著者
田切 美智雄 廣井 美邦 足立 達朗
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.117, no.Supplement, pp.S1-S20, 2011-09-01 (Released:2013-02-20)
参考文献数
31
被引用文献数
3

茨城県多賀山地の日立変成古生層は,産出化石により前期石炭紀以降の地層とされてきた.しかし最近広範にSHRIMP年代が測定され,多賀山地に日本最古のカンブリア系が60 km2以上にわたって広く分布することが明らかになった.A班では,原岩構造のわかるカンブリア系のうち,枕状構造や発泡構造,急冷組織などがみられる火山岩を原岩とする赤沢層と,堆積構造を残す砂泥質堆積岩や礫岩を原岩とする西堂平層,さらに赤沢層に貫入するカンブリア紀花崗岩類を見学する.また,赤沢層を不整合で覆う石炭系大雄院層基底部の礫岩などを見学する.今後,これらの露頭は日本におけるカンブリア系の模式地となることが予想される.今回は当初の研究成果に基づくものであり,今後さらに多くの研究者によってより深く研究され,日本列島形成の初期の様子が明らかになるであろう.
著者
川崎 雅之 加藤 睦実 廣井 美邦 宮脇 律郎 横山 一己 重岡 昌子 鍵 裕之 砂川 一郎
出版者
一般社団法人日本鉱物科学会
雑誌
日本鉱物科学会年会講演要旨集 日本鉱物科学会 2012年年会
巻号頁・発行日
pp.61, 2012 (Released:2014-06-10)

奈良県天川村洞川(どろがわ)にある五代松(ごよまつ)鉱山(接触交代鉱床)から黄色に着色した水晶が産出し、レモン水晶と称されて標本市場に流通している。この水晶は高過飽和条件下での樹枝状成長とそれに続く低過飽和条件下での層成長という二つの過程を経ていること、樹枝状水晶が種子となり、多面体水晶の形成を規制していることから、トラピッチェ・クオーツと呼べるものである。
著者
廣井 美邦 小林 栄一
出版者
日本鉱物科学会
雑誌
岩鉱 (ISSN:09149783)
巻号頁・発行日
vol.91, no.6, pp.220-234, 1996 (Released:2006-11-25)
参考文献数
56
被引用文献数
4 6

Three polymorphs of Al2SiO5, andalusite, kyanite and sillimanite, occur in contact with each other, forming aggregates in a part of the Nishidohira pelitic metamorphics in the Hitachi area of the southernmost Abukuma Plateau. Textural relationships between the three polymorphs suggest that andalusite formed first probably as chiastolitic porphyroblasts, that kyanite and/or sillimanite grew subsequently at the expense of pre-existing andalusite, and that sillimanite continued to form even in the rock matrix thereafter. The andalusite-forming first stage may have been either a contact metamorphic event by unknown plutons or a regional metamorphic event of low-pressure type. The second kyanite and/or sillimanite-producing stage was induced by high-temperature loading, whereas the third sillimanite-forming stage possibly resulted from the contact metamorphism by the Nishidohira gabbroic intrusion exposed near Hase. Well-preserved growth zoning of garnet containing sillimanite inclusions in the andalusite-kyanite-sillimanite-bearing gneisses also indicates the high-temperature compression. The loading may be attributed to the overthrusting of the nearby Hitachi metamorphics onto the Nishidohira metamorphics. Such a P-T path of the Nishidohira metamorphics is similar to that of the Takanuki metamorphics in the central to southern part of the Abukuma Plateau. The widespread occurrence of texturally sector-zoned garnet in pelitic-psammitic rocks and the inferred short duration of high-temperature conditions are also in common to the Nishidohira metamorphics and the Takanuki metamorphics.
著者
廣井 美邦 本吉 洋一
出版者
日本鉱物科学会
雑誌
日本鉱物学会・学術講演会,日本岩石鉱物鉱床学会学術講演会講演要旨集 (ISSN:13486543)
巻号頁・発行日
vol.2007, 2007-09-22

東南極大陸、リュツォ・ホルム岩体のルンドヴォークスヘッタ地域は角閃岩相からグラニュライト相への累進変成作用の最高温度部に位置し、約1000℃の超高温変成作用が進行したものと考えられている。その地域から、新たに、高温型のエクロジャイト様岩が見出された。それは主としてザクロ石と単斜輝石、斜方輝石によって構成され、少量のホルンブレンド、黒雲母、斜長石、石英、ルチル、イルメナイトを伴う。ルチルのラメラを含むザクロ石は斜方輝石と斜長石のシンプレクタイトによって部分的に置換されており、高温減圧を示唆する。もっとも注目に値するのは単斜輝石の産状で、ラメラ状の斜長石を含むことがあるが、それは減圧時に単斜輝石中に固溶していたCa チェルマック成分とヒスイ輝石成分が石英と反応してできたものと考えられる。また、単斜輝石は組成的に不均質で、特にAl とNa に富むものとCa とSi に富むものとの間に、わずかではあるが明瞭な組成ギャップを示すことがある。