著者
大平 功路 平賀 篤 田中 和哉 角田 信夫 山村 俊一
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.A1068, 2008 (Released:2008-05-13)

【目的】身体運動において下肢関節では骨盤の動きを中心に運動連鎖が生じており、歩行時には骨盤・下肢関節に運動連鎖が生じていると考えられる。第39回、40回日本理学療法学術大会において、歩行時の骨盤回旋運動に左右差があることを報告した。骨盤の回旋運動に左右差があることで下肢関節にも骨盤の動きに対応した運動連鎖が起こり、下肢関節の動きにも左右差が生じていることが推測される。今回は歩行時の骨盤と股関節の動きに着目し、骨盤回旋運動と股関節屈伸及び内外転との関係について検討した。【方法】対象は健常成人9名(男性4名、女性5名)、年齢25.2±2.0歳である。測定課題は自由歩行とし、3次元動作解析システムVICON370(Oxford Metrics社)にて測定した。自由歩行の施行回数は各被験者につき3回とした。得られたデータより骨盤回旋角度、股関節屈伸角度、股関節内外転角度を算出した。解析は立脚期における骨盤の後方回旋角度を左右で比較し、後方回旋角度が大きい側の骨盤後方回旋角度、股関節伸展角度、股関節外転角度の最大値を求めた。比較・検討は同一被検者間で行い、3回の施行において骨盤後方回旋角度が最大である施行と最小である施行の2つの施行間で股関節伸展角度、股関節外転角度の各々を比較した。統計処理はSpearman順位相関を用い、最大と最小の2つの施行間において骨盤後方回旋角度、股関節伸展角度、股関節外転角度の各々について角度差を求め、骨盤後方回旋角度と股関節伸展角度、骨盤後方回旋角度と股関節外転角度の相関関係を調べた(有意水準5%)。【結果】股関節伸展角度では骨盤の後方回旋角度が大きくなると伸展角度が小さくなる者が9名中7名であった。股関節外転角度では骨盤の後方回旋角度が大きくなると外転角度が大きくなる者が9名中8名であった。骨盤後方回旋角度と股関節伸展角度、骨盤後方回旋角度と股関節外転角度共に相関関係は認められなかった。角度差は骨盤後方回旋角度では2.4±1.0°、股関節伸展角度では1.2±1.3°、股関節外転角度では2.1±1.4°となった。【考察】歩行における骨盤・股関節の運動連鎖は骨盤の後方回旋が大きくなると股関節の伸展角度は小さくなり、外転角度は大きくなることが示唆された。骨盤の後方回旋が大きい場合、外転角度が大きくなることより立脚側から遊脚側への重心移動は前外側への移動が大きくなり、蹴り出し機能が大きくなっていることが考えられる。骨盤の前方回旋が小さい場合は反対の動きが生じており、蹴り出し機能が小さくなっていることが考えられる。骨盤・股関節の動きに左右差があることは歩行における左右の機能が異なっていることを示唆しており、歩行分析においても左右の機能の違いを考慮した分析が必要であると考える。今回の検討では角度の最大値のみで検討を行なったが、他の歩行のパラメーターを用いた検討も今後の課題と考える。
著者
青木 拓也 廣江 圭史 鈴木 暁 平賀 篤 上出 直人
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0934, 2016 (Released:2016-04-28)

