著者
角田 圭子 高木 潤野 臼井 なずな 冨岡 奈津代 梶 正義 金原 洋治 広瀬 慎一
出版者
日本不安症学会
雑誌
不安症研究 (ISSN:21887578)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.47-55, 2022-11-30 (Released:2022-12-26)
参考文献数
21
被引用文献数
2

本研究の目的は,場面緘黙(SM)児の発話行動を評価する日本版SMQ(SMQ-J)を作成し,その信頼性と妥当性を検討することである。4歳から12歳のSM児の養育者139人を対象に日本語に訳されたSMQ及びCBCL/4-18を実施した。原版SMQは3因子構造であるが,探索的因子分析の結果,4因子が抽出された。「社会場面」と「家族関連場面」の他は,原版の「学校場面」因子が「教師」と「同級生」に区別された。各下位尺度の信頼性が確認された。また,本研究のSM児と冨岡(2016)の統制群101人との比較から,SMQ-Jの判別的妥当性が示された。さらに,SMQ-JとCBCL/4-18との関連から弁別的妥当性は示されたが,SMの程度と不安の高さとの関連性は明確には示されなかった。本研究の結果から,SMQ-Jの信頼性と妥当性が概ね確認され,SM児の発話行動の評定ツールとしての有用性が示唆された。
著者
竹林 由武 高垣 耕企 広瀬 慎一 大野 哲哉 小幡 昌志 川崎 友也 シールズ 久美 杉浦 義典 坂野 雄二
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.145-154, 2013-09-30 (Released:2019-04-06)

本研究の目的は、不安障害・大うつ病性障害の脆弱性と指摘されている「嫌悪的な事象に対するコントロールの知覚」を測定するAnxiety Control Questionnaire(ACQ)の日本語版を作成し、その妥当性を検討することであった。385名の大学生がACQ日本語版とそのほかの指標に回答した。探索的因子分析の結果、ACQ日本語版は「嫌悪的な刺激や状況に対するコントロールの知覚」と「不快な感情/身体感覚に対するコントロールの知覚」からなる2因子パタンであることが示された。ACQ日本語版は、高い内的整合性と再検査信頼性を示し、抑うつ・不安症状と負の相関、内的統制と正の相関があった。また、過剰な心配を統制した場合に、ACQ日本語版は不安症状との有意な負の相関を維持したが、抑うつ症状との相関は弱くなった。以上から、ACQ日本語版は、十分な信頼性と妥当性の一部をもつ尺度であることが明らかになった。
著者
広瀬 慎一
出版者
富山県立大学短期大学部
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

富山県高岡市の玄手川(延長3km)は農業用排水路で、効率的な排水処理と、小魚のトミヨや水草のナガエミクリを中心とした生態系の保全の両立を目的として、水路底の80%をコンクリートとする近自然工法で改修された。また、中流部100mには水路底を砂利舗装とした生態系保護区が設けられた。施工前後約10 年間にわたるモニタリングの結果、近自然工法については、湧水は元に戻り、堆砂は適度で、トミヨやナガエミクリなどの生態系は回復した。排水処理のための水草刈りは、やり易くなったとの農家の評価であった。生態系保護区(ワンド)については、植生は近自然工法の本川よりす早く回復し、トミヨは施工前より倍以上の密度となった。また、水路断面の詳細流速分布調査から、水草内領域における流速は、水草外領域の流速の約3割であり、トミヨが長時間遊泳できる流速(巡航速度)が水草内領域で実現されていることがわかった。以上から、近自然工法と生態系保護区(ワンド)を組み合わせたミチゲーション(影響緩和)手法」が排水処理と生態系保全の双方に効果的であることがわかった。