著者
実吉 峯郎
出版者
The Society of Synthetic Organic Chemistry, Japan
雑誌
有機合成化学協会誌 (ISSN:00379980)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.136-146, 1982-02-01 (Released:2009-11-13)
参考文献数
102

The synthesis and biological activities of 1-β-D-arabinofuranosylcytosine (Ara C) and related compounds are reviewed and discussed under following headings : 1. Synthesis of 1-β-D-arabinofuranosylcytosine. 1-1 synthesis from uridine ; 1-2 synthesis from cytidine ; 1-3 synthesis via coupling of bases with suitably protected sugars ; 1-4 synthesis via D-arabinose oxazoline derivative. 2. Biological activities of 1-β-D-arabinofuranosylcytosine and related compounds. 2-1 antitumor and antiviral activities ; 2-2 biological activation of 1-β-D-arabionfuranosylcytosine in vivo and its mode of biological actions ; 2-3 inhibition of DNA polymerases by Ara CTP 2-4 other arabinofuranosyl nucleosides. 3. Some derivatives of 1-β-D-arabinofuranosylcytosine. 3-1 modifications on cytosine moieties; 3-2 sugar-modified derivatives; 3-3 depot form of Ara C and Ara CMP. 4. Scope and limitation of cancer chemotherapy using 1-β-D-arabinofuranosylcytosine and related compounds are also finally discussed.
著者
川口 健夫 実吉 峯郎
出版者
The Pharmaceutical Society of Japan
雑誌
Chemical and Pharmaceutical Bulletin (ISSN:00092363)
巻号頁・発行日
vol.36, no.5, pp.1899-1901, 1988-05-25 (Released:2008-03-31)
参考文献数
15

Inhibition constants (Ki) of pyrimidine acyclonucleosides and several normal pyrimidine metabolites for the phosphorolytic degradation of 5-fluoro-2'-deoxyuridine (FUdR) in rat and beagle tissue homogenates (liver and small intestine) were measured. Acyclothymidine (AcycTdR) showed the lowest Ki value for all the homogenates. The Ki/Km values of AcycTdR and acyclouridine (AcycUdR) depended on the homogenates, and the values (Ki/Km) in the rat liver homogenate were higher than those in all other homogenates.
著者
星 昭夫 飯郷 正明 実吉 峯郎 榑谷 和男
出版者
The Pharmaceutical Society of Japan
雑誌
Chemical and Pharmaceutical Bulletin (ISSN:00092363)
巻号頁・発行日
vol.21, no.7, pp.1535-1538, 1973-07-25 (Released:2008-03-31)
被引用文献数
4 4

Deamination of cytidine derivatives especially of cyclocytidine by mouse kidney cytidine deaminase was examined. Cyclocytidine was not deaminated at either pH6.5 or pH7.3 by the enzyme. Furthermore, cyclocytidine did not inhibit the deamination of aracytidine and ([I]/[S])0.5 value for cyclocytidine was over 100. As a result, cyclocytidine is found to be markedly active compound with resistance against cytidine deaminase.
著者
星 昭夫 官沢 文彦 榑谷 和男 実吉 峯郎 新井 祥子
出版者
The Japanese Cancer Association
雑誌
GANN Japanese Journal of Cancer Research (ISSN:0016450X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.145-146, 1971-04-30 (Released:2008-10-23)
参考文献数
8
被引用文献数
4

2, 2'-O-Cyclocytidine was active against L-1210 leukemia. Cures were observed at the optimal dose of the compound, though no cures were obtained at any dose of any of the known antitumor agents. The compound was less toxic than 1-β-D-arabinofuranosyl-cytosine and resistant to cytidine deaminase.
著者
実吉 峯郎 両角 正海 小玉 健次郎 町田 治彦 国中 明 吉野 宏
出版者
The Pharmaceutical Society of Japan
雑誌
Chemical and Pharmaceutical Bulletin (ISSN:00092363)
巻号頁・発行日
vol.28, no.10, pp.2915-2923, 1980-10-25 (Released:2008-03-31)
参考文献数
24
被引用文献数
16 26

