著者
中谷 江利子 加藤 奈子 中川 彰子
出版者
日本不安症学会
雑誌
不安症研究 (ISSN:21887578)
巻号頁・発行日
vol.7, no.Special_issue, pp.2-41, 2016-05-31 (Released:2016-06-02)
参考文献数
4
被引用文献数
2

本マニュアルおよび付録資料は,厚生労働省科学研究費補助金障害者対策総合研究事業「精神療法の有効性の確立と普及に関する研究(代表:大野裕)」(平成22~24年度)および「認知行動療法等の精神療法の科学的エビデンスに基づいた標準治療の開発と普及に関する研究(代表:大野裕)」(平成25~27年度)の助成を受けて作成されました。なお,執筆は肥前精神医療センター(現:筑後吉井こころホスピタル)の飯倉康郎の助言を受け,中谷江利子(九州大学),加藤奈子,中川彰子(千葉大学)を中心に,九州大学行動療法研究室のメンバーにより行われました。
著者
石川 亮太郎 小堀 修 中川 彰子 清水 栄司
出版者
日本不安障害学会
雑誌
不安障害研究 (ISSN:18835619)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.54-60, 2013-08-31 (Released:2014-01-31)
参考文献数
16

曝露反応妨害法を用いた認知行動療法は,強迫性障害に対して有効な治療法とされている。一方,行動実験(Behavioural Experiments)とは,対象者の不合理な信念の妥当性を実験的手法によって検証する技法であり,強迫性障害に対して有効であると指摘されている。われわれは,複数の加害恐怖に関する症状を持つ,強迫性障害の1症例に対して曝露反応妨害法と行動実験を用いた,全12セッションからなる認知行動療法を行った。その結果,強迫性障害の症状得点(Obsessive Compulsive Inventory)はセッションを経るごとに減少し,本症例に対する認知行動療法の有効性が示唆された。特に行動実験は,脅威的状況に曝露することなく,強迫性障害を維持させる信念を変容させるのに有効であったと考察された。
著者
宮崎 哲治 中川 彰子 青木 省三
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.57-66, 2014-01-31 (Released:2019-04-06)

妊娠中の強迫性障害に対し、薬物療法は行わず曝露反応妨害法を中心とする行動療法のみで奏効した患者を経験したので、若干の考察を加え報告する。患者は28歳女性。結婚後、トイレを汚したのではないか、自分が歩いた所は汚れてしまったのではないかという強迫観念が生じ、夫や実母に何度も汚くないとの保証を要求するようになった。妊娠後さらに強迫症状は悪化した。妊娠28週でA精神科診療所を初診したが、トイレに行った際には、除菌シートで足やトイレの床を拭き、トイレでの行動を克明にメモし、携帯電話のカメラで自分の行動などを撮影し確認していた。また、汚れやばい菌をまき散らしてしまうという強迫観念のため料理などの家事もできない状態であった。曝露反応妨害法を中心とする行動療法を開始したところ、強迫症状は徐々に改善していった。出産後は家事も育児も本人が行えるようになり、約半年後の受診時にも強迫症状は認めなかった。
著者
中谷 江利子 中川 彰子 磯村 香代子 大隈 紘子
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.29-41, 2004-03-31 (Released:2019-04-06)

Prader-Willi症候群(PWS)は、筋緊張低下、肥満、性腺発育不全、精神遅滞を主徴候とする先天性疾患である。肥満とその合併症が生命予後にかかわることから、肥満対策が不可欠とされている。今回筆者らは、身体合併症(心不全、糖尿病、睡眠時無呼吸)があり、生命維持のために減量が必要であったが、食行動異常のほか、こだわり、かんしゃく、放火、俳徊などの多くの問題行動のため、小児科での治療が困難であった13歳男子のPWSの入院治療を行った。入院後も激しい問題行動と、体重測定さえできないほど肥満治療に対しての抵抗が強く、入院生活の継続も懸念された状態であったが、刺激を統制し、オペラント強化法を用いるための治療上の工夫を行ったことにより、患者が積極的に楽しく肥満治療に取り組みながら16kgの減量に成功し、身体合併症の著明な改善がみられた。この治療成果は本症例の生涯にわたる肥満治療において重要な役割を果たすと考えられた。
著者
永岡 麻貴 大島 郁葉 平野 好幸 中川 彰子
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

強迫症の治療には,暴露反応妨害法を含む認知行動療法が有効である。しかし,認知機能の低下や自閉スペクトラム症の併存や、それに伴う実行機能の低下が、認知行動療法の治療効果に影響を与えている可能性がある。強迫症の治療効果に影響を与える要因を調査した結果、実行機能の機能の一部である作業記憶と、自閉スペクトラム症の特性を示すコミュニケーション能力の低下が、強迫症の認知行動療法に対する効果を低下させる可能性が示され、自閉スペクトラム症を併存する強迫症の実行機能に着目した心理プログラムを開発の助けとなる知見を得た。
著者
宮崎 哲治 中川 彰子 青木 省三
出版者
一般社団法人日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.57-66, 2014-01-31

妊娠中の強迫性障害に対し、薬物療法は行わず曝露反応妨害法を中心とする行動療法のみで奏効した患者を経験したので、若干の考察を加え報告する。患者は28歳女性。結婚後、トイレを汚したのではないか、自分が歩いた所は汚れてしまったのではないかという強迫観念が生じ、夫や実母に何度も汚くないとの保証を要求するようになった。妊娠後さらに強迫症状は悪化した。妊娠28週でA精神科診療所を初診したが、トイレに行った際には、除菌シートで足やトイレの床を拭き、トイレでの行動を克明にメモし、携帯電話のカメラで自分の行動などを撮影し確認していた。また、汚れやばい菌をまき散らしてしまうという強迫観念のため料理などの家事もできない状態であった。曝露反応妨害法を中心とする行動療法を開始したところ、強迫症状は徐々に改善していった。出産後は家事も育児も本人が行えるようになり、約半年後の受診時にも強迫症状は認めなかった。