ACPの動機付けと知識獲得を支援するツールとしてゲーミフィケーションを活用した試行プログラム(以下,試行プログラム)を開発し,その短期評価を目的とする。方法 2~4人でプレイするすごろく形式で,止まったマスで高齢期のリスクを提示する問題発生カードをめくり,手札(解決策カード)で解決していくゲーム形式の試行プログラムを開発し,評価のために市民公開講座を開催した。一般の参加者4人1組に研究者1人が同席し,無記名自記式質問紙調査,プレイ中の会話の録音と動画撮影を行った。質問紙の主な調査項目は,年齢,性別といった基本情報と試行プログラムの『ゲームの総合評価』,『ゲームの面白さの持続性』『ゲームの難易度』の3つの観点からの評価(5点満点)や学びになった高齢者のリスクとした。高齢者のリスクは,問題発生カードの内容を選択肢とした設問で回答を得た。また,録音データはトランスクリプト化し,ACPに関する発話の誘発や知識獲得の評価,動画データはゲームの仕様に関する評価に用いた。なお,本調査は滋賀医科大学長の許可を得て実施した。活動内容 参加者は9人であり,50歳代が3人,60歳代が5人,70歳代が1人で全員女性であった。試行プログラム評価(各5点満点で得点が高い方が高評価,高持続性,高難度)は,総合評価は平均4.1±0.6点,ゲームの面白さの持続性は平均4.0±0.8点,難易度は2.2±1.2点であり,高評価で難易度も適正であった。 ゲーム中の発話では,【高齢者のリスクについて】家族の延命治療や在宅看取り希望の療養者の救急連絡などACPにかかわる発話が誘発され,『専門職(ケアマネ)』『地域包括支援センター』などの用語の知識獲得もできていた。また,学びになった高齢者のリスクとしてもACPに関する内容が含まれていた。ただし,解決策カードの解説内容までは理解が及んでいないため,今後,副読書の作成や家庭内で実施した場合の効果検証が必要である。結論 ゲーミフィケーションを活用した試作プログラムが高齢期のリスクに関する知識の獲得および会話を誘発することが示唆された。