著者
鈴木 猛 平社 俊之助 佐藤 金作
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.78-79, 1959
被引用文献数
1

ゴキブリの駆除の一方法として, 比較的高濃度の薬剤を, その潜伏場所のまわりに帯状に処理し, ゴキブリの通路を囲む事により効果を期待するやり方がある.この方法は数cmの狭い幅に薬剤を処理するので, これにゴキブリが接触する時間は, 普通数秒間であり, 特別の事情のない限り長くても1日に10分間以上触れているとは考えられない.5%ダイアジノンを用いた室内的な実験(白井, 平社, 鈴木, 1959)では, 雌の場合10分以上の接触が100%の死亡に必要であることから, はたして実際において, この様な方法で完全な効果が期待出来るかどうか疑問になる.しかし実際には我々の目にとまる所にゴキブリの潜伏場所があれば, こゝに薬剤を処理するであろう.そして, この場所のゴキブリは当然死亡ないしは逃亡する.だが, ゴキブリの様な我々の見付けにくい所に往々ひそんでいる昆虫に対し, すべての潜伏場に薬剤を残留塗布の形で処理することは不可能に近い.そして実際的には往々にして一部の潜伏場所に直接薬剤を噴霧した場合の駆除効果をみるため, 過大に評価し勝である.この様な考え方から, 著者等は出来得る限り, その潜伏場をみつけ, しかも, こゝに全く薬剤を処理することなく, そのまわりに5%ダイアジノン乳剤をはけを用いて幅約5cm位の帯状に残留塗布を行いその効果を観察した.
著者
鈴木 猛 椎名 実 土屋 芳春 安富 和男 喜島 功 平社 俊之助
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.10, no.4, pp.268-275, 1959

1.千葉八日市場市の農村部落において, 1959年6月1日より7月28日に至る間に, 各種malathion製剤を用いてハエ成虫・幼虫及び蚊幼虫駆除の実地試験を行つた.2.20%malathion乳剤40倍稀釈液か, 0.7%malathion油剤を, 家屋内の天井全面に1m^2あたり27〜42cc撒布することにより, 屋内のハエの棲息密度が著しく減少し, この効果は7〜10日間持続する.なお, ハエの棲息密度判定法として, 屋内に設置したハエとりリボン及びハエとりビンの捕集数は, 高い相関関係にあることを知つた.3.便池のハエ幼虫に対しては, 20%malathionの200倍液を表面積1m^2あたり2l, あるいは1.5%malathion粉剤を1m^2あたり100g撒布することにより, 1日後にほとんどすべての幼虫が死滅したが, 7日後にはかなりの幼虫数の回復が認められた.4.実験的に積んだ堆肥にmalathion製剤を撒布した結果, 20%乳剤200倍液の2l/m^2撒布ではハエの発生防止効果がほとんど認められないにもかゝわらず, 1, 000倍稀釈液の10l/m^2撒布では顕著な効果があることを知つた.また, 1.5%粉剤の100g/m^2撒布では, 対照に比較して, 58.9%のハエを発生させる効果にとどまつた.5.滞水域のアカイエカ幼虫に対して, 20%malathion乳剤を100倍にうすめ, 表面積1m^2あたり100cc撒布すれば, 幼虫は全く死滅し, その後7〜10日はほとんど再発生を認めなかつた.しかしこの量の撒布では, サナギに対する効果はほとんどなかつた.
著者
白坂 昭子 宮本 詢子 水谷 澄 和田 芳武 田中 生男 宮崎 光男 今中 健一 平社 俊之助
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.210-212, 1971
被引用文献数
2 1

東京都町田市本町田公団住宅においてコナダニ類の防除実験を行なつた.防除方法は殺虫剤浸漬防虫紙を畳床下表面および上面化粧ばえ下に計2枚全面に縫込んだものを用いたものである.実験期間は1970年5月11日に畳床に防虫紙を縫込み, 6月13日住宅に敷込み以後約1カ月間コナダニの発生状況を観察した.この結果, 実験終了時(防虫紙処理2カ月後)の無処理畳のコナダニ数と比較した防除率は0.37% dieldrin (100ml/m^2)処理紙では95〜100%, 0.5% fenthion処理紙は99〜100%, 1.0% fenitrothion処理紙はほぼ100%であり極めて高い効果が示された.またマイクロ波による誘電加熱処理を行なつた畳では95〜99%の防除率であつた.
著者
鈴木 猛 緒方 一喜 平社 俊之助 長田 泰博
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.10, no.4, pp.258-267, 1959

