著者
西久保 勝己 松原 聰 宮脇 律郎 横山 一己
出版者
一般社団法人日本鉱物科学会
雑誌
日本鉱物科学会年会講演要旨集 日本鉱物科学会 2007年度年会
巻号頁・発行日
pp.205, 2007 (Released:2008-09-02)

東京都奥多摩町の白丸鉱山より、新たにベニト石Benitoiteを見出した。ベニト石は、曹長石、マースチュー石、ガノフィル石-多摩石系鉱物、方解石などと密な集合をなす。紫外線短波で明るい青白色の蛍光を発する。
著者
松原 聰 宮脇 律郎 横山 一己 清水 正明 今井 裕之
出版者
Japan Association of Mineralogical Sciences
雑誌
日本鉱物学会年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.124, 2003 (Released:2004-07-26)

東京都奥多摩町にあった白丸鉱山跡は,マンガン鉱物を含む露頭の一部が残存している.この露頭からは,過去にもいろいろな種類の鉱物,特にバリウムやストロンチウムを主成分とするケイ酸塩,炭酸塩鉱物が産出した.また,ガノフィル石のカルシウム置換体,多摩石(Matsubara et al., 2000)は前回の放流の際(1998年)に発見された.露頭は,黒色のブラウン鉱が縞状ないしパッチ状に入った全体的には赤褐色の壁で,周囲は砂岩である.通常このようなマンガン鉱体は石英に富む母岩(チャート)に伴われるが,現在見られる部分には,石英は存在しない.ケイ質放散虫もすべて曹長石化している.今回は,ブラウン鉱がパッチ状に入った部分を重点的に調査した.このような部分にも白色~淡黄褐色脈が無数に貫いている.白色脈は主に,ハイアロフェン,曹長石,方解石からできている.その他には,重晶石もふつうに見られる.やや少ないが,重土長石の場合もあり,稀にはストロンチアン石やキュムリ石の微細結晶集合も含まれる.淡黄褐色脈は,マースチュー石,多摩石,ネオトス石などからできている.やや濃い赤色の細脈や小さなパッチ状の部分はストロンチウム紅簾石である.ブラウン鉱は,ひじょうに細かい結晶の集合体で,結晶粒間には,ハイアロフェン,曹長石,マースチュー石,多摩石,ネオトス石などの極めて微細な鉱物が埋めている.薄片で観察すると,ブラウン鉱密集部の小さな空間を,屈折率が高く,多色性の明瞭な濃赤褐色の粒が満たしていることがわかる.これは,似たような色のストロンチウム紅簾石や赤鉄鉱とは明らかに異なる.薄片から一部を切り出し,ガンドルフィーカメラによってX線粉末回折値をとったところ,既知のガマガラ石(gamagarite)によく類似したパターンであることがわかった.そこで,EDSおよびWDSで化学分析をおこない,その結果からガマガラ石のFeをMnで置換したものに相当することが明らかになった.ガマガラ石は,南アフリカのGamagara Ridgeから1943年に記載されたひじょうに稀な鉱物で,理想化学組成式はBa2 (Fe3+,Mn3+)(VO4)2 (OH),単斜晶系の鉱物である.1987年にイタリアのMolinello mineから二番目の産地が発見されている.いずれもマンガン鉱床から発見されているのだが,MnよりFeの方が卓越している.白丸鉱山産のものは,実験式が(Ba1.92Na0.02Sr0.01Ca0.01)Σ1.96(Mn3+0.81Fe3+0.17Al0.01)Σ0.99[(V1.99Si0.01)O7.92](OH) 1.00(6ヶ所の平均値,水分は計算,V + Si = 2)で,明らかにMnが卓越している.格子定数は,a = 9.10(4) Å, b = 6.13(2) Å, c = 7.89(5) Å, β = 112.2(5)℃である.なお,今のところ見つかっている結晶粒は最大でも15μmであるので,単結晶解析は行っていない.このような組成のものは未知である.
著者
川崎 雅之 加藤 睦実 廣井 美邦 宮脇 律郎 横山 一己 重岡 昌子 鍵 裕之 砂川 一郎
出版者
一般社団法人日本鉱物科学会
雑誌
日本鉱物科学会年会講演要旨集 日本鉱物科学会 2012年年会
巻号頁・発行日
pp.61, 2012 (Released:2014-06-10)

奈良県天川村洞川(どろがわ)にある五代松(ごよまつ)鉱山(接触交代鉱床)から黄色に着色した水晶が産出し、レモン水晶と称されて標本市場に流通している。この水晶は高過飽和条件下での樹枝状成長とそれに続く低過飽和条件下での層成長という二つの過程を経ていること、樹枝状水晶が種子となり、多面体水晶の形成を規制していることから、トラピッチェ・クオーツと呼べるものである。
著者
草地 功 小林 祥一 武智 泰史 中牟田 義博 長瀬 敏郎 横山 一己 宮脇 律郎 重岡 昌子 松原 聰
出版者
一般社団法人日本鉱物科学会
雑誌
日本鉱物科学会年会講演要旨集 日本地質学会第118年学術大会・日本鉱物科学会2011年年会合同学術大会
巻号頁・発行日
pp.142, 2011 (Released:2012-03-28)

岡山県備中町布賀鉱山のゲーレン石・スパー石スカルンに近接した結晶質石灰岩を貫く,武田石など種々のカルシウムホウ酸塩鉱物からなる不規則な脈中の含水カルシウムホウ酸塩鉱物(草地ら,2004)について,新たな分析を行い,このたび国際鉱物学連合,新鉱物命名分類委員会より,新種「島崎石」として承認された。命名は、スカルンの鉱物学、鉱床学に多大な貢献をした島崎英彦東京大学名誉教授に因む。
著者
松原 聰 宮脇 律郎 横山 一己 重岡 昌子 原田 明 山田 隆 川島 和子 清水 孝一 宮島 浩
出版者
一般社団法人日本鉱物科学会
雑誌
日本鉱物科学会年会講演要旨集 日本鉱物科学会 2010年年会
巻号頁・発行日
pp.77, 2010 (Released:2011-04-06)

長野県茅野市向谷鉱山の熱水脈からヘドレイ鉱、ピルゼン鉱、都茂鉱、Bi3Te2のようなBi - Te系鉱物が産する。鉱脈は三波川変成岩に属する石英ー白雲母ー滑石片岩中に見られる。Bi - Te系鉱物はゲルスドルフ鉱、硫砒鉄鉱、磁硫鉄鉱、黄銅鉱を伴う。ヘドレイ鉱、ピルゼン鉱、都茂鉱は、直径2 mm以下の六角板状結晶として見られる。
著者
高橋 直樹 満岡 孝 加藤 新 横山 一己
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.111, no.7, pp.371-388, 2005-07-15
参考文献数
37
被引用文献数
1 16

房総半島中部上総層群黄和田層中に挟在する第三紀/第四紀境界指標テフラである鍵層Kd38は, 南関東地域の上総層群相当層では房総半島南部の千倉層群が唯一未確認であったが, 本研究において初めて確認することができた.千倉層群中でこれまでの微化石および古地磁気の研究により, 第三紀/第四紀境界付近に挟在することが知られている畑層中の鍵層KOを基準として4つのルートを選定し, そのうち1ルート(林道畑2号線)において, 層序, 岩相, 重鉱物組成, 斜方輝石の化学組成から, HT08Bテフラがテフラ鍵層Kd38に, HT07テフラがテフラ鍵層Kd39に対比された.林道山倉線では, テフラ鍵層Kd38は確定できなかったものの, 候補は挙げられた(YK04C).また, YK03テフラがテフラ鍵層Kd39に対比できた.また, 同様な手法で三浦半島横浜地域(磯子区氷取沢)の大船層中に新たにテフラ鍵層Kd39を見出し(YH02テフラ), テフラ鍵層Kd38(YH10テフラ)との層序関係も確認した.本研究により, 南関東のほぼ全域でテフラ鍵層Kd38が確認され, 今後の南関東地域の地質構造発達史の研究がさらに進展することが期待される.
著者
横山 一己
出版者
独立行政法人国立科学博物館
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

この研究で、日本列島の新第三紀以前の砂岩中のモナザイトがほぼすべて年代測定された。博物館に収集されている砂岩で砕屑性モナザイトの年代が決められた試料は、美濃帯、四万十帯、秩父帯、足尾帯、北部および南部北上帯、北海道東部及ぶ北部の白亜紀、舞鶴帯、超丹波帯等で約千点に達している。本年度は、沖縄の資料に含め、分析されていなかった砂岩を採集するとともに、その中のモナザイトの年代を測定した。砂岩のモナザイト年代から、供給源が主に3つに分類できることが判明した。最も一般的なものは、19億年と2億年前後のピークをもつ砂岩である。このタイプが日本列島のほとんどの砂岩を占める。代表的なものとしては、ジュラ紀の美濃帯、足尾帯、秩父帯、白亜紀の四万十帯などである。これらは付加帯を代表するものであるが、浅い海で形成された南部北上帯や手取層群などもこのタイプに属する。これ以外に、4から5億年に大きなピークをもつ砂岩、およびこれらに加え7億年や25億年前後のピークをもつ砂岩がある。前者には、北海道の浅い海の白亜紀層や舞鶴帯の砂岩がある。後者は、四万十帯の第三紀層である。砂岩の砕屑性粒子の起源は、日本海ができる前であり、すべてが大陸に起源がある。これまでに採集した大陸の砂岩との比較を行うと、19億年と2億年前後のピークをもつ砂岩は、韓半島から山東半島の南側に分布する物で、長期にわたり韓半島から供給されたものと考えられる。一方、4から5億年に大きなピークをもつ砂岩は、アムール川からの起源を示すもので、サハリンを含め北海道の白亜紀の地層は現在の分布から考えても問題ないものと思われる。舞鶴に関しては、古い時代のものであり、当時は、韓半島との別離して北方からもたらされたものと理解される。四万十帯の多くが7億年や25億年の年代を持つものがあり、これらは、揚子江との対比が可能である。
著者
宮脇 律郎 松原 聰 横山 一己
出版者
Japan Association of Mineralogical Sciences
雑誌
日本鉱物学会年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.137, 2003 (Released:2004-07-26)

福島県川俣町水晶山から発見されたイットリウムタンタル酸塩鉱物は、既知の類縁鉱物Formanite-(Y)のようにメタミクト化することなく、明瞭な粉末X線回折を示す(堀・小林,2000)。今回、この鉱物について、EPMAによる定量分析と単結晶X線回折強度データを用いた結晶構造解析を行った。 Y,Ln(ランタニド),TaおよびNdに加えて、本研究では少量のTi、Th、U およびCaが検出された。後方散乱電子像では、試料は均一ではなくラメラ状の組織が観察された。微少部位についてガンドルフィーカメラや四軸自動回折計によりX線回折実験を行ったところ、ウラン含有量の多い部位はX線の回折を与えず、本試料が部分的にメタミクト化されていることが判った。ウラン含有量が少ない結晶質部位の定量分析結果から以下の実験式が得られた:(Y0.78Yb0.06Dy0.04Er0.04Gd0.02Lu0.01Ho0.01Sm0.01Ca0.01Tm0.01Tb0.01U0.01)Σ1.01(Ta0.58Nb0.39Ti0.02)Σ0.99O4。本鉱物は単斜晶系で空間群はP2/aである。最小二乗法で精密化した格子定数は、a = 5.292(2), b = 5.452(2), c = 5.1149(18) Å, β = 95.89(3)°, Z = 2、である。この空間群と格子定数は、合成YTaO4 (Wolten, 1967)と良く一致し、正方晶系のFormanite-(Y)とは一致しない。構造解析は、R1 =0.0340に収れんし、以下の結果が得られた: 席,x y z Ueq;Y 0.2500 0.76342(17) 0.0000 0.0076(2); Ta 0.2500 0.30254(11) 0.5000 0.0088(2); O1 0.4922(10) 0.4360(12) 0.2669(10) 0.0096(11); O2 0.0975(11) 0.0868(11) 0.2514(11) 0.0111(11)。 この解析結果は基本的に合成YTaO4と同じである。ニオブに部分置換されたタンタルの配位は四面体4配位とみなすことができる。一方、希土類元素は酸素により8配位されている。本鉱物の解析結果から計算した平均原子間距離はTa-Oが1.916、Y-Oが2.368 Åで、合成YTaO4と比較するとTaO4四面体に明らかな収縮が見られる。本鉱物は単純にFergusonite-(Y)やFergusonite-β-(Y)のTa置換体とは位置づけず、これまで知られているどの鉱物種にも該当しない。 堀・小林(2000)日本鉱物学会2000年度年会講演要旨集,P08. Wolten, G. M. (1967) Acta Crystallogr., 23, 939