Enzymatic selective dephosphorylation of 1-β-D-arabinofuranosylcytosine 3', 5'-diphosphate (1) with nuclease-3'-nucleotidase P1 at 60° for 24 hr gave 1-β-D-arabinofuranosylcytosine 5'-phosphate (Ara CMP) (2) in good yield. The acylation of both N4- and the 2', 3'-hydroxyl groups of 2 followed by coupling with various alcohols and phenols in the presence of 2, 4, 6-triisopropylbenzenesulfonyl chloride and subsequent alkaline hydrolysis afforded the title compounds (4). The resulting 32 kinds of Ara CMP alkyl or aryl esters were examined to determine their biological activities, such as antiviral activity against herpes simplex type 1 in cultured human embryonic lung fibroblast cells, growth inhibitory activity against mouse leukemic L5178Y cells in culture and antileukemic activity against L-1210 in mice. Ara CMP esters were active in these assay systems.
著者
吉田 光二 星 昭夫 / 実吉 峯郎 MINEO SANEYOSHI
出版者
The Pharmaceutical Society of Japan
雑誌
Chemical and Pharmaceutical Bulletin (ISSN:00092363)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.1018-1023, 1982-03-25 (Released:2008-03-31)
参考文献数
23
被引用文献数
4 6

The mode of antiproliferative action of two 5-fluorocytosine nucleosides, 5-fluoro-cytidine (FCR) and 5-fluoro-2'-deoxycytidine (FCdR), was examined using mouse leukemia L5178Y cells in vitro. FCR and FCdR were markedly active against L5178Y cells, though the cells were deficient in cytidine deaminase activity. Both compounds increased the incorporation of 14C-labeled thymidine into the acid-insoluble fraction of L5178Y cells and decreased labeled deoxycytidine incorporation. In reversal studies, the antiproliferative effects of both compounds were almost abolished by simultaneous addition of thymidine or deoxyuridine. Deoxycytidine completely reversed the growth inhibition caused by FCdR, but not that caused by FCR. These results demonstrate that the cytotoxicity of both compounds is due to inhibition of thymidylate synthetase, presumably through formation of 5-fluoro-2'-deoxyuridine monophosphate (FdUMP) after deamination by deoxycytidylate deaminase in the pyrimidine de novo pathway.
著者
山口 十四文 平井 俊朗 実吉 峯郎
出版者
帝京科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

強力かつ選択的なヌクレオシド・ヌクレオチド系テロメラーゼ阻害剤を獲得するための分子設計を行った。テロメラーゼは制がん剤の研究開発を行う際の恰好な標的酵素と考えられる。また、良い阻害剤はテロメラーゼの構造や機能を研究するための試薬として有用であると考えられる。まず、いくつかの糖部変換ヌクレオチドアナログのテロメラーゼに対する阻害効果を塩基部がチミンとグアニンの場合を比較しながら調べた。その中で、3'-アジド-2',3'-ジデオキシグアノシン(AZddG)5'-トリりん酸(AZddGTP)とカーボサイクリックオキセタノシンGトリりん酸(c-oxtGTP)などのいくつかのグアニンヌクレオチドアナログがチミンのものに比べて強い阻害効果を示した。特にAZddGTPが強い阻害を示し、阻害機構はdGTPに関する拮抗阻害とプライマー3'末端に取り込まれるための鎖伸長停止と考えられる。AZddGTPは、脊椎動物DNAポリメラーゼαおよびδに対する阻害は弱かったことから、テロメラーゼ選択的阻害剤といえる。次に、ヒトHL60培養細胞を用いて、数十日の長期間にわたるAZddG処理がテロメアDNA長および細胞増殖速度にどのような影響を及ぼすかを調べた。AZddGは再現性良くテロメアの短小化を引き起こした。また、細胞増殖への影響はそれほど顕著ではなかったが、わずかな増殖速度の低下が認められた。DNAポリメラーゼα阻害を作用機構とするアラビノルラノシルシトシン(araC)がAZddGの効果を増強するかどうか調べたが、特に観察されなかった。現在、既存の制がん剤の効果をAZddGが増強するかどうかを検討中である。
著者
実吉 峯郎 山口 十四文
出版者
帝京科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

