- 著者
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山口 十四文
平井 俊朗
実吉 峯郎
- 出版者
- 帝京科学大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 2002
強力かつ選択的なヌクレオシド・ヌクレオチド系テロメラーゼ阻害剤を獲得するための分子設計を行った。テロメラーゼは制がん剤の研究開発を行う際の恰好な標的酵素と考えられる。また、良い阻害剤はテロメラーゼの構造や機能を研究するための試薬として有用であると考えられる。まず、いくつかの糖部変換ヌクレオチドアナログのテロメラーゼに対する阻害効果を塩基部がチミンとグアニンの場合を比較しながら調べた。その中で、3'-アジド-2',3'-ジデオキシグアノシン(AZddG)5'-トリりん酸(AZddGTP)とカーボサイクリックオキセタノシンGトリりん酸(c-oxtGTP)などのいくつかのグアニンヌクレオチドアナログがチミンのものに比べて強い阻害効果を示した。特にAZddGTPが強い阻害を示し、阻害機構はdGTPに関する拮抗阻害とプライマー3'末端に取り込まれるための鎖伸長停止と考えられる。AZddGTPは、脊椎動物DNAポリメラーゼαおよびδに対する阻害は弱かったことから、テロメラーゼ選択的阻害剤といえる。次に、ヒトHL60培養細胞を用いて、数十日の長期間にわたるAZddG処理がテロメアDNA長および細胞増殖速度にどのような影響を及ぼすかを調べた。AZddGは再現性良くテロメアの短小化を引き起こした。また、細胞増殖への影響はそれほど顕著ではなかったが、わずかな増殖速度の低下が認められた。DNAポリメラーゼα阻害を作用機構とするアラビノルラノシルシトシン(araC)がAZddGの効果を増強するかどうか調べたが、特に観察されなかった。現在、既存の制がん剤の効果をAZddGが増強するかどうかを検討中である。