著者
大町 達夫 井上 修作 水野 剣一 山田 雅人
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.1_32-1_47, 2011 (Released:2011-12-05)
参考文献数
17
被引用文献数
4 12

2008年岩手・宮城内陸地震の際,KiK-net一関西観測点では上下動の最大加速度が4G(Gは重力加速度)に近い驚異的な強震記録が得られた.この加速度時刻歴には自由地盤表面での強震記録とは思えない特徴が認められることから,強震観測点の現地調査や振動台模型実験,数値解析などによって,この驚異的な上下動加速度の成因を調べた.その結果,この強震記録には強大な地震動入力によって地震観測小屋がロッキング振動で浮き上がり,地面と再接触した際の衝撃力の影響が強く反映している可能性が高いことが見出された.またこの影響がなければ,本震時の4Gに近い上下動最大加速度は1.6G程度であることも導かれた.
著者
大町 達夫
出版者
Japan Society of Dam Engineers
雑誌
ダム工学 (ISSN:09173145)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.138-150, 2000-06-15 (Released:2010-04-30)
参考文献数
10
被引用文献数
1

1999年台湾集集地震 (マグニチュードMw7.5) では, いくつかのダムが被害を受けた。中でも石岡ダムは低角逆断層型地震断層に直撃され, 決壊に至る被害を受けた。本ダムは大甲渓の河口から約25kmに位置し, 1977年に建設された長さ357mの重力式コンクリートダムであり, 18門の洪水吐ゲートと2門の排砂ゲートを備えている。地震断層の食違いにより, ダム本体の右岸側には約7.5mの段差が生じたほか, 左岸にある取水トンネルも約3.5mの段差によって破壊した。日月潭の水社ダムと頭社ダムは, それぞれ30.3m, 19mの高さで, ともにコンクリート中央遮水壁をもつアースダムである。これらのダムにはダム軸方向に数本の亀裂がはいったが大被害には至らなかった。鯉魚潭ダムは高さ96mの中央土質遮水壁型ロックフィルダムであり, 地震により左岸側堤頂取り付け部に約10cmの開口が発生し, 堤体は10cm弱の沈下を示した。
著者
片岡 俊一 大町 達夫
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 = Proceedings of JSCE (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.675, pp.63-71, 2001-04-15
被引用文献数
1 1

本論文では, 盆地内のやや長周期地震動を簡便に推定する手法を提案する. ここで提案する手法は, 盆地内のやや長周期地震動は震源から到来する地震動と, 盆地境界部で生成される盆地生成表面波とで構成されるとし, 前者の地震動は平行成層モデルで求め, 後者は盆地境界におけるエネルギー流量の保存則を用いて推定するものである. 本論では, まず推定手法の説明を行い, 次に単純な形状をした盆地モデルに提案手法を適用し, 三次元境界要素法の計算結果と比較することで手法の妥当性を示す. さらに, 兵庫県南部地震を対象に, 関西地震観測研究協議会の福島観測点および尼崎観測点における地震動を推定し, 観測記録と比較することで, 提案手法が実地震にも適用可能であることを示す.
著者
岩口 陽子 大町 達夫 翠川 三郎 梶 秀樹 藤岡 正樹
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会梗概集
巻号頁・発行日
no.23, pp.94-97, 2008-11

As the imminence of a large-scale earthquake is said to be rising, an increasing number of organizations is starting to produce their own business continuity plans (BCPs) in both public and private sectors. This paper is to review the status quo of the measures universities generally take against earthquakes and examine how their BCPs could develop and should be.
著者
大町 達夫
出版者
東京都立大学都市研究センター
雑誌
総合都市研究 (ISSN:03863506)
巻号頁・発行日
no.47, pp.p77-89, 1992-12

