著者
青木 拓也 廣江 圭史 鈴木 暁 平賀 篤 上出 直人
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0934, 2016 (Released:2016-04-28)

【はじめに,目的】脳卒中のリハビリテーションにおいて,患者教育は科学的にも意義が認められている(日本脳卒中学会,2015)。実際,脳卒中患者に対して教育的介入を行うことで,患者の生活の質が向上することが認められている(Karla, et al., 2004)。しかし,脳卒中患者に対する教育的介入の方法論は明確にされていない点がある。本研究の目的は,脳卒中患者に対する教育的介入の具体的方法論を構築するための基礎情報を得るため,自宅退院前の脳卒中患者が抱く在宅生活への考えや不安について,質的研究手法を用いて明らかにすることとした。【方法】対象は,回復期病棟入院中の脳卒中患者男性5名,女性4名とした。自宅退院直前に,自宅退院に際して抱いている生活への考え方や不安について半構造化面接を行い,面接内容をICレコーダーで録音した。録音内容は逐語録としてテキスト化しテキストマイニングを行った。具体的な方法として,まず分析用ソフトウェアKH coderにてテキストを単語に分解し,各単語の出現頻度を分析した。次に,各単語の出現頻度から階層的クラスター分析を行い,単語をクラスターに分類した。クラスターに分類した単語について,その単語が含まれる文脈からクラスターの名称と内容を,共同研究者と協議しながら決定した。なお,患者が抱く不安や考えには,性差が生じる可能性が高いため,分析は男女別に実施した。さらに,患者の基礎情報として,Function Independence Measure(FIM)を調査した。【結果】対象者の年齢は男性65.2±13.2歳,女性60.3±16.3歳,調査時FIMは男性118.8±12.9点,女性114.0±14.2点であった。クラスター分析の結果から,在宅生活への考え方や不安について,男性では「退院後の社会復帰に対する不安」,「退院後の生活習慣の見直し」,「障がいとともに生活をしていくという心構え」,「活動範囲の拡大への不安」,「入院生活からの解放感」,の5つのクラスターが得られた。一方女性では,「家族の協力に対する不安」,「入院生活からの解放感と不安」,「活動範囲の拡大への不安」,「食習慣の見直し」,の4つのクラスターが得られた。【結論】男女共通の考えや不安として,制限された入院生活から解放されることへの期待感や活動範囲が病院内から院外へ広がることへの不安が認められた。男性固有の考えや不安としては,社会復帰へは不安を持つ一方で,生活習慣の見直しや生活の心構えなど,前向きな考えを持つことが認められた。一方女性では,家族の協力に対する不安や食生活などの生活変化による自覚と不安など,これからの生活への不安を男性よりも抱えていた。脳卒中患者への教育介入では,患者が抱く生活への不安や考えを明確化したうえで,それらに応じた内容を実施することが重要である。
著者
廣江 圭史 平賀 篤
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0972, 2015 (Released:2015-04-30)

【はじめに,目的】頭部を固定した体幹回旋運動は日常生活動作の中で多く見られる動作であり,その多くは野球やテニスなどのスポーツ場面や歩行等の立位で行っている。歩行時の頭位は体幹回旋に拮抗しており,体幹回旋は骨盤と反対に回旋すると言われている。それによって,体軸内回旋が生じる事で歩行時のエネルギー消費を少なくするとされている。先行研究において座位で骨盤固定した体幹回旋運動の課題において頭部固定をすることで体幹回旋可動域が有意に低値を認めた報告があるが,立位で頭部固定の有無による報告は見られない。