著者
永岡 麻貴 大島 郁葉 平野 好幸 中川 彰子
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

強迫症の治療には,暴露反応妨害法を含む認知行動療法が有効である。しかし,認知機能の低下や自閉スペクトラム症の併存や、それに伴う実行機能の低下が、認知行動療法の治療効果に影響を与えている可能性がある。強迫症の治療効果に影響を与える要因を調査した結果、実行機能の機能の一部である作業記憶と、自閉スペクトラム症の特性を示すコミュニケーション能力の低下が、強迫症の認知行動療法に対する効果を低下させる可能性が示され、自閉スペクトラム症を併存する強迫症の実行機能に着目した心理プログラムを開発の助けとなる知見を得た。
著者
鎌下 莉緒 平野 好幸
出版者
大阪大学大学院 大阪大学・金沢大学・浜松医科大学・千葉大学・福井大学連合小児発達学研究科
雑誌
子どものこころと脳の発達 (ISSN:21851417)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.38-44, 2022 (Released:2022-10-15)
参考文献数
19

摂食障害では痩せ願望や体重体型への過度なこだわり,ボディイメージの障害といった症状が見られ,「神経性やせ症(Anorexia nervosa: AN)」と「神経性過食症(Bulimia nervosa: BN)」,「過食性障害(Binge-eating disorder: BED)という三つの病型に大別される.有意な低体重が見られるANでは大脳全体の皮質厚および海馬・視床をはじめとした様々な領域の皮質体積が減少することが判明している.また,過食が見られるBNでは報酬系異常により腹側線条体や海馬で健常者とは異なる活性パターンを示すことが脳イメージング研究で明らかにされている.これまで思春期での発症が主とされていた摂食障害だが,近年,思春期以前の低年齢児童における発症が報告されており,摂食障害は「こどもの問題」と捉えられる.死亡率が約5%と高いことやコロナ禍において患者数が急増したと報告されていることから,摂食障害研究は喫緊の課題であると言える.本稿では,摂食障害の病態解明のための脳形態や脳機能画像研究を紹介する.
著者
松本 一記 濱谷 沙世 浦尾 悠子 平野 好幸 吉永 尚紀
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

在宅での自助での認知行動療法の実用可能性については、パニック症、社交不安症、強迫症の当事者9名に開発したE-learningシステムを利用してもらうことで、安全に実施可能で、介入後には主要症状に改善が見られたことから、これらの疾患に対するE-learningシステムの実用可能性が実証された。その他にも、社交不安症の認知行動療法スマートフォン版アプリケーションの開発に成功し、強迫症のE-learningシステムの有効性を評価するための臨床試験を2020年1月から2021年6月末まで実施している。試験結果の結果については、2021年秋頃にまとめて学術誌に投稿する予定です。