本研究は、東京の学校地震防災体制について、その現状を調査し改善の手がかりを見つけようとしたものである。現状分析には、1988年から1990年にかけて実施した3つのアンケート調査を用いた。これらは先ず、被害経験、災害危険度、防災活動度などに違いのある1都10県の298校から得た防災体制に関する回答、次は東京都23区のうち17区役所から得た防災指導に関する回答、最後は東京都23区内の全小中学校のうち686校から得た最近の地震被害に関する回答である。これらの調査によれば、東京の学校防災体制は全国平均よりも高いレベルにある。特に公立小・中学校では区からの指導もあって防災訓練に力点を置き、毎月1回以上実施している学校も少なくない。一方、危険防止対策は全国平均よりも低いレベルで、実際、震度4程度の地震でも大田区や世田谷区では10%以上の学校で被害が発生している。また、避難地に指定されている学校は約40%もあり、避難住民の安全確保を学校に期待している自治体職員は多い。しかし、避難地に指定されている学校と指定されていない学校とで、防災体制の現状に違いは見られない。要するに、東京の学校では、学内の危険防止対策にもっと積極的に取り組む必要がある。
著者
白井 克弘 大町 達夫
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
構造工学論文集 A (ISSN:1881820X)
巻号頁・発行日
vol.53A, pp.306-312, 2007 (Released:2007-08-01)

The objective of this paper is how to control waveforms by means of all pass functions. Causal time functions such as earthquake records are factorized into minimum phase shift (MPS) and all pass (AP) functions, which is called factorization. This concept is applied to impulse response of SDOF to investigate effects of AP phases when they are parametrically changed. With linear AP phase shifts, waveforms of the response are unchanged but the time delays appear. With nonlinear AP phase shifts, waveforms of the response show irregular attenuation, and their maximum amplitudes are smaller than the original ones.
著者
大町 達夫 紺野 克昭 遠藤 達哉 年縄 巧
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.1994, no.489, pp.251-260, 1994
被引用文献数
20

常時微動にレイリー波が多く含まれていることを前提に, 微動の水平動と上下動の振幅比を用いて地盤の卓越周期を推定する上で障害となっていた幾つかの問題点を理論的に解明するとともに, 常時微動と表面波との関連性を明らかにした. それに基づいて多層地盤の卓越周期の簡便な推定手順を具体的に提案した. 最後に, 東京都区内の全中学校を測定点とする常時微動を実測した結果を用いて東京都区部の周期マッピングを行い, 既往のマップと比較して提案の実用性を実証した.
著者
片岡 俊一 片岡 正次郎 大町 達夫
出版者
日本自然災害学会
雑誌
自然災害科学 (ISSN:02866021)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.125-142, 1997-08-30
参考文献数
17
被引用文献数
4

To deepen our understanding on long period ground motion used for seismic design, the ground motion in the Osaka basin due to the 1995 Hyogo-ken Nanbu earthquake is studied. First, peak frequencies observed at Fukushima in Osaka city are discussed with the underground structure. Then, direction and velocity of wave propagation are estimated, using up-down component observed at very densely spaced stations in Osaka city. The velocities are close to the phase velocity of the fundamental mode of Rayleigh wave. Propagating direction is about N30W, indicating that the long period ground motion is predominated by the surface waves affected by 3-D topographical conditions. Using boundary element analysis, the 3-D effects on the ground motion is investigated, with a result that the long period ground motion is propagated from N40W direction with surface wave velocity.
著者
松本 浩幸 三ヶ田 均 大町 達夫 井上 修作
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
海岸工学論文集 (ISSN:09167897)
巻号頁・発行日
vol.51, pp.281-285, 2004-10-08 (Released:2010-06-04)
参考文献数
13
被引用文献数
1 1

本研究では, 津波地震の発生原因が「断層面上のゆっくりとした断層破壊」と仮定して, それに伴う「ゆっくりとした海底面変動」が津波を引き起こす過程および伝播の特性を数値計算によって検討した.ライズタイムが100s程度であれば断層破壊の影響は無視でき, 静的変位から予想される津波と同程度の津波が発生する. また, ライズタイムが500sのゆっくりとした海底面変動でも水塊移動を引き起こし津波が発生することを示した. ただし, 津波の波高が小さくなり, 周期が長くなる点は従来の予測とは大きく異なる.本研究は, ゆっくりとした断層破壊による地震津波に対しても, 沖合観測によって早期に津波を検知できることを示唆している.