立位において頭部固定の有無が体幹回旋運動,骨盤回旋運動に変化を及ぼすことを明らかにすることはスポーツ場面や歩行の分析や治療を行う上での一助になると思われる。そこで,今回は立位において頭部固定の有無による体幹回旋可動域,骨盤回旋可動域,体幹回旋運動時の重心移動量の変化を比較,検討した。【方法】対象は神経学的疾患や骨関節疾患のない健常成人8名(男性8名,年齢25.7±4.3歳,身長172.6±3.5cm,体重64.5±3.3kg)とした。測定は3次元動作解析システムVICON370(OXFORD METRICS社製)を用い,サンプリング周波数60Hzの赤外線カメラ6台で計測した。赤外線反射マーカーは臨床歩行分析研究会の推奨する15点に貼付した。計測課題は両上肢下垂位の立位姿勢からの体幹右回旋運動とした。体幹右回旋運動は自動運動で行い,頭部固定無し,頭部固定ありの2条件を無作為に3試行ずつ行った。頭部固定は被験者ごとの目の高さに合わせた目印を3m前方に貼付し,その目印を注視させることで頭部固定を自動運動で行った。測定項目は体幹右回旋運動時の最大体幹回旋可動域と骨盤回旋可動域,立位姿勢から最大体幹右回旋時の重心移動量とした。関節角度,重心の算出は臨床歩行分析研究会の解析ソフトウェアDIFF Gait,WAVE EYESを用いて行った。統計解析は頭部固定の有無による体幹右回旋可動域と骨盤右回旋可動域,重心移動量をMann-WhitneyのU検定を用いてそれぞれ比較した。有意水準は5%とした。【結果】最大体幹回旋可動域は頭部固定無しで115.6±12.6度,頭部固定ありで89.22±11.83度と頭部固定ありで有意に低値を認めた。骨盤回旋可動域は頭部固定無しで7.68±3.19度,頭部固定ありで3.95±1.99度と頭部固定ありで有意に低値を認めた。重心移動量は頭部固定無しでは右側へ1.76±1.49cm移動しており,頭部固定ありでは0.43±0.77cm移動していた。重心移動量においても頭部固定ありで有意に右方向への移動が低下していた。【考察】本研究においても頭部固定時の体幹回旋運動では,体幹回旋可動域が低値を示したことから座位での先行研究を支持するものとなった。立位での体幹回旋運動は頭部を固定しない条件では頸椎からの腰椎までのすべての脊柱を同側に回旋させることが可能であり,体幹,骨盤を同側に回旋させることができたと考えられる。しかし頚部回旋は姿勢制御を不安定にさせ,速いほどその影響は大きいことが報告されており,頭部固定しない条件では回旋側への移動が大きくなっていた。このことからも頭部固定ありに比べ体幹回旋動作時の姿勢制御として筋活動がより必要になると考えられる。骨盤回旋可動域は頭部固定無しで7.68±3.19度,頭部固定ありで3.95±1.99度と頭部固定ありは体幹回旋運動に拮抗する形で可動域が低下していた。このことから,体幹回旋運動に骨盤回旋が拮抗した力を発揮していることが考えられる。運動様式から頭部固定ありでは体軸内回旋が行われていることが示唆される。体軸内回旋が行われたことで,体幹回旋運動時の回旋側への重心移動を抑制する結果に繋がったと考えられる。そのため,歩行のような相反性で対側性の動作に安定性や動きを与える上で頭部固定は必要な要素になると考えられる。【理学療法学研究としての意義】頚部固定ありの体幹回旋運動において,回旋側への重心移動の抑制や体軸内回旋を誘発する一要因となることが示唆された。今後,頭部固定をした体幹回旋運動時の筋電図学的検討を行い,体幹筋活動を明らかにすることで,理学療法として体軸内回旋の促通を行うことのできる運動療法を考案できると考えられる。
著者
齋藤 涼平 廣江 圭史
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2014, 2015