生殖細胞およびトランスホームした細胞に活性が高く、複製に際してその末端部分を合成するテロメラーゼに着目し、その阻害剤の分子設計を行った。酵素としては、逆転写活性を有することでウイルス由来のそれとの比較は重要であり、生物寿命との関連、がんとの関連で注目されているにもかかわらず、酵素学的解析はほとんど行われていない。そこで、Stretch PCR法の条件を詳しく検討した結果、ヌクレオシドと関連する阻害剤候補物質のLineweaver-Burkプロットなどを用いた反応速度論的解析が可能となった。我々の研究室ですでに保有するL-dGTPおよびL-dTTPの阻害能をこの系で評価したところ、HIV逆転写酵素と比較してエナンチオ選択性が高いことが明らかとなった。我々が合成したdUTP類似体についてその5位に疎水性スチリル基を導入すると親和性が高まり、一方、HIV逆転写酵素を強く阻害することで有名なHEPT誘導体はテロメラーゼを全く阻害しないことも明らかとなった。以上の知見に基づいて、塩基部では、かさ高さ、疎水性、親水性、電気陰性度などを指標とした置換メチル基を有するアラUTP誘導体、糖部では、既に有効なアラビノース、ジデオキシリボースとの比較において従来全く試みられていないリキソースヌクレオシド誘導体を設計、合成した。今回ヒトHeLa細胞テロメラーゼを用いて検討したが、さらなる素材としてサクラマス精巣に高いテロメラーゼ活性を有することを見出したのでこれは今後の蛋白質化学的解析に発展することが期待される。
著者
実吉 峯郎 川口 健夫 山口 十四文
出版者
帝京科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

本研究では、まず、ヌクレオチドの酸素をメチレンに置き換え、りん酸エステルをメチレンホスホン酸にすることから始まる。そのため、既知の方法に従って、トリエチル亜りん酸をパラアルデヒドと反応させて得たヒドロキシメチルトリエチル亜りん酸としたのち、トシル化して鍵中間体とした。一方、L-アラビノースより出発して調製した、L-チミジンの直接的ホスホン酸化を色々な条件で試みたが、副生成物が多く実用的でないことが判明した。ついで、メチル-L-2-デオキシリボフラノシドと当該試薬を、水素化ナトリウム存在下反応させ、副生するジ置換体を分離後、3′-水酸基を塩化パラトルオイル処理により保護した。メチルジトルオイルデオキシリボシドのアノメリック位はエーテル溶媒中の塩酸ガスによるクロル化により、α体が選択的に析出してあとの反応に都合がよいが、今回の反応では、α体とβ体が混合物として得られた。そこで、トリメチルシリルチミンを用いていわゆる、Max-Hoffer反応を行ったあと、生じたαとβの異性体をシリカゲルカラムクロマトにより分離した。αとβの生成比は1:3であった。N_4-アセチルシトシンのシリル体でも同様な反応が進行したが、プリン系では、この縮合条件では、多くの異性体を生じ、相互に分離して目的物を得るにはいたらなかった。一方、1,2-イソプロピリデン-3-O-トシル-α-D-キシロフラノースをホスホネート化したあと、加酢酸分解に付し、トリメチルシリルチミンと縮合し、脱保護すると、エポキシド中間体を経て、アラTの5′-メチレンホスホネートに到達した。両者の燐部分の脱保護を行い目的物を得た。この方法を適用して、塩基部位のバリエーションを合成するとともに、すでに合成出来た化合物については、現在、単純ヘルペス1型、2型、サイトメガロウイルスに対する抗ウイルス活性を検定中である。
著者
実吉 峯郎 川口 健夫 山口 十四文
出版者
西東京科学大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

申請時に提出した研究計画に基づき、まず、アラビノフラノシルシトシン-5′-モノりん酸(アラCMP)を出発材料とし、N4,2′,3′位の水酸基を無水プロピオン酸を用いてアシル保護した後、ピリジン中、塩化トリイソプロピルベンゼンスルフォニルと、対応するアルコール又は、フェノールと反応させ、脱保護、ダウエックス1(ぎ酸型)カラムクロマトグラフィーで精製し、a)フェニル、b)オルトクロロフェニル、c)パラノニルフェニル、d)フェノキシエチル、e)フェニルプロピルの各エステルを合成した。まず、3′→5′エキソヌクレアーゼ(ホスホジエステラーゼ)による酵素的水解に対する挙動を吟味したところ、いずれも、短鎖直鎖アルキルエステル(メチル、エチル、プロピル)と比較して、相対的に、水解速度は速く、その順番は、abcedであった。従って、芳香環に直結した水酸基を有するエステルが、この酵素にたいする親和性が高いと思われる。耐性細胞では、細胞膜の透過性が低下し、かつ、第1次りん酸化過程(salvage酵素)が欠落している可能性が示唆されているので、第一に細胞膜の透過を良くし、内部でエキソヌクレアーゼによってエステルの水解による、アラCMPの放出が行われることが望ましい。ついで、アラC感受性および耐性の培養ヒト癌細胞であるKB細胞を用いて上記化合物の検定を行ったところ、化合物cのみが、耐性株に対して増殖阻害を示した。cはアルキルフェノールエステルであり、側鎖ノニルグループによって、透過性とエステル酵素分解のかねあいがうまくいき、他の化合物にない挙動を示したと思われる。今後は、同様にアラC耐性に白血病細胞を用いて検定を行う予定である。膜透過性すなわち、細胞外からの取り込みには膜のトランスポートが関与しているので、その補助薬を開発することも耐性克服には有用であり、フェネチルデオキシウリジンとFUdRの系をモデルとしてその有効性を明らかとした。(発表論文)。さらに、りん酸エステルの類似体としてのホスホネートヌクレオシドについても一般的な合成法を確立しつつある。
著者
永井 美之 実吉 峯郎 吉田 松年 斉藤 英彦
出版者
名古屋大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1989

HIVに対する抗ウイルス剤開発にあたっての標的のひとつはちウイルスゲノムの逆転写の過程である。これまでに用いられたアジドチミジン(AZT)、ジデオキシシジン(DDC)には、相当な選択性が認められるものの、骨髄抑制などの副作用が重大問題となっている。骨髄抑制は、株化リンパ球とそこでのウイルス増殖の抑制から得られたin vitro治療指数からは予知できなかった。本研究では血液幹細胞のin vitro分化増殖系に対する薬剤の毒性が生体レべルでの骨髄毒性を反映するか否かを調べることを主要目的とした。ボランティアから得た骨髄細胞からエリスロポエチンと顆粒球コロニー刺戟因子により赤芽球系コロニー(CFUーE)及び顆粒球系コロニー(CFUーG)を形成させる過程に各種薬剤を加え、発育抑制の程度を算定すること、血小板系については株化された巨核芽球(MEGー01)の分裂増殖ならびにフォルボールエステルによる巨核球へ分化の際の薬剤の影響を調べた。その結果、AZTは臨床使用時の血中濃度に相当する濃度又はそれ以上で、CFUーEとCFUーGを共に抑制したが血小板系への毒性はみられなかった。一方DDCはCFUーEやCFUーGは抑制せずMEGー01細胞の分裂増殖を抑制した。巨核球への分化はDDCでも抑制されなかった。以上の結果は、AZTが貧血や顆粒球減少を招きやすく、DDCは血小板減少を招きやすいという実際の副作用とよく一致した。したがって、本システムは、抗エイズヌクレオシドアナログの骨髄毒性評価に有用であると考えられた。本システムにより新設計と既知のヌクレオシドアナログの毒性も検討したが、結果として、AZT又はDDCより優れた薬剤は見出せなかった。尚本研究の過程で、ヌードマウス、SCIDマウスを含む調べたすべての系統のマウス血清中に抗HIVー1活性の存在することを見出した。現在阻止物質の単離精製を進めている。