【はじめに,目的】脳卒中のリハビリテーションにおいて,患者教育は科学的にも意義が認められている(日本脳卒中学会,2015)。実際,脳卒中患者に対して教育的介入を行うことで,患者の生活の質が向上することが認められている(Karla, et al., 2004)。しかし,脳卒中患者に対する教育的介入の方法論は明確にされていない点がある。本研究の目的は,脳卒中患者に対する教育的介入の具体的方法論を構築するための基礎情報を得るため,自宅退院前の脳卒中患者が抱く在宅生活への考えや不安について,質的研究手法を用いて明らかにすることとした。【方法】対象は,回復期病棟入院中の脳卒中患者男性5名,女性4名とした。自宅退院直前に,自宅退院に際して抱いている生活への考え方や不安について半構造化面接を行い,面接内容をICレコーダーで録音した。録音内容は逐語録としてテキスト化しテキストマイニングを行った。具体的な方法として,まず分析用ソフトウェアKH coderにてテキストを単語に分解し,各単語の出現頻度を分析した。次に,各単語の出現頻度から階層的クラスター分析を行い,単語をクラスターに分類した。クラスターに分類した単語について,その単語が含まれる文脈からクラスターの名称と内容を,共同研究者と協議しながら決定した。なお,患者が抱く不安や考えには,性差が生じる可能性が高いため,分析は男女別に実施した。さらに,患者の基礎情報として,Function Independence Measure(FIM)を調査した。【結果】対象者の年齢は男性65.2±13.2歳,女性60.3±16.3歳,調査時FIMは男性118.8±12.9点,女性114.0±14.2点であった。クラスター分析の結果から,在宅生活への考え方や不安について,男性では「退院後の社会復帰に対する不安」,「退院後の生活習慣の見直し」,「障がいとともに生活をしていくという心構え」,「活動範囲の拡大への不安」,「入院生活からの解放感」,の5つのクラスターが得られた。一方女性では,「家族の協力に対する不安」,「入院生活からの解放感と不安」,「活動範囲の拡大への不安」,「食習慣の見直し」,の4つのクラスターが得られた。【結論】男女共通の考えや不安として,制限された入院生活から解放されることへの期待感や活動範囲が病院内から院外へ広がることへの不安が認められた。男性固有の考えや不安としては,社会復帰へは不安を持つ一方で,生活習慣の見直しや生活の心構えなど,前向きな考えを持つことが認められた。一方女性では,家族の協力に対する不安や食生活などの生活変化による自覚と不安など,これからの生活への不安を男性よりも抱えていた。脳卒中患者への教育介入では,患者が抱く生活への不安や考えを明確化したうえで,それらに応じた内容を実施することが重要である。
著者
廣江 圭史 平賀 篤
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0972, 2015 (Released:2015-04-30)