1.1959年5月8日より6月9日に至る間, 長崎県西彼杵郡高島町の端島において, ゴキブリの棲息状況の調査, 及び殺虫剤による駆除実験を試みた.2.採集数1232匹中, 3匹のクロゴキブリPeriplaneta fuliginosa Servilleを除いて, 他はすべてワモンゴキブリPeriplaneta americana L.であり, 1958年の予備調査の結果とあわせ, 端島のゴキブリの優占種はワモンゴキブリであり, しかもきわめて高い比率を占めることを認めた.3.実験地のアパートからトラツプによつて採集されたワモンゴキブリは, ♀より♂の方がはるかに多い.一方, ほぼ同時間に採炭坑内から採集されたワモンゴキブリは, ♀の方が♂より多いことを知つた.4.ワモンゴキブリは実験地のアパートに確率的に分布するのではなく, ある特定の家に集中する.そして, 各戸面接調査によつて得た環境条件と, トラップで捕獲したゴキブリ数の相関をしらべた結果, カマドの使用頻度が高く, カマドの下にたきぎや紙などがつまつており, また屋内全体の湿気が高い家ほどゴキブリの棲息密度が高いことを知つた.5. diazinon 5%乳剤(塗布及び撒布, 各原液及び5倍), lindane 10%乳剤(各2倍及び10倍), dieldrin 4% lindane 6%乳剤(各2倍及び10倍), BHC50%水和剤(各10倍及び50倍)をカツコ内の濃度に稀釈し, 塗布実験区では, 1戸150ccの割でカマドや流しの周辺, 台所のすみ, 押入の入口などに刷毛を用いて巾5〜7cmに塗布した.撒布実験区では, 台所や押入入口附近のゴキブリの潜伏場所やその周辺に対し, 1戸あたり約800ccを全自動式噴霧器によつて撒布した.6.薬剤の効果を正しく把握するため, トラップあるいは視察によつて得たデータに対し, 次の補正によつて相対棲息密度指数RPIを算出した.RPI=T_<ai>/E_i×100=C_b/C_<ai>×T_<ai>/T_b×100ここで, T_<ai>, T_bはそれぞれ薬剤処理区の処理以前の1日平均捕集数, C_b, C_<ai>は同じく対照区の平均捕集数であり, またE_iは, 薬剤処理を全く行わないと仮定した場合の処理区のi日後の期待捕集数で, 次によつて得られる.E_i=T_b×C_<ai>/C_b 7.同種の薬剤で, 塗布の効果は一般に撒布の効果に劣る.トラップの捕集数から判定すると, lindane撒布, lindane・dieldrin混合剤撒布がもつとも有効であるが, 1ヵ月後にはほぼもとの相対密度まで回復する.diazinon撒布及び塗布, 混合剤塗布がこれにつゞき, lindane塗布は効果がそれほど大きくない.BHCの撒布と塗布は, 効果がほとんど認められなかつた.8.視察及び死亡虫数から効果を判定すると, おゝむねトラップによる方法と結果が一致するが, ただBHC撒布の効果が著しく高くあらわれた.9.薬剤処理後のワモンゴキブリの性比及び幼虫比を, 処理前及び対照区のそれと比較検討した結果, 処理区では, 全成虫中に占める♂の比率及び全ゴキブリ中の幼虫の比率がともに減少する傾向にあることを知り, これを♀に対する♂の, また成虫に対する幼虫の, 薬剤に対する高い感受性によるものと推定した.結果において, 薬剤処理区では, ♀の比率が高まることを知つた.10.アパートの各戸内に床面積1m^2あたり9.2cc(約300cc/33m^2)のDDVP0.3%油剤を煙霧機によつてふきこんだが, ワモンゴキブリに対して, ほとんど効果が認められなかつた.11.端島で1959年6月以降行われたゴキブリ全島駆除の概況を附記した.