著者
年縄 巧 高浜 勉 中山 将史
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.1_26-1_36, 2020 (Released:2020-01-31)
参考文献数
11
被引用文献数
1 1

2014年に不同沈下被害が発生した箇所と1923年関東地震の際に木造家屋の全壊率が80%以上であった河内集落を含む横浜市都筑区池辺町地域において高密度の常時微動測定を行い,軟弱地盤の厚さの分布と地盤震動増幅率を推定し被害との関連性を調べた.ボーリング調査地点近傍で得られた微動H/Vスペクトル比のピーク周期(Tp)とN値50深さ(D)を比較し,TpからDを推定する式を求めた.この式を用いてこの地域のDの分布を推定すると,低地部のほとんどはD=10-15 mであるが,台地際低地北端部のDは15 mを超え,局部的にはDが20 mを超す領域が存在し,2014年の不同沈下発生地点は表層地盤の厚さが大きく変化する領域に位置していることがわかった.また,微動H/Vスペクトル比のピーク値(Ap)から強震スペクトル比(As)を推定し,その面的分布と集落毎の中央値を求めた.1923年関東地震の際の木造家屋全壊率がそれぞれ80%以上,30-50%の河内・川向集落はAsの中央値が5以上,全壊率が10%未満の藪根集落はAsの中央値が3以下であり軟弱地盤の地盤震動増幅が被害を大きくした可能性を示している.しかしながら,河内集落の木造家屋全壊率が特に大きかった理由については地盤震動増幅だけから説明することはできなかった.
著者
年縄 巧 浜岡 秀勝
出版者
明星大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

交通量や走行速度,車種を簡便に測定するために,高感度の地震計を利用した計測システムの開発を試みた.道路脇2ヶ所に地震計を設置し,車両が通過する際に生じる地盤振動を計測した.また,ビデオ撮影によって車両の通過の有無や車種を記録した.いくつかの予備調査の結果,車両が時速20km程度以上で通過する場合には,地盤の上下動の応答変位波形に特徴的な波形が生じることがわかり,これにより車両が検知できること,またこの波を5〜15m程度離した2点において計測することにより車両の通行速度を計測することが可能であることがわかった.また,速度が増加するにつれ応答波形のパルス幅が短くなり,両者の値には高い相関があることから,一点で得られた尾応答波形のみからでも,走行速度が推定できることがわかった.車両が時速10km程度以下の低速の場合には,地盤の応答変位波形に特徴的な波形は見られないが,車線に高さ1cm程度のゴム製の段差を設置し,応答速度を計測した場合,車両が段差上を通過する際に顕著な速度応答が生じることがわかり,これによって車両の通過が検知できることがわかった.また,片側1車線の一般道路において,モデル道路と同様の計測を行い,車種の違いによる地盤振動の変化を検討した.小型車量通過による地盤振動と異なり,大型車両通過による地盤振動は複数のパルスから構成されており,地盤振動の形状の違いによって車種の判別が可能であることがわかった.この手法は,片側2車線道路の計測には不向きであることなどの欠点は残すものの,測定機器の運搬・設置が容易であるため,十分実用的な手法であることがわかった.
著者
大町 達夫 紺野 克昭 遠藤 達哉 年縄 巧
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.1994, no.489, pp.251-260, 1994
被引用文献数
20

常時微動にレイリー波が多く含まれていることを前提に, 微動の水平動と上下動の振幅比を用いて地盤の卓越周期を推定する上で障害となっていた幾つかの問題点を理論的に解明するとともに, 常時微動と表面波との関連性を明らかにした. それに基づいて多層地盤の卓越周期の簡便な推定手順を具体的に提案した. 最後に, 東京都区内の全中学校を測定点とする常時微動を実測した結果を用いて東京都区部の周期マッピングを行い, 既往のマップと比較して提案の実用性を実証した.