【はじめに,目的】頭部を固定した体幹回旋運動は日常生活動作の中で多く見られる動作であり,その多くは野球やテニスなどのスポーツ場面や歩行等の立位で行っている。歩行時の頭位は体幹回旋に拮抗しており,体幹回旋は骨盤と反対に回旋すると言われている。それによって,体軸内回旋が生じる事で歩行時のエネルギー消費を少なくするとされている。先行研究において座位で骨盤固定した体幹回旋運動の課題において頭部固定をすることで体幹回旋可動域が有意に低値を認めた報告があるが,立位で頭部固定の有無による報告は見られない。立位において頭部固定の有無が体幹回旋運動,骨盤回旋運動に変化を及ぼすことを明らかにすることはスポーツ場面や歩行の分析や治療を行う上での一助になると思われる。そこで,今回は立位において頭部固定の有無による体幹回旋可動域,骨盤回旋可動域,体幹回旋運動時の重心移動量の変化を比較,検討した。【方法】対象は神経学的疾患や骨関節疾患のない健常成人8名(男性8名,年齢25.7±4.3歳,身長172.6±3.5cm,体重64.5±3.3kg)とした。測定は3次元動作解析システムVICON370(OXFORD METRICS社製)を用い,サンプリング周波数60Hzの赤外線カメラ6台で計測した。赤外線反射マーカーは臨床歩行分析研究会の推奨する15点に貼付した。計測課題は両上肢下垂位の立位姿勢からの体幹右回旋運動とした。体幹右回旋運動は自動運動で行い,頭部固定無し,頭部固定ありの2条件を無作為に3試行ずつ行った。頭部固定は被験者ごとの目の高さに合わせた目印を3m前方に貼付し,その目印を注視させることで頭部固定を自動運動で行った。測定項目は体幹右回旋運動時の最大体幹回旋可動域と骨盤回旋可動域,立位姿勢から最大体幹右回旋時の重心移動量とした。関節角度,重心の算出は臨床歩行分析研究会の解析ソフトウェアDIFF Gait,WAVE EYESを用いて行った。統計解析は頭部固定の有無による体幹右回旋可動域と骨盤右回旋可動域,重心移動量をMann-WhitneyのU検定を用いてそれぞれ比較した。有意水準は5%とした。【結果】最大体幹回旋可動域は頭部固定無しで115.6±12.6度,頭部固定ありで89.22±11.83度と頭部固定ありで有意に低値を認めた。骨盤回旋可動域は頭部固定無しで7.68±3.19度,頭部固定ありで3.95±1.99度と頭部固定ありで有意に低値を認めた。重心移動量は頭部固定無しでは右側へ1.76±1.49cm移動しており,頭部固定ありでは0.43±0.77cm移動していた。重心移動量においても頭部固定ありで有意に右方向への移動が低下していた。【考察】本研究においても頭部固定時の体幹回旋運動では,体幹回旋可動域が低値を示したことから座位での先行研究を支持するものとなった。立位での体幹回旋運動は頭部を固定しない条件では頸椎からの腰椎までのすべての脊柱を同側に回旋させることが可能であり,体幹,骨盤を同側に回旋させることができたと考えられる。しかし頚部回旋は姿勢制御を不安定にさせ,速いほどその影響は大きいことが報告されており,頭部固定しない条件では回旋側への移動が大きくなっていた。このことからも頭部固定ありに比べ体幹回旋動作時の姿勢制御として筋活動がより必要になると考えられる。骨盤回旋可動域は頭部固定無しで7.68±3.19度,頭部固定ありで3.95±1.99度と頭部固定ありは体幹回旋運動に拮抗する形で可動域が低下していた。このことから,体幹回旋運動に骨盤回旋が拮抗した力を発揮していることが考えられる。運動様式から頭部固定ありでは体軸内回旋が行われていることが示唆される。体軸内回旋が行われたことで,体幹回旋運動時の回旋側への重心移動を抑制する結果に繋がったと考えられる。そのため,歩行のような相反性で対側性の動作に安定性や動きを与える上で頭部固定は必要な要素になると考えられる。【理学療法学研究としての意義】頚部固定ありの体幹回旋運動において,回旋側への重心移動の抑制や体軸内回旋を誘発する一要因となることが示唆された。今後,頭部固定をした体幹回旋運動時の筋電図学的検討を行い,体幹筋活動を明らかにすることで,理学療法として体軸内回旋の促通を行うことのできる運動療法を考案できると考えられる。
著者
豊田 輝 田中 和哉 平賀 篤 佐野 徳雄 菅沼 一男 西條 富美代 安齋 久美子 渡辺 長 相原 正博 渡邊 修司 青栁 達也 新永 拓也 中山 彰博
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.657-664, 2021 (Released:2021-08-20)
参考文献数
12

新型コロナウイルス感染症によるパンデミックへの対応経験を理学療法士(PT)養成課程における一つのモデルとし,今後の備えとなる事業継続マネジメント(BCM)の在り方を検討した.具体的には,BCMプロセスに沿って本学科のパンデミック発生後からの対応を振り返り検討した.結果,BCMプロセスごとに8つの問題点が抽出され,その対応策としてパンデミックに対応する業務継続計画を策定した.今回,BCMプロセスに沿った検討により,本学科における全業務の洗い出しと業務優先度の選定,それに必要な組織体制の見直しが可能となり,さらには今後の課題も明確となった.今後も,社会の要請に応えるべく,パンデミック発生時においても質の高いPTの養成が継続できる組織であるため再考を続けたい.
著者
平賀 篤 髙木 峰子 隆島 研吾 鶴見 隆正
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.505-510, 2019 (Released:2019-08-28)
参考文献数
19

〔目的〕本研究の目的は,健常成人に対し超音波療法(ultrasound therapy:US)とスタティックストレッチング(static stretching:SS)の実施条件による検証を行い,併用の有効性を明らかにすることとした.〔対象と方法〕健常成人男性13名を対象とした.下腿三頭筋の筋腱移行部に対しUSとSSを,①US照射中にSSを同時実施,②US照射直後にSS実施,③US単独実施,④SS単独実施の4条件で実施した.測定項目は足関節背屈可動域,深部組織温,深部血流量とし,介入前後の変化量を比較した.〔結果〕背屈可動域の変化は,US同時群が他条件に比べ有意な増大を認めた.US直後群はUS単独群,SS単独群と比べ有意な増大を認めた.〔結語〕可動域変化を目的に行う場合,USとSSを同時に行う重要性が示唆された.