- 著者
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平嶋 健太郎
中村 和矢
- 出版者
- 日本魚學振興會
- 雑誌
- 魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
- 巻号頁・発行日
- vol.61, no.2, pp.53-57, 2014
シマヒレヨシノボリRhinogobius sp. BFは,鈴木ほか(2010)によって近年認められたヨシノボリ属魚類である。しかし,これまで他のヨシノボリ類と混同されていたこと(明仁ほか,2013)や認識されて間もないことから基礎的な資料は少ない。本種の分布域は,瀬戸内海東岸を中心とした地域である。これは,シマヨシノボリR. nagouaeやカワヨシノボリR. flumineusなど同属のヨシノボリ類の分布域と比較して狭く(明仁ほか,2013),また,その生息環境は平野部の野池や河川下流域,わんどなどであり(鈴木・向井,2010; 平嶋,2011),人為による環境改変の影響を受けやすいと考えられる。加えて,環境省レッドリストで準絶滅危惧(環境省,2013),和歌山県版レッドデータブックで学術重要(中谷ほか,2012),愛媛県版レッドデータブックで地域個体群に指定(高橋,2003)されていることから,本種の生息地の保全が望まれる。その一方で,本種が他地域へもち込まれた場合に他種との交雑(向井ほか,2012)や競合など大きな撹乱の元となることが危惧される(鈴木ほか,2010; 鈴木・向井,2010)。また,本種個体群の分散や交流に大きく影響する仔稚魚期の生活史に関して,Tsunagawa et al. (2010)は耳石のSr/Ca比により本種が河川陸封性であることを明らかにしているが,仔稚魚が実際に沿岸や海域で生残可能かどうかは明らかでない。