【はじめに,目的】日常生活の中で脊柱回旋動作は多く,課題によって全脊柱が同方向へ回旋する必要もあれば,頸椎,胸椎,腰椎で,他方向の逆回旋が必要な時もある。座位での片手で対側側方へのリーチでは同方向への回旋となるが,片手の前方へのリーチでは脊柱の中で逆回旋を行うことで頭部を前方へ保持することができると考えられる。脊柱の回旋がどこの部位で逆回旋を起こしているかなど報告は見当たらない。本研究の目的は,座位での脊柱回旋動作の際に頭部固定位と非固定が脊柱回旋角度に及ぼす影響を明らかにすることである。【方法】対象は整形外科的,神経学的問題を有さない健常成人男性8名(年齢25.7±4.3歳,身長172.6±3.5cm,体重64.5±3.3kg)とした。測定課題は座位での脊柱回旋動作とした。開始肢位の姿勢は骨盤前後傾中間位での座位とし課題動作中も保持するように実施した。頭部を同側へ回旋する動作(以下Open)と,正面の目印を注視して頭部を可能な限り固定した状態での脊柱回旋動作(以下Close)とした。数回の練習後,それぞれ5回ずつ実施し,非利き手側への回旋動作を解析に用いた。回旋角度の測定には,三次元動作解析装置VICON370(OXFORD METRICS社製)を使用し赤外線反射マーカーをDIFF15マーカーセットに加え,第1,7,12胸椎,第4腰椎のそれぞれ棘突起から左右3cm,頭部に着用したヘッドキャップの計26箇所に貼付した。解析区間は脊柱回旋開始から終了までとして脊柱マーカーから規定した。脊柱の区間別の回旋角度として第1胸椎と第4腰椎との回旋角度差から胸腰椎部,第1胸椎と第12胸椎との回旋角度差を胸椎部,第1胸椎と第7胸椎との回旋角度差を上位胸椎部,第7胸椎から第12胸椎との回旋角度差を下位胸椎部,第12胸椎から第4腰椎との回旋角度差を腰椎部とした。OpenとCloseの2条件について各区間の回旋角度を比較検討した。統計手法には対応のあるT検定を用い,有意水準は危険率5%未満として解析を行った。【結果】最大回旋時の区間別での回旋角度は上位胸椎部でのOpenで有意に増加した(p<0.05)。下位胸椎部でのCloseで有意に増加した(p<0.05)。胸腰椎部,胸椎部,腰椎部では有意差を認めなかった。【考察】Openでは腰椎,胸椎,頸椎と同方向への回旋が上位性に積み重なっていくが,Closeでは脊柱内での回旋を腰椎からの上行性への回旋と,頸椎からの下行性への回旋が相殺することが考えられた。今回の結果からはOpenとCloseでの胸腰椎部,胸椎部,腰椎部での回旋角度は有意差が見られなかった為,頸椎部での逆回旋で相殺していることが示唆された。また上位胸椎部ではOpenに比較してCloseでは減少しており,逆に下位胸椎部ではOpenに比較してCloseでは増加している。今回は自動運動での脊柱回旋動作を行っており,Openに比較してCloseでは脊柱内での回旋に対するStabilityの要素がより必要になり,そのStabilityが確保されることで逆回旋のMobilityが獲得される(Mobility on Stability)。Closeでは頸椎部で逆回旋に対して,胸腰椎でのStabilityが必要になり,下位胸椎部の肋骨に付着している同側内腹斜筋や逆側外腹斜筋や腹横筋などの収縮がより必要であり,結果として下位胸椎部での回旋量が増加したと考えられる。胸椎は肋骨と共に胸郭を形成している。上位胸椎の肋骨に付着している筋肉は頸椎と連結し,下位胸椎の肋骨に付着している筋肉は腰椎や骨盤と連結している。これらの筋が求心性・遠心性・等尺性とコントロールされることで安定した脊柱回旋動作が行わられていると考えられる。脊柱回旋動作の分析において胸椎または胸郭を一方向の動きでは捉えず,逆回旋などねじれの力を発生することでStability高め,他の部位にMobilityを出していることなどにも着目することが重要であると考える。【理学療法学研究としての意義】今回の結果より頭部固定位と非固定での脊柱回旋動作時に,胸椎での上位と下位の動きに変化があることが示唆された。臨床場面における評価・治療の一助